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記憶する心臓 ある心臓移植患者の手記 みんなのレビュー
- クレア・シルヴィア (著), ウィリアム・ノヴァック (著), 飛田野 裕子 (訳)
- 税込価格:1,650円(15pt)
- 出版社:角川書店
- 発行年月:1998.6
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紙の本
【贅沢な自然死】がムツカシクなってきた。
2002/10/20 12:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「彼の死亡記事を新聞で見つけたの。わたしが夢で見たとおりだった」。
バイク事故で死んだ青年(ティム)の心肺を移植された48歳のクレアは不思議な夢を見始める。小説ならば、かような物語は定番であろうが、これはクレア自身の体験に基づいた手記である。だが、私は手記である重苦しさを忘れて、不遜にも、推理とオカルトのエンターティメントとして、いつしか楽しんで読んでいた。もし、前提として、西原克成著「内臓が生みだす心」を読んでいなければ、物語としては楽しんだけれど、事実としては眉に唾したであろうと思う。この本の引用から「記憶する心臓」を知ったのです。
クレアの車のステッカーには「臓器を天国までもっていかないで。こちらの世界で必要とされていることは神様もご存知です」と書かれているらしい。勿論、臓器移植推進キャンペーンを張っているのだ。外科医達の「心臓はポンプに過ぎない」と心と身を切り離して考察すれば、私にしたところで、何ら悩みなく、単なる臓器として誰かに贈り物するに吝かではないが、クレアの場合、臓器に心が宿り、ドナーの記憶が刻み込まれていると信じた上で積極的に推進しているのだ。
彼女はいわば、背後霊を背負い込んで生きる覚悟を許容する。その霊を彼女は胸深く、吸い込むのだが。そして、ドナーの家族達にも会い、家族の一員として受け入れられる。ティムの墓参りまでする。ティムとクレアは一体化し第三の人格を付与されて、作者(クレア)は生の旅を続ける。【至上の愛】のメタファーにしては出来すぎである。
この本を読了すると、作者の想いと違って、吉本隆明等の「私は臓器を提供しない」に軍配を上げたくなった。兎に角、みんなで議論を深める努力が必要である。単なる西洋医学、東洋医学という立場でなく、ホリスティク医学という土俵で考えるしかなく、結局、我々の死生観の哲学が問われることになろう。臓器移植法だけで問題は片付かないのだ。自然死はないものねだりであろうか。でも、そんな往生をしたいものである。
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