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紙の本
マツタケにとって、人間はかけがえのないパートナーだった……
2003/11/26 01:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鳥居くろーん - この投稿者のレビュー一覧を見る
おそらく、日本で最も愛されているきのこ、マツタケ。その希少価値によって、今では庶民からおよそ遠い存在になってしまったが、その昔、庶民にもっとも身近なきのこであったことを知る人は、果たしてどれだけいるだろうか。
かつて、人々は稲を作るのに、山から肥やしになるものを手に入れる必要があった。下草を刈り、落ち葉をかき集め、田んぼにすきこむ。薪も山から採らねばならない。日々の煮炊きはもちろん、製塩や製鉄、製陶にも大量の燃料が必要だ。そして家を建てるにも材木がいる。生活に必要なものをこれだけ頼りつづければ、山だって疲弊する。やがて里山はハゲ山寸前にまでなってしまった。
ここでマツの登場だ。マツはキノコと協力することでハゲ山にでも生育することができる。そのパートナーに選ばれたのが、それまで日陰者であったマツタケだった……。
遠くは万葉の時代から現代に至るまで、著者は数々の資料をもとに松茸という不思議な存在の変遷を追っていく。ある時は貴族の遊興として採られ、ある時は庶民の貴重な食料となり、またある時は収入源として経済を支え、またある時はマツタケ泥棒のふところに入る。そのどれもが、マツタケというものが貴重な存在でありながら、人々のもっとも身近な食べ物の一つであったことを証明している。
歩くのに邪魔で、蹴飛ばすほど生えていたのも昔の話。肥やしも薪も要求されなくなった山は、急速にもとの姿へと戻っていった。人間とマツとマツタケの蜜月の時代は過ぎ去り、今では、マツの駆逐に成功した雑木が青々と茂るばかり。……これが良いことなのか悪いことなのかはわからない。ただ、長年つきあってきた親友との別れのやるせなさだけが、胸に残る。
著者はキノコの専門家ではないが、各エピソードの切り口の多様さには舌を巻いてしまう。おそろしく多い参考文献がそれを支えているし、またそれだけの文献に記録を残してきたマツタケも讃えるべき存在なのだ、ということなんだろう。キノコの文化的側面を扱う本としては一級品。「これを読まずしてキノコを語ることなかれ」と断言してもいい名著だと思う。
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