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紙の本
「次のシステム」へのシナリオ
2001/02/27 22:20
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
いま公共政策で問われているのは「公共性とはなにか」である。著者はそう指摘し、現代日本は「政官財共同体の生み出した公共政策の危機」に直面していると書いている。そしてこれとは対照的に、「次のシステム」へ向けた未来の展望を告げる動きとして宮本氏が挙げているのが、住民や自治体、協同組合、NPOなどの新しい主体による公共政策への取り組みである。
たとえば、過疎化した農山部での「過疎を逆手にとる」試み(地域に独自の産業や文化を求める内発的発展への志向)とその都市部への波及、高齢者福祉や環境問題への地域のボランティア組織の主体的な関わりなど。
宮本氏は、このような「次のシステム」をめざす方策の一つとして、「市場性とボランティア性をそなえた協同組合」(高齢者協同組合、労働者協同組合、環境協同組合等の法人化された市民団体)を公共政策の主体の一部に組み入れる制度づくりを提唱している。
具体的には、コミュニティ段階での議会(例:イタリアの地区住民評議会)や協議体(例:ニューヨーク市のコミュニティ・ボード。59のコミュニティごとに50人の無給の委員と3人の有給の事務局員で構成)といった「参加の制度化」を進めること。
さらには、公共財と民間財の中間に位置づけられる準公共財としての「混合財」(エネルギー、交通、都市建設、高等教育、医療、福祉、情報など、公共性を担保するための一定の規制的枠組みのもと、市場原理を活用して自由に競争・発展させるべきもの)を自治体や協同組合、NPOによる供給管理に委ねること。
こうした分権と協同の主体づくりを進め、「協同セクター」を公共政策の枢要な担い手として位置づけることを通じて、立法・行政・司法の三権に分権と参加の地方自治を加えた四権の「チェック・アンド・イノベーション」(制御し改革する)による新しい民主主義社会(分権型協同福祉社会)がもたらされる。そして、やがては「維持可能な発展」という人類共通の課題を解決する社会(サステイナブル・ソサエティ)が実現される。
——以上が、宮本氏の描くシナリオである。
しかしながら、維持可能な社会へと至るには、環境と資源の保全を進める経済社会システムの構築が不可欠である。そのためには、環境税の導入といった経済的手段だけでは足りず、大量生産・流通・消費・廃棄という現代社会のシステムそのものを変革すること、つまり欲望(消費)と労働(生産)のあり方を根本的に変えていかなければならない。宮本氏はそのように指摘した上で、次の三人の識者の所説を紹介している。
▼見田宗介『現代社会の理論』:人々が大量消費よりも朝焼けの美しさを選択するように欲望がかわれば、未来社会は滅亡ではなく、サステイナブルな社会になる。
▼ワイツゼッカー『地球環境政策』:これまでの資本に雇用されて働く労働が次第に減って、たとえば市民農園で家族のために楽しく働く労働のように、市場制度と無関係な労働がふえていく。
▼都留重人「『成長』ではなく『労働の人間化』を!」:所得を稼得するために働く「労働」から美や社会の尊厳を実現するための「仕事」にかえていくことで、維持可能な社会が実現する。
宮本氏は最後に、このような理論は、不況や失業が進む現代では夢物語に聞こえるかもしれないが、長期的に見れば必ずこうした傾向が生まれてくるのだと指摘している。
そして、公共政策は持続可能な社会への変化(欲望と労働のあり方の変革)をひきおこす条件づくりをめざすものでなければならず、そのためにも、住民がその文化水準と自治能力を高め、受益者としてではなく主権者としての役割を果たすことができる条件づくり(参加の制度化と協同セクターによる公共政策の遂行)を進めていかなければならないと述べて、本書を締めくくっている。
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