紙の本
震災復興と,はしりぬけたモダニズム各派
2008/06/27 19:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代末期以降の日本の洋風建築の歴史を上下 2 巻にわけて解説している.下巻では明治の建築家たちが成熟し,さまざまな流派にわかれて伝統的な様式でさまざまな建築をたてていくところからはじまるが,地震とのたたかいがひとつの焦点である.関東大震災の復興の際などにつくられ,最近しばしばツァーがくまれている同潤会アパートや復興小学校などがとりあげられている.また,短期間にアールヌーボーやさまざまなモダニズム (表現派,ライト派,バウハウス派,コルビュジェ派など) のなかをはしりぬけていくさまがえがかれている.ナチスの影響なども分析されている.興味をひかれるてんがおおい.
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非常に読みやすいので、話半分として聞くべき本(嘘)。最後の前川さんのエピソードは上手いけど、正面からの評価を逃げたとも言えるか?上巻とあわせ必読。
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上下巻とも,大学院に進学して建築のことを全く知らなかった僕の一番基礎の教科書とも言える本です.系譜というものを習った気がします.
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図と写真を飛ばし読み。
藤森照信氏が書いているので、専門性が色濃く出ていたように感じる。丹下健三氏のコンペ案や卒業設計の絵が載っていたので、収穫ありだったと思う。
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長い歴史を経て確立した西欧の建築を、いかに日本は学び吸収していったのかという学習の記録(上下巻)。
鎖国を終え倒幕とともに封建社会は終わりを告げ、日本は世界における立ち位置を意識する。
西欧の進んだ学問・科学技術・思想、様々なものを移入し己が物とするための努力は、西欧列強と肩を並べるべく、近代国家の体裁を整える為には必然だった。それは建築においても例外ではない。
「コピー文化」などと揶揄されることの多い日本だが、「ただ真似る」だけでもキチンとできるようになるまでどれだけかかるのか、この本を読んで考えた。
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下巻は大正・昭和の近代建築についてです。
前半はまだ歴史主義だからちょっと飽きてきてしまったけど、社会政策派のあたりからまた面白くなってきた。モダニズムの時代になると、スラスラと読めたし、後期表現派、バウハウス派、コルビュジェ派に分けると確かに捉えやすくなる。
物語(物語というにはちょっと説明的すぎるけど)としてもおもしろかったので、そのうちまた読みたいと思う。
大正からの第二世代・第三世代は、自分の足許と内側を見つめ、建築とは何か、を内省することからはじめ、「社会と建築」「技術と表現」「アメリカ的実用性」といったテーマを発見し、また、新しい感性に目覚めて、アールヌーヴォーを手掛け、さらに、前の世代から引き継いだヨーロッパ建築の更新にも取り組んだ自覚の世代であった。彼らは、歴史主義の延長上で新しい形の生命を探さなくてはならなかった。それには、新興アメリカのパワフルな歴史主義様式を輸血する「アメリカ派」、ヨーロッパの歴史主義への理解を深化させた「ヨーロッパ派」、モダンデザインの新しいセンスを取り込んだ「新感覚派」の三つがあった。
その次に現れたのが、「社会政策派」である。彼らは、「耐震」「防火」「都市」「住宅」というそれまで放置されてきた領分に初めて手をつけ、研究するだけでなく、法制と行政を通して実践し、社会に還元した。その成果は大きいが、その反面、工学的かつ行政的な志向のゆえに、デザインや歴史といった芸術的・文化的領分に無言の圧迫を加え、その後日本の建築界に長い影を落とした。
そして、モダニズムの時代である。
当初は、歴史主義の包囲の中での一部の青年の運動として始まり、昭和に入る頃から急速に力を伸ばして歴史主義にも深刻な影響を与え、昭和10年代に入って、後期表現派、バウハウス派、コルビュジェ派の三派が県立するほどの充実を見える。同じ時期の歴史主義の陣営の代表作とモダンデザイン三派の代表作を数え、姿を思い浮かべるなら、量も質も天秤は後者に傾いている。昭和10年を境に、モダンデザインは歴史主義を凌いだのである。
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篠田真由美氏の小説の作中でしばしば言及される書。
原典に当たってみました。
岩波新書にしては写真が豊富で、内容もすごく充実してます。
上巻の明治時代は、まだ、西洋の様式をわけも分らず取り入れたへんてこ擬洋風がわさわさだったのに対して、
下巻の時代になると建築思想が本格的に現れて、その中で日本的なものが「発見」されていく過程なんかは、近代の特質が現れてるなあと。
終盤でモダンデザインが出てくる辺りの記述もとても興味深かったです。
ぜひ続編で、「日本の現代建築」とか…
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内容(「BOOK」データベースより)
明治の時代とともに展開した近代建築も、大正に入ると大きな転機を迎える。第二世代が登場し、彼らは建築とは何かを内省し、社会性、技術の表現、実用性などのテーマを発見する。新しい感性に目覚めアールヌーヴォーを手がける。昭和に入ると、モダニズムの影響のもとに第三世代が花開き、ファシズムの洗礼を経て、その流れはいまに続く。
目次
