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紙の本
一番恐ろしかったのは。
2001/05/25 13:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みやぎあや - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直、上巻ではそんなに盛り上がってなかったです。娯楽性はちょっと薄いかな、という感じで。京極夏彦が激賞ってほんとうか?みたいな。怖くないし。でもって謎の病気が広がっていく話としては、そのリアリティでは「夏の災厄」のが上だと思ったし。
ただ、プロローグで柩を積んで出ていったのは誰だろう、多分静信か敏夫のどちらかだと思うけど、いったい誰だろう。血で汚れていたってどういうこと??って、それがずっと気になっていました。
しかしその後下巻を読み終えた時のずっしりした読後感はすごかったです。「面白い!」と叫ぶよりも、かなりショックを受けました。作品の雰囲気みたいなものがちゃんと手元に残って、しばらく放心してました。
よくも、ここまでたくさんのキャラクターを書き分けて、言い方は悪いけれどそれぞれの辻褄を合わせて、全体として統制の取れた魅力的な小説に仕上げたものだなと思います。力量のある作家さんじゃないとこうはいかないでしょうね。絶賛も激賞も全部納得。下巻で一気に盛り上がって結末になだれ込んだ感じでした。
ネタバレ↓
全く想像もつかなかった展開と鮮やかな結末。私は静信か敏夫かどっちかは恐らく死ぬだろうと思っていたのでそうならなかったのは単純に嬉しかったです。でもそれ以外では容赦なく人が死んでます。夏野は仕方なかったとしても、昭は助かると思っていたのに…。
ストーリーもいいけれど、下巻に入って、登場人物が俄然かっこよくなりました。敏夫がね、まさかここまでやってくれるとは思わなかったんですよ。この人どこかで破滅するタイプだと思っていたから。行動力も統率力もある医者……素敵。けれど奥さんを使って実験する非情さや、それ以上に彼が村人を煽動して屍鬼を狩るシーンは本当に怖かったです。そこで一気に人間=善、屍鬼=悪という図式が逆転したようで。
後半からラストにかけてのあの混乱と狂気の中で、敏夫だけが冷静でした。彼だけが素面でつい最近まで同じ村の中で生活してきた人間の慣れの果て…屍鬼に対処できた。それは冷たいというよりも、感情と理性を完全に切り離した結果なんでしょうね。私は今まで、どうして敏夫と静信は互いにもっと和解し合えなかったのか、協力することができなかったのかと思っていたのですが、それも仕方ないことだったのかもしれません。
紙の本
時間があるときに読みましょう。
2002/10/06 19:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りゅー - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある村に次々と起こる奇怪な事件の物語完結です!
人間とは? 屍鬼とは? その二つに共存の道はないのか!? 静信の選んだ道は? 寺への信仰は!? 人間として医師として…苦悩の果てに。
上巻難しく感じた人がほとんどでしょう。それでも読み終えた方はすぐこちらへ!
上巻と打って変わって、下巻は一気に読んでしまいます! 途中でどうしようもなく止められないのがこの下巻です! 「仕事の合間に…」なんて絶対出来ないっ!!
この下巻を読んだ時きっと、考えるものがあると思います。下巻を読んでいるうちに、自分の中での当初の思いが変化してくる事がわかります!
かなしくもあり、深い感慨をえる一冊に間違いありません。
事件の結末はどうしようもなく自分自身に、そして人間とはと疑問をなげかけるものとなるでしょう。
小野先生の作品の中でも最高です!! これほど人に広めたい本もありません!
絶対お勧め〜〜〜!!!!!
紙の本
人間の業というもの
2002/04/04 00:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:奥原 朝之 - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直言って上巻は長く感じた。挫折しかけたこともあった。しかし、下巻はページ数にして上巻の約1.5倍もあるにも関わらず読み出すとあっという間であった。
下巻で侵入者の正体が明らかになり、村で何をやろうとしているのかが判明する。それを阻止しようとして医者を中心に村人は動き出す。しかし住職は中立の立場を保とうとする。いや、中立ではなく、どちらかというと侵入者に与していると言えるかもしれない。
侵入者は好きで村を侵食している訳ではなかったのである。それに気づいた住職は生きとし生けるものの業というものについて考え込む。なぜ調和して生きていけないのだろうかと。なぜ共存共栄できないだろうかと。
住職と医者はこの村で育った幼なじみである。これまではお互いに村の中心的人物として活動してきた。しかし事件が起こってからは両者の立場は対立する。住職は生物の共存共栄を優先し、医者は人間の都合を優先したのである。
医者と住職を主人公に据えることで、生と死の対比だけではなく、現在の我々が直面している自然破壊の縮図を暗示しているような気がしてならない。