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サンゴロウへの思いから船への思いへ
2010/03/06 00:46
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は、前編5冊との関係で言うと、
サンゴロウに憧れ、『黒ねこサンゴロウ4:黒い海賊船』で
活躍したイカマルのその後の話である。
『黒い海賊船』で、こっそりサンゴロウのマリン号に忍び込み、
結局すぐに見つかるのだが、助手を務めたイカマル。
今は、船には乗らずに、きつい仕事を引き受け、一生懸命に働いて、
おんぼろではあるが自分の船を手に入れ、
仲間に協力してもらいながら自分で修理して仕上げていた。
イカマルは、サンゴロウの教えを忠実に守っていた。
風にむかってはしりながら、
ぼくは、ずっと、船のあやつりかたをかんがえていた。
かんがえなくても、半分ねむりながらでも、
しぜんにからだがうごく。
そんなふうにならなきゃ。
陸にいるときでもできる練習のやりかたは、親分にならった。
そう、イカマルは、サンゴロウを「親分」と呼ぶ。
イカマルは、はじめて手に入れた自分の船に「イルカ号」と名付ける。
自分の船を懸命に手入れするイカマルをサンゴロウも認めて、静かに褒める。
サンゴロウは自覚はないが、実は人を育てることに長けている。
褒めるタイミングと言葉がいつも実に絶妙だ。
そんなときにサンゴロウを探して、
「真珠島のシーナ」と名乗る白猫が現れる。
イカマルは、『黒い海賊船』に続き、
またしてもサンゴロウと共に事件に巻き込まれていくのだった。
関わってくるのは、ニンゲンの世界でのアブナイ薬を髣髴させる薬草である。
それについて語るサンゴロウの言葉がまた深い。
イカマルのサンゴロウへの一途な思いは、変わらない。
そして、サンゴロウも何かあったときは助けてもらうとイカマルに言うまでになっている。
イカマルは、確かに成長もしていて、
かつてマリン号を自分が操縦させてもらったときに、
それはサンゴロウがいたからこそできていたのだと気づく。
あのときは、親分がいっしょにいた。
ぼくがかじをとってても、マリン号をはしらせてるのは、
ぼくじゃなかったんだ、ってこと、いまごろわかったよ。
冒険を乗り越えた後のイカマルの言葉が印象的だ。
「苦労したって、いいです。」
親分の目をみて、ぼくはいった。
「ばらばらになって、なおせなくなるまでは、
ぼく、これでやります。」
イカマルは、ある瞬間に、
イルカ号と気持ちがひとつになったことを感じたのだった。
サンゴロウは船乗りなので、
船が全編を通して象徴的な存在としてあり続けるのだが、
イカマルが語る「船」もそれくらいの重みを持つようになってきたと感じた。
親分への憧れをまっすぐに語っていたイカマルの言葉が、
船に対しても同じくらいの説得力を持って輝くようになったのだ。
それでも、憧れを語らせたときが最強なイカマル、ではあるのだが。
ぼくの船で。
2002/06/15 01:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:本箱屋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おんぼろ船を修理してつけた名前は「イルカ号」。
「サンゴロウ」にあこがれる
「イカマル」の一人称で語られる物語。
頼まれてさばいた青い花「カリン草」が
実は流通の禁じられている麻薬であることを知り
自分で買い戻した「サンゴロウ」だったが
それを知った白い女のねこ「シーナ」に
執拗につけまわされ取引を強要されることになる。
あぶない仕事でもやっているのかと
サンゴ屋の主人が聞くように
「サンゴロウ」を心配する「イカマル」は
まだ不慣れな彼の船「イルカ号」を走らせて後を追う。
ひたすらに追いかけるだけだった「イカマル」が
だんだんと頼もしく「半人前」以上になっていく
その成長の物語。
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