紙の本
パタースンの実力
2001/05/20 17:14
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投稿者:seimei - この投稿者のレビュー一覧を見る
2段組550Pになろうかという大作、読むのに実に6時間、非常に楽しめた。著者のデビュー作『ラスコの死角』での主人公パジェット弁護士が引き続き主人公。パジェットの子供カーロの母である女性キャスターメアリがレイプされそうになったとして人気作家ランサムを射殺。殺人現場で発見されたテープは大女優が語るかつての大統領候補とのある出来事が。メアリがパジェットに弁護を頼んだことから、彼らの過去を巻き込んだ運命の輪が廻り始める。主人公たちの運命を握るテープの公表をめぐり検察との対立から、予備審問の道筋を選ぶ展開のせいか、陪審不在の法廷描写は他のリーガルサスペンスと少々気色が違う。
パジェットの有能ぶりは実は法廷よりも私生活、息子カーロとの関係に収束されるのも面白い。法廷ではパジェットの助手である弁護士テリ、判事のキャロライン、検事のシャープ、被告のメアリと女性たちの攻防がメインとなる構成で、レイプがあったのか? という焦点に、テープに関わる女性群像、それぞれの家族との葛藤が描かれていく。裁判そのものに関するカタルシス、最終弁論よりも、パジェット一家の葛藤のクライマックスに比重が傾いたのが、リーガルサスペンスとしてのジャンルの求心力に欠けるが、物語としての完成度は非常に高い。
去年に出たパジェット・シリーズ『子供の眼』も読むのが楽しみになってきた。この著者は私のなかでの信頼する実力作家のランキングに入ったといえよう。
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高名なテレビの美人キャスター、メアリ・キャレリは、ベストセラー作家として名高いマーク・ランサムにレイプされそうになり、彼を射殺した。だが、メアリの証言と検死結果には食い違いがあり、不利な状況証拠も、動機までもが見つかった。
メアリは、15年前ともに政府の腐敗を暴いた元恋人であり、彼女の息子の父親でもあるクリス・パジェットに弁護を依頼する。パジェットは、彼の最愛の息子カーロのために弁護を引き受けざるを得なかった。しかし、メアリを一番信じていないのも、又彼だったのだ・・・・
いや〜、メアリって、ほんまにおっそろしい女です(笑)。
被告が女、検事も、裁判長も、女、登場する証人たちの多くも女、と言うこの作品、その誰もが、生き生きと魅力的でした。
描き出されるのは、何もかも灰色のメアリの疑惑、そして、その疑惑の根源はなんだろう?と、読みながら頭を悩ませました。何しろ、読めば読むほどメアリって食えない女。
裁判長(私のお気に入りです!)はじめ出てくる女たちがみなひたむきで魅力的なだけに、メアリの根性の悪さがひときわ引き立って、興味をひきつけます。
そして、それにもかかわらず、、ラストは少し甘く爽やかでした。
女性が殆どを占める物語の中で、パジェットとカーロの父子の間に一筋涼やかな風が流れていて、心地よかったです。
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作家名に覚えがあって検索したら、79年に「ラスコの死角」を書いた人で、それだけを読んでいたのです(翻訳発行は81年)
なんとその15年後の続編でありました。
サンフランシスコの弁護士クリストファ・パジェットを主人公とする法廷ミステリです。
行動的な主人公クリスの大活躍に加え、弁護を依頼してきた昔の恋人メアリの強烈さ、家庭の苦労を抱えた同僚の弁護士テリーザの感じのよさ、引き取った息子カーロとの切ない絆など…
目配りが行き届いた出色の出来。
作者自身が弁護士だそうです。
多忙で何年か文筆を断っていたのが、このヒットで作家活動に専念する事になったという…
「子供の眼」はさらにその続編。
どれも面白いので「ラスコの死角」「罪の段階」「子供の眼」と順序通りに読んだ方が良いですよ。
もし、一冊だけなら「罪の段階」ね。
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人気リーガルサスペンス作家リチャード・ノース・パタースンの傑作と誉れ高い作品。文庫上下巻で1000ページ近く、ドラマティックな展開にも関わらず、全登場人物のキャラクター設定がユニークなのに破綻がなく、読み進むほどに裁判と人間関係の納まりどころが気になって仕方がなかった。面白い。
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弁護士の個人的な苦悩が印象的。
それぞれの性格や立場による描き分けがとてつもなく上手かっただけに、法廷場面で争う描写がもうちょっと欲しかったですね。
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後輩のお母様に勧められてお借りした本なんですが、めちゃくちゃ面白い!
著者のR.N.パタースンは(元)弁護士なので裁判での争いでの描写が緻密かつリアル、リーガル・サスペンスとしてピカイチの出来であると思う。法廷での状況証拠の積み重ね、相手の論理を突き崩そうとする検察官と弁護士のやりとり、証人捜しに十数年前の政界汚職の真実など、緊迫感あふれるプロットが良い。実は法廷ミステリーを読んだのが初めてに近いのだが(たぶん)。
キャラクターもかなり細かく設定されている。それぞれにバックボーンがあり、野心や願望や思惑があり、入り乱れてより複雑さを増す。
ミステリーであると同時にこれは「家族」の物語でもある。ここもみどころだ。
強いて言うならば、登場人物が多くて名前を覚えられない(カタカナ苦手←日本史選択者)のと、前半で時間軸が行ったり来たりするので頭がこんがらがることだろうか。それでも上巻を半分も読めばだいたいの人間関係を把握できる。
とにかく上下巻で読み応えたっぷり、ミステリが好きな人、法学を志す人などなど、万人にオススメである。
これを読み終わったら、続きものの『子供の眼』に行こう→決して逆の順に読まれませんよう。
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パタースンのは他にも読んだはずだけど思い出せない
あ、子供の目と最後の審判だ。
パタースンの本は、米のリーガルミステリをある程度読んでないと理解しがたいストーリー展開だが
スリリングで読み応えがあった。
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米国にあるある的な法定モノ。
登場人物の背景がかなり細かく描かれていて
キャラが生き生きしてる....
けど、細かすぎてなかなか話が進まないのが難点。
次の展開に期待させるように話が進むので
ワクワク値が高く、面白いちゃ面白い。
下巻に期待。