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著者の民俗学的自伝。途中まで読んで放置していたのだが、たまたま手に取って読み始めたらなんだ面白いじゃないか。最初のほうは読んだはずなのに全然覚えておらず(-_-;)。生い立ちとか戦争前後あたりが特に面白い。そういう世界があったということの認識を新たにした。こういうバイタリティは今の世の中にはあまり見られなそう。ネット万能の世の中とは正反対か。でも意外に使いこなしていたりして。
とにかく宮本常一の民俗学を再認識させた本であった。
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社会学、民俗学、人類学。
フィールドワークはビジネスマン(特にミドル)にとって、重要なスキルな気がする。
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戦前生まれの人の文章とは思えない、わかりやすい文章で読みやすかった。以前、民俗学の分野に興味を持ち始めのころ、有名な人とは知らずに葬送に関する著書を読んでとても良かった。まさかもう亡くなっている方とはこのとき思いもしなかった。
あと、全体を通して渋沢栄一との師弟愛に心が温かくなった。解説を書いたのが宮本常一を「先生」と慕う門下の人だったというのもまた。
印象に残ったこと
○著者の父(農家)の教え:旅に出るときは、①窓から景色を見て家や人、駅では荷物などを観察しどういう人が住んでいるか見る。 ②高いところから見渡し、家や田畑のありようを見る、目を引くものがあったら行ってみる。 ③土地の名物や料理を食べておく。 ④できるだけ歩く。
○歩くのが好き。という著者の、歩いてのどが乾いたら流の水を飲み、腹が減ると木の実を・・という情景が憧れた。
○人の手の全く加わらない山地というのは意外に少なくて、意図をもって植えている木、植物がある。それはなぜか。なぜこれを選んだのか。田を見て水路の引き方、その権利は面積に応じて、寺社が水の権利を持っていることもある、など、目に見えるものから人の意志を読み取ろうとして何時間も考えたというエピソード。→目に見えるものから学べることは無限にある。そこから興味をもって調べていくことで学ぶ楽しさはだいぶ変わるかも。
○病気の著者がたまたま稲荷の祠にいるのを人に見られて、回復後上阪してから稲荷様に祈願して病気が治ったといううわさが出回り、稲荷様がにわかに大流行したというエピソードに、著者は「私は伝説などの根源をそこに見るような思いがした」と述べている。まさに伝説の類はそのようなもの(事実と勘違い)がありそうだ。
○「民間伝承」の発行までのエピソードも興味深い。長老たちと調整し説得役を見つけ…あの機関紙に宮本常一が関わっていたのかとここで知る。
○大阪府知事に食糧確保するために働いてほしいと乞われた時、知事が4月には硫黄島を取られることから全面降伏になるだろう予測を話し、今のうちから食糧を確保することと農民を守ることの大切さを説く場面。宮本常一は農民を守ることの大切さ、食料自給率を高くすることの大切さを一貫して説いていた。とても同感。
また、渋沢栄一は太平洋戦争がはじまるより前に日本の敗戦を予告していた場面も印象的だった。多くの国民は真実を知らされなかった云々の話もあったが必要な情報を選択し考えられる有識者のような人たちにはそういう状況ってちゃんとわかるんだなあとしみじみ感じ入った。
○敗戦し、アメリカ軍に占領されてからの、農民たちが喜々として道路掃除をしている様子、敵意を持っている人は意外と少ないという場面。空襲や地上戦に巻き込まれた人たちは別として、政治(や経済)に関わりを持たない多くの国民(農民等)は戦争の大義も何も関係ないことだったんだなあと思った。総力戦の無意味さよ。
宮本常一自身も戦争中もほぼずっと民俗調査を続けていることを知って、あの時代は戦争一色のような印象があったが、それだけではない多くの生活があったのだと知った。
○多くの年寄は、聞かれたことに答えるだけではなくて進んで語りたい多くのことを持っている。そういうことから掘り起こしていくこと、そして生きるというのはどういうことか考える機会をできるだけ多く持つようにしなければならないと思ったと書いてあったこと。→お年寄りを本当に尊敬し、得るものがたくさんあったんだなあと思った。自分もそのように多くのことを聞き、吸収したい。
○著者が武蔵野美術大学で教鞭を取っていたことを意外に思っていたのだが、美術の歴史や造形の世界のことを調査し研究するものもいてよいのではないかと思ったということや、学生たちは視覚が大変発達しているので造形物を通して文化を理解する能力を持っていると述べており、実際に民具や石造物などにも深い関心を示したとあった。実地研究にも熱心に行なったというので、美大ではこういう道もあるのだと目から鱗だった。また、絵や図にすることが巧みなので測図も丁寧、中世から今日までの変遷を明らかにすることができた、と成果もあげていた。
○旅について、旅は異質のものを求める人が多いが同質のものを求める旅もあっていいのではないかという。遥かな遠い国と思っていたアフリカ社会が実は意外なほど我々に近いと。お互いの共通点を見つけ出し、そのうえで何が異質なものを生んだか探り当てることで正しい相互理解と連帯感を打ち立ていけると。
最後に著者は進歩とは、発展とは何かと自問し続けていると述べる。進歩と同時に失われていくものは本当に不要なものなのか掘り起こさなくてはならないものはないのか、自身に問いかけるとともに読者に対しても民俗学を学ぶことの大切な視点を投げかけている。
なお最後の解説も宮本常一及び当時の民俗学をわかりやすく解説してあるのでわかりやすかった。
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宮本常一が自身の幼少からの歩みと体験、出会いを回顧し綴った自伝。
彼が民俗学という道に進んだ理由にはふるさとがあり、渋沢や柳田といった恩師との出会いがあり、そして時代も要因であったように感じました。
特に渋沢敬三は先見の明もさることながら、後進の育成や自身の探究にも熱心で感動しました。宮本が語る渋沢の言葉も印象的なものばかり。
宮本の残した膨大な記録は「大島の百姓」である彼でなければ成し遂げられなかった偉業だと痛感します。
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決して歴史の教科書では取り上げられない、何者でもない人たちの普通の生活が大変尊いものに感じられる。自分が今いる環境、生活を認めること。日々の進歩を感じるとともに、日々の反省を忘れないこと。
読者をすごく「地に足をつかせてくれる」一冊。
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大山先生と言う人が戦後の先を見通している言葉に感銘を受けた
本当に賢い人は先を見通してさらに行動する事ができる
大山先生は素晴らしい
そしてそういった人たちに支えられた宮本先生も素晴らしい人だったのだろう
食料自給率の低下については問題視されて久しいが、何故食料自給率を上げなくてはならないのか。
自分の中で一番しっくりくる答えを宮本先生は与えてくれました。
前半の幼少期の話が読みやすく、興味深かった。
後半は専門知識の分野もあり少し読みにくいが、全体を通して面白い内容でした。
おすすめします。
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宮本常一が晩年に綴った自伝。父からの教え、渋沢敬三との交流がとくに印象に残った。また、1965年に58歳で武蔵野美術大学に就職して以降の、学生や若者との交流についても、じつに熱っぽく書かれていて、「私の若い頃にくらべてみると、実にエネルギッシュである」と高く評価している。宮本自身が亡くなるまでエネルギッシュだったからこそ、こうした学生が集まってきたのだろう。