8 明治から大正へ―自覚の世代の表現
9 新世紀の歴史主義―アメリカ派の隆盛
10 社会政策派―都市と社会の問題
11 モダンデザイン―表現派にはじまる
12 初期モダニズム―バウハウス派とコルビュジエ派
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今の建築学は西洋建築を教えている。そう言われる理由がわかる本である。 と、同時にこれからの建築も考えさせられる本である。
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[ 内容 ]
明治の時代とともに展開した近代建築も、大正に入ると大きな転機を迎える。
第二世代が登場し、彼らは建築とは何かを内省し、社会性、技術の表現、実用性などのテーマを発見する。
新しい感性に目覚めアールヌーヴォーを手がける。
昭和に入ると、モダニズムの影響のもとに第三世代が花開き、ファシズムの洗礼を経て、その流れはいまに続く。
[ 目次 ]
8 明治から大正へ―自覚の世代の表現
9 新世紀の歴史主義―アメリカ派の隆盛
10 社会政策派―都市と社会の問題
11 モダンデザイン―表現派にはじまる
12 初期モダニズム―バウハウス派とコルビュジエ派
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同じ藤森照信氏著作の建築探偵シリーズとは対照的に、専門的な内容の本です。
取り上げられている建物の数は圧倒的に多く、住所付きの50音順索引は便利です。
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いきなり下巻から読み始めたせいか、あまり内容に入り込めなかった。
本当に、自分はこの本のよい読者にはなれなかったような気がする。
(ミース・ファン・デル・ローエが、本文で「ミース」と呼ばれていることばかりが気になって仕方がないような読者である。)
ただ、日本の大正以降の建築が、欧米のほとんどの流派が流れ込んでいること、そしてドイツを除けばそんなに多様な展開が見られた場所は他にないということが分かった。
写真は白黒で、小さいというのが難点だが、たくさん載っているので、述べられている特色がどういうものかを理解するのに役立つ。
ちょうど内務省官僚長岡隆一郎の『官僚二十五年』を読んでいた時だったので、「10 社会改革派」は興味深かった。
都市計画局の長官として、スラム街の改良に取り組んだらしい。
公園建設を多数手がけた長岡安平の息子が、そういう道に進んでいたとは。
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思想を持つ、建築。
いよいよ日本の建築も成熟期に入ってきた。
追いつけ追いこせの模倣段階から、思想を表現するための建築へとなってきたよう。
特に興味深いのがモダンデザイン。植物→鉱物→幾何学→数式、と段階を踏んでより抽象かつ始原的なものへ向かう動きが興った。それは産業革命のため、かつての歴史主義に空洞化が起こってしまったことから始まる。その空洞を埋めるものを各地へ求めたが、見つからない。行き詰まった建築家が自分の内側を見つめはじめ、感受性を掘り下げていくうちに、植物的な感覚の層、鉱物感覚の層、数学感覚の層と掘り進んで底を打ったらしい。
そういえば、その後の軍国主義ではあまり影響を受けなかったことから察するに、日本の近代建築は外向けのアピールが主だったのだろうか。国民の気勢を高める内向きの動きにはあまり建築は使われなかったもよう。
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上巻の幕末・明治篇は建築界がフロンティア・パイオニア精神にあふれ読んでてわくわくしたが、下巻の大正・昭和篇では建築界も徐々に成熟し始め、多くの歴史的建物が生まれるも、時代のエピソードとしてはやや停滞感。ちょっと退屈?と思い始めたところで盛り上がったのが「10.社会政策派」の章。最初の頃に結びつきが強かった国家・政治と建築の関係は、社会が成熟してくると、都市や社会の問題とも結びつき始める。関東大震災を経ての復興都市計画のくだりなんか最高に面白い。そしてモダニズムの時代の萌芽からコルビジェまで一気に進み、終戦を迎える。あー藤森先生の戦後篇が読みたい!
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日本の大正、昭和、第二次世界大戦までの建築の歴史を建築物と建築家、芸術運動と絡めて概説する。
アール・デコ、アール・ヌーボー、セセッション、モダンデザインの表現派、ライト派、バウハウス、オランダのモンドリアンのディ・スティル派からのコル・ビジュエ派など。
19世紀の産業化・近代化の台頭に伴い歴史・伝統主義が薄れ、様々な異国様式を導入したあと芸術は内省化し、植物→鉱物学→幾何学→数式の流れるモダニズムが新時代の表現として隆盛を極めるのであった。
興味深かったのは、鉄骨やコンクリートといった新しい素材をどのように活用するか19世紀の建築家たちが試行錯誤を重ねたこと。日本では耐震構造の問題からアメリカの鉄骨様式(関東大震災で壊れた)ではなく鉄筋コンクリートを使った独自の耐震技術が開発されたこと。
横河電機の創業者が横河民輔という建築家であったこと。
日本の都市計画が大蔵省の反対からなかなか資金的援助を受けられず、大正時代に用途地域制、建ぺい率などの建築制限、耐震制限、防火制限に行き着いたこと。
個人宅やプロジェクトなど散発的な場所が建築家の表現活動場所であったこと。
スラム問題から集合住宅の整備が行われ、イギリスではハワードのガーデン・シティ、ドイツのジードルングが日本独自の形で取り入れられ渋沢栄一の田園都市の開発や、同潤会が公営住宅を提供したことなど。
とても内容の濃い書籍だった。