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江戸時代後期の尊皇思想家高山彦九郎を題材にした伝記小説。自身の日記をベースに綴られている。学者として足利幕府以来の武断政治は仮であり朝廷による文治政治こそ本来あるべく姿という信念のもと遠く薩摩まで赴き藩主に説得を試みるもあえなく失敗。だが彦九郎が残した功績は確実に明治維新への大きなうねりの起点へと。豊かな教養と強固な信念を持つことで多くの学者、商人職人武士等とも交流を持つ市井の人としての側面と若き頃故郷に帰れぬ身となるなど純粋で物悲しい一面を持つ主人公の生き様がズッシリ胸に響く。人知れず歴史を変えてきた人物に光を当て痕跡を明らかにする歴史作家はやはり凄いな~。
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同じ作者の「冬の鷹」で、前野良沢と高山彦九郎が仲良しだったと知ったので、今度は彦九郎サイドから。
時は天明9(1789)年。舞台は天明の浅間焼けやら大飢饉やらの直後の江戸から始まる。細井平洲に諌められ、父の仇討を諦めた高山彦九郎が蝦夷に出発するきっかけは微妙だけど、道中まあ、友人知人の多いこと。彦九郎は寛政の三奇士の最長老だが、3人はニアミスで一堂に会することはなかったそう。蝦夷まで後一歩で断念したら、今度は京都へ!でもって鹿児島へ‼︎幾ら崇高な使命を帯びたからとは言え、どんだけフットワーク軽いんだ…。
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ついついこの人の本の題名に引かれて買ってしまうのでですが、失敗でした。
私の好きなのは物語。これではまるで歴史研究家の研究論文です。あるいは主人公が書いた日記の現代訳というべきか。史実に正確に、という気持ちなのかもしれませんが、全く物語性はありません
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江戸後期の尊皇思想の実践者高山彦九郎の日記を元に江戸時代の尊皇思想の胎動期を描いている。
鎌倉幕府を直接滅ぼした新田義貞に仕えた新田十三騎の1人である生粋の尊皇家系に生まれた。
兄との確執、家族との別れ、蝦夷地への渡航失敗、京都での尊皇一派との関係、鹿児島への尊皇活動など、吉村作品ならではの丁寧で、少し退屈な描写は結末には、三倍返しをしてくれる作品に仕上がっている。
幕末期の尊皇攘夷運動には、たくさんの作品はあるがその胎動期の作品をしっかり描いている吉村昭氏は只者ではないと改めて思った。