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ずいぶん昔に読んだ本。悪口冴えていて、どこか浮世離れしていて不思議な一冊。扱い難そうなおばあさんだなあ…。森鴎外の娘が晩年貧しくも心豊かなお一人様ライフを送ったことはもっと知られてもいいのでは。正直、あこがれます。
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『新潮』に連載された長編エッセイが元になっているが、解説によると、『ドッキリチャンネル』と重複するもの、余りにプライベートな内容の終章を割愛して文庫化されている。文庫にしては分厚くなるのがその理由だそうだが、うーん……半端に文庫化するぐらいなら、全集とは別に単行本で1冊に纏めるとか、上下巻に分けるとか、違う方法を採用しても良かったのではなかろうか。
内容は文学から政治、著者が得意とするテレビ、芝居まで幅広いテーマが扱われている。『思いつくままに語る』というコンセプト上、話題はコロコロと変わり、時には最初の話からまったく別のところに着地していることも少なくない。が、それがまた面白い。
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雑誌『新潮』に連載された著者のエッセイをまとめた本です。テーマにとりあげられているのは、著者の父である森鴎外をはじめとする身近な人びととの交流や、文学者たちについての所感、政治からテレビ・タレントにいたるまで多岐にわたっています。著者の筆のおもむくままに、ひとつの話題がべつの話題を呼び起こすようなしかたで、文章がつづられています。
みずからを「自惚れと怒りとで出来上っているようだ」と語る著者は、父の鴎外のひざのうえで守られるようにしてそだった少女時代のことや、文学的な父である室生犀星(母呂生犀川)に期待をかけられて文学の道へと進んでいったこと、あるいは吉行淳之介(葭雪俊之介)に作品をほめられたことなどを、臆面もなく語って無邪気によろこぶといったふるまいを、無邪気とはほど遠いうねうねとした文体で書き記しています。この文体でなければ読めたものではないといいたくなるような内容ですらも、読者を引き込んでいくのはさすがというしかありません。
他方で、方々へ向けての「怒り」も率直に表明されていますが、たとえば女優の岩下志麻(伊和下志麻)の鼻であったり、美輪明宏(三輪顕宏)の演出だったりといった、著者の個人的な怒りの対象に、ことさらに絡んでみせるといったしかたでの批判になっていて、読者にユーモアを感じさせる文章になっているように感じました。