紙の本
構図的テキスト解釈の野心
2018/10/26 11:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文学を図式的に理解することを実際に行っている野心的な著作である。文学の解釈も単なる物語の追記ではなく、独自の視点からの考察が混ぜられており、新鮮に思える。ただし、バルトをはじめとする他の文学研究者との違いをもう少しはっきりさせている方が独自性があると思われる。その点は、賛否が分かれるだろう。
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これ遺稿だったのねー。あと1章ぐらいあるかと思って読んでたら唐突に<未完>でびっくりした。残りのページは注釈と解説とあとがきとあとがき。
全体を通してプロットとストーリーについての分析が続く入門。本文中で筆者が言う通り、「プロット」という単語は一般的なところで言って未だになじみが薄いけれどもその意味を丁寧に説明する上で豊富な参考資料を挙げているので勉強する人には有難いと思います。それの殆どが専門書ではなく「草枕」や「風の歌を聴け」などの小説である点もポイント高い。もちろん、ストレートに文学テクストというものを理解するのにも良いけど、次どの本を読もうか悩んでる時に読むと良いですね。私はこれを読んでなかったら村上春樹を読む事は無かったかもしれない。
それにしてもやっと読み終えたよ。足かけ3年。ああ、肩の荷が一つ下りました。
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日本文学の勉強するんだから、テクスト論ぐらい読んでおきたい…けど、難しかった。だけど、とても面白かった記憶がある。学生さんにおすすめ。
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図書館1F新書文庫 B901||Me26
2010/6/26購入
p24
科学は"How"の疑問を解くことはできるが、"Why"という問いに答えることが許されていない。というより、"Why"の問いをあらかじめ切りすててしまうところに科学の出発点がある。"How"の問いとは、「与へられたる減少の拠って生じたる経路」を辿りかえすことであって、この因果律の解明は、継起する二つの現象の時間的順序が前提でなければならない。・・・
p25
『草枕』に描きだされた桃源郷の風景、あるいは「プロットも無ければ、事件の発展もな」い構成は、逆に科学的リアリズムや因果律的時間をおぞましいものとしてうけとめずにはいられなかった漱石の・・のありかを裏側から証ししている。
p35
現代のわれわれはさまざまな言葉を発することはできる、発話をすることはできる。しかしその発話によって、われわれの内面を他者に伝えることはほとんど不可能である。
p38
言葉というのは人間と人間を結びつける手段であることはもちろんですけれども、それよりも、言葉自体、話される言葉自体がそこにあるということ、それで一つのリアリティをもってくる。
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テキストではなく、テクストである。一般には馴染みないかもしれないが、テクストはラテン語で「織る」という意味の語源をもち、すなわちテクスト論は作品を言葉の織物として重層的に捉える試みである。織物を解きほぐしていくイメージからも類推できるように、そこでは受身の読書とは異なる、主体的読みが求められる。その主体的読書の指針として、著者は迷宮のアナロジーや作者や主人公といった作品を読み解くためのコードなどを提示している。この本は読者の「読書のユートピア」を開くものとしてこの上ない道しるべとなるだろう。
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一言で言うなら、テクストに対する文学的な読み方についての入門書(たぶん)。
漱石の『草枕』を対象とした空間的な文学の試みや、言文一致に見られるような「言語」そのものの見方をめぐる背景的な話、引いては身体論、コードとコンテクスト、最終的には物語の構造へと論は進んでいく。
本書のキーワードを挙げるならば読者と作家、時間・空間、そしてストーリィとプロット、といったところか。テクストはそれ自体が閉じたシステムであり、したがってその記述は「書かなかったもの」の存在を自ずから明らかにする。この「空白」が読者に推測を許し、多様な読みを実現していく。このくだりは科学的に使うには苦しい話だが、それなりに面白い。あと、時間論。テクストが空間的に読めるとするならば、あらゆる記述は抜本的に再考されることになるのではないでしょうか。
しかしながら、全体的にもうひとつ説明不足というか、「ここで例示のひとつでもあれば理解しやすいのに!」と思う箇所が多いのが難点。未完の稿も収録されているのでやむを得ないと言えばやむを得ないか。
端的にテクストの読みと分析のテクニックを知るのであれば第四章「コードとコンテクスト」が参考になります。実益はおよそ保証できませんが教養とネタに是非。
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著者の遺作である1988年03月筑摩書房刊の増補版。
プロット・ストーリィを中心とした考察の書であろうと思うが、学ぶところはそれ以上に大きかった。
また読み返すであろう一冊。
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本書を読んでいると、これまで平面的行為と思っていた読書がまるで立体的に立ち昇ってくるかの様に感じてしまう。遺構というのもあって散漫としている感は否めず、後半の議論は参照される作品の内容理解ありきのものという困難さはあるのだが、それを補って余りある発見のある内容だった。身体から立ち昇る言葉というものに、身体を経由して出会おうとすること。読むことの可能性に自覚的になることで、意味が持つ生真面目さから軽やかに離れ、戯れることを肯定すること。それは堅苦しいものではなく、とても優しいことだと心から思うのです。
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帯文(裏表紙):”文学研究につねに新領野を切り開き、新たな方法を提示しつづけた著者による、オリジナルにして周到な文学入門。”
目次:第1章 読書のユートピア、第2章 書くことと語ること、第3章 言葉と身体、第4章 コードとコンテクスト、第5章 物語の構造、註、編集後記(多木浩二)、増補 1970年の文学状況、文庫版解説(小森陽一)
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『虞美人草』や『雁』が出てくるし、『風の歌を聴け』も出てくるが、おっ、となるような話は見つけられなかった。
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まず漱石の『草枕』で語られる小説の読み方の話を題材にして、
小説の読み方を考える導入としています。
『草枕』の登場人物である那美が、
画工の男があべこべにページをひらいて小説を読むというのをきいて、
「筋を読まなけりゃ何を読むんです。」
と、それはそれでまっとうに聴こえるようなことを言います。
しかし、小説には、筋以外に味わうべきところや、
影響を受けるところが山ほどあります。
たとえば、人物の心理を追体験してみたり、
小説のひとコマを自分の文脈のなかに移して考えてみたりすることもあります。
技術的な部分、時代などの背景、著者の人間性などなど、
小説を方向づけたり、飾り立てたりといった要素がたくさん含まれていて、
それらを吟味する楽しみ方だってあります。
ちょっと一面的で大雑把な言い方ですが、
本書はそういったところを見ていく文学論だと言えます。
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作品とかその他それに関わる人達の見方が変わる。特にコードやストーリイとプロットの関係など知ってる作品にあてはめて考えてみると面白い。確かになぁと思うことが多々ある。
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文学の読み解き方を知りたくて、読みましたが、なるほど!勉強になります。
コードという概念を導入すると、文学にアプローチすることが、さまざまな面から出来る。筋を追うだけでない読み方の多様性に驚きました。