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秘太刀『馬の骨』継承者の正体を定説と異説を通して楽しむ
2010/01/04 19:31
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
<あらすじ>
浅沼半十郎は、自分が属する小出派の家老・小出帯刀に呼び出された。
家老・望月の暗殺に使われた『馬の骨』と呼ばれる秘剣が誰に伝承されたのか、甥の石橋銀治郎につき合い探って欲しいというのだ。
帯刀はその黒幕が自分ではないかという噂を打ち消すため、対立する派閥から身を守るため、秘太刀の使い手を知っておきたいという。
銀治郎は継承者と思われる人物たちの秘密を掴み、つぎつぎに立ち合いを強制し始め、半十郎は単純な継承者探しの裏で、何か別の思惑があるのではないかと思い始める。
<感想>
秘太刀『馬の骨』の継承者が誰なのか、を大きな命題として話が進む、推理小説的作品。
次々に継承者と目される人物たちと会うことで、半十郎と一緒に『馬の骨』の継承者を探す感覚となってしまう。
七つの章で構成された物語は、事の始まり、五人の剣士と銀治郎の立ち合い、そしてクライマックスという、シンプルなもの。
しかし、クライマックスに至る、五人の剣士と銀治郎の立ち合いでは、立ち合いを拒む剣士たちとなんとか立ち合いに仕向けようとする、銀治郎の探ってきた秘密とそれによる展開も見物。
もう一つ欠かせないのが長男を失ってから気鬱になった半十郎の妻・杉江の存在。
徐々に快方に向かいつつあるが半十郎を困らせる杉江が、後にはどうなってしまうのかも気になってくる。
さらに政争も絡んで、単なる『馬の骨』継承者探しで終わらず、異説を想像させるエピローグで読者を楽しませるどころか、作者までも読者の顔を想像して楽しんでいるように思える。
「異説を想像させるエピローグ」とは、解説に『意外な「犯人」 -異説の愉しみ 』として、『馬の骨』の継承者の異説を述べている。
物語を読み終えたとき自分はこの異説は定説だと感じた。
確かに『馬の骨』を使う覆面の男と赤松の剣闘の後、半十郎は継承者の人物に思い当たる。
しかし実はこれこそ作者が読者と主人公・半十郎までも騙した推理作品なのではないかと考えた。
物語が一通り片づいた後、エピローグとして、『ある人物』が浪人から商家の子どもを助けた場面を下僕・伊助は半十郎に語っている。
それは『馬の骨』を想像させるものであり、その話を聞いた半十郎と読者が「あっ!」と思い当たる顔を、作者は想像して楽しんでいるように思える。
さらに『この人物』を継承者とすることで、作者は『その人物』を過去の悔恨から救い、複雑な胸中をも描き出しているように感じられた。
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鮮やかで爽やか。…アタマ悪くて頑迷な自分は、「馬の骨」が一体本当は何を指すのか、まだ納得しきれていない。
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8月26日の金曜時代劇から放映開始なので事前に読んでみました〜 秘剣の継承者は推測しないまま読んでいたのでそこに関してはよいのですが、真のオチが…!!解説読んではじめて気づいたですよ…もうそうくるんかいなーと ドラマはどうなるのか一層楽しみになりました!! 藤沢氏の作品の女性は凛としていて、強さを秘めているので好きですvしかし今作品の主役ふたりは…へたれ?笑
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NHKのドラマ観れなかったので替わりに読んでみた。前半はっ結構面白いと思うんだけど後半失速気味かなぁ…。チャンバラ分切れ?
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面白かった!推理物で時代物で人情物で剣豪物という感じでしょうか。最後の解説に振り回されることうけあいですが、これは良いのか悪いのか…
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そーゆーことだったのね!!
本文を読み真相を知って満足しきっていた私。
ですが解説文を読み、目から鱗でした。
筆頭家老暗殺につかわれた秘太刀・馬の骨の遣い手は
一体誰なのか。
真相を探るため奔走する半十郎と銀次郎。
裏に隠された熾烈な執政争い。
息を飲むような剣の応酬。
一気に読み進めついに真相判明。
と思っていたのですが。。。
ぜひ、本文を読み終わったら解説も読んでください。
面白さ倍増です。
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馬の骨さえも折ってしまう秘剣「馬の骨」の継承者を探す主人公。継承者は誰なのか。そして何のためにその剣を探さなければならないのか、ラストにはすべて判明。主人公と息子をなくした嫁の微妙な関係も織り交ぜながら展開する。継承者一人一人に当たっていくのだけれど、その一人一人がドラマを抱えていて、それはそれで楽しめる。読後感も中も特に不満はないんだけれど、盛り上がりに欠けたということで★二つくらいかな。
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藤沢周平、「蝉しぐれ」読んだ時点では、文体があんまり好みでないからダメかな?と思いつつ読んだけれど、そんなことは無かったみたい……。一気に読んだ。他の物も読んでみようかなと思わせてくれた意味では貴重。
物語も面白い。秘太刀云々よりも、最後の御妻女のエピソードが、物語を締めくくるになんて美しいシーンだろうと思う。いや秘太刀云々も面白いけれどもね。
秘太刀を受け継いだ「あの方」(※ネタバレの為名前は省略)の、刺客魂に乾杯!
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なんだかチャンバラ小説が見たい、秘剣って何!?ってことで読書
・あらすじ
北国のある藩。家老の暗殺に使われたと言われる秘太刀『馬の骨』。この秘太刀の探索を下命された半十郎と銀次郎は徐々に熾烈な執政を巡る争いの渦中に巻き込まれていく。
秘太刀を巡って、様々な剣客と立ち合っていく。それを聞くだけで壮大なチャンバラな予感。実際に、色んなタイプの剣客と切りあっていくんだけど、残念ながらあまりそこの記述が多くないかも。そんな後日談みたいにチャンバラを描くの!?ってところもあるのが残念すぎる。
もっと壮絶な、命を賭けた男の生き様を見たいって方には少し物足りないだろうなぁ。
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なんか中途半端な終わり方。
2022/01/15
二回目だった。忘れていた。
短編のネタになりそうな剣豪達の秘密が面白い。
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とにかく藤沢周平の描く武士が好きです。
殺陣の描写なんかもワクワクさせてくれる。少し内容を忘れてしまったのでもう一度読み返そうと思ってます。
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時代小説は好きで、藤沢さんは悪くないと思うけど、面白味のポイントが違う気がする。秘剣の遣い手探しと藩の勢力争い。用心棒シリーズより内容が落ちる。役の設定に拘って、肉付けに手が回らなかった感じ。最近、藤沢さんの秘剣物の映画化が多いので、先取りに読んでみました(笑)
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出久根さんの解説が素敵な方向に不親切でいい。雑誌掲載時と「あの正体」が違うらしく、そっちもネタバレ読んだけど文庫の方が納得だな。銀次郎がイラッと来ると憎めない一面を見せてつかみきれないよ!
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深まる秋。藤沢さんの傑作時代小説を再読。
美しい自然描写。魅力的な登場人物。秘太刀「馬の骨」の伝授者は誰?ワクワクしながら読み進めた。遣い手は金打してでも明かせないが、最終頁読了後は涙が流れた。
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藤沢さんらしく、殺陣の描写、男の心の書き方が本当にかっこいい作品でした。何より、、ほとんどの読者が、物語の真相(あるいは藤沢さんの残した別解)に気付かず読み終えるんじゃないかと思います。作品を読み終わり、あとがき解説をよんだ時には思わず目が止まりました