紙の本
あなたは誰に自分の影を重ねるでしょう……
2001/01/21 01:02
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投稿者:nakurumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
姫野カオルコの『終業式』が、いい。
文庫一冊の中身は全部、手紙やメモやファックスで構成されている。高校時代から物語は始まる。女ふたり、男ふたりの四人の手紙やメモが中心になっている。年代は私より少し上、三十歳代の人には郷愁を誘うアイテムが沢山登場する。赤い疑惑、セイヤング、ツェッペリン、サボ・サン……
四人はついたり離れたりしながら、年を重ねていく。思いを伝え切れないもどかしい手紙、愛に溢れた手紙、投函されなかった手紙、怒りの手紙、せつない別れの手紙、疑惑に紛れた手紙、年賀状や結婚報告の葉書……エトセトラエトセトラ。
物語自体はとてもオーソドックス。そこには、奇抜な展開はほとんどない。そのオーソドックスさが、またいいのだ。四人に向けられた筆者の暖かな眼差しだけが感じられる。
人はこうやって、シアワセとフシアワセを繰り返しながら生きて行くのだなぁ。良くも悪くも、それが生きるということなのだなぁ。そんなことを考えさせられた。
私は泣いてしまった。作品の中の2通のある手紙を読んでいたとき。あまりにも切なかった。忍ぶ思いというのは、なによりも切ない。他の人が読めば、私とは違った部分に心を動かされるかも知れない。
きっと、多くの人がこの四人の中に、自分の影を見るはずだ。この作品に、自分の過去を重ね合わせたり、自分の未来に思いを馳せたりするのは、面白いだろう。切ないけれど、なぜか励まされる一冊なのだ。
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数人の男女の半生が書簡形式でつづられる。女は男に手紙を書き、男はまた別の女に手紙を書く。すれ違う心と、タイミングが人と人をある時は分かち、ある時は結ぶ。
姫野カオルコを初めて読んだのは高校に入ったばかりの頃で、この小説が『終業式』と改題される以前に、光文社から『ラブレター』という題で出ていて、古本で手に入れたのだが、姫野周辺でよく語られる、作者の名前と装丁、タイトルのせいで乙女な本と勘違い、の一例であった。
結果。ミツコを買って読み、変奏曲を読み、整形美女を読み、その間に既刊のエッセイを含む文庫を揃え・・・。一番好きな作家が姫野カオルコだ。
いつか、姫野さんと、ハワード・ホークスのビデオを見ながらビールを飲んで茶豆を食べたりしたい。ビールは、あるいはクァーズ。
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んーとこれは太字星4つだけどね、実際は星5つモノですな。んじゃ何故に4つにしたか?と問われたら、それはワシの若さ故に、と答えよう。って意味不明やね。兎にも角にも、これはワシ前半部分は他愛もない未熟な学生のやりとりだこと…と思いながら読んでいたけど、後半の展開がスゴイね。引き込まれるね。何本もの運命線が複雑に絡み合ってるね。恋愛におけるバイブルと言えちゃうね。高校時代のワシに読ませてあげたいね。これ読んで上手に恋愛してみなさいとアドバイスしたいね。それが出来ないお年頃のもどかしさを思い返しては身体がよじれるね。っつーか是非読です。愛に悩める学生さんとかは必須科目の教科書と言っても過言ではない。なんちて。
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1冊のすべてが手紙や日記で構成されている「小説」。構成からまず圧倒され、読んでそのせつない恋に涙する。昭和を感じさせる表現も多いけれど、そんなことよりとにかく面白く一気に最後まで読めてしまいます。おすすめ。
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一生のうち、何度か読み返すだろうと思う小説。並べられた手紙が、4人の男女を中心にそこから派生した人間関係を語ります。十代の終わりに初めて読んで、それから毎年読んでいます。毎年、気がつくところが増えています。感じるところが変わっていきます。無人島にもっていきたい一冊です。
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読始:2007,8,28
読了:2007,8,31
全て手紙で構成されている
つまり誰かから誰かへ宛てた手紙を読者はひたすらよむわけ
途中登場人物関係とかわからなかうなったりもしたが、そういうところも考えながら読むのがいい
この形式って私の中では新鮮で面白かった
だって一度も登場人物同士が顔を合わせないのに話は進んでいくんだからね
高校時代から大人になるにつれ手紙の書き方も変化する
手紙を「書く」のではなく「認(シタタ)める」この違いって口では説明できなくとも、感覚的にはわかってるんだよね
交換ノートとか手紙交換(文通)とかもうやってる人はいないかな
高校時代にやってれば、それも青春の思い出として残ったのかなとか考えたりもした
ひとつ指摘するなら、話のゴールが見えないことかな
まぁ主人公達の心情の変化?を書いてるだけだから、特にこういう結末っていうのがないわけで当然かもしれないけど
そういう意味で途中で飽きてくる人もいるのかもしれない
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2009/6/7
おもしろい。
恋愛小説は違う私だけどこの人のはいける。
久しぶりにいい作家さん発掘したよ!
うれしー
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高校生の時からの手紙のやりとりでみんなが大人になっていく様がよくわかる。手紙文だけで心の中の変化が手に取るようにわかるのには驚き。
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この世に生まれ落ちたからには、時間という余剰次元を無視することはできないと誰もが知っている。それに逆らうことなく浮かび運ばれることが人間のなりわいなのであろうか。逆らえないものだとわかっているのに、過ぎてしまったあの頃を悔やみ、来たるその時から逃れようとあがいてしまう。
この本と出会ってからもう5年は経ったと思うけれども、わたくしが齢を重ねるにつれて感情移入する登場人物も変わってきたりするこの不思議さ!
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高校生から大人まで手紙だけで話が進む。途中誰がだれだか混乱。
2014.7.1
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メールが普及してからは年賀状すらもう出さなくなってしまいましたが、手紙だからこそ電子的なものでは伝わらない誠意や色んなものが詰まっていると思いました。今や手紙を出したいと思っても相手がいないです。みんなメールですんでしまうし、改めて手紙なんて出してもなぜと思われてしまうし、私も突然きたらちょっと吃驚するでしょうし。携帯などがないからこそコミュニケーションツールとしてすぐそばにあった手紙。高校からずっと結婚して離婚まで手紙の応酬が続きます。タイミングが悪いなーとか一喜一憂してしまう部分があったりと面白く最後まで読めました。
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登場人物たちと同年代の私にとって、懐かしい風俗が登場するたびに、自分のあの頃はどうだったろうかと懐かしく思いだしました。全編、手紙だけで構成されているのが面白い。読んでいるうちに、自分の10代から30代をダブらせてしまいました。自分が男子校出身であることが、悔しくてなりません。
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全編に渡って登場人物たちがやり取りした、手紙、メモ、faxなどで構成したユニークな小説。高校から結婚、それぞれの進路をゆくキャラクターの人生が綴られる。
注目してほしいのは、キャラごとの書きわけ。浪人時代に読書に耽っていた者は大人になってもやたら「文章引用」したがるし、高校から女の子っぽい子は七面倒臭〜い感じで成長していっているなどなど。
「あー、いるよなこういう人…」
って同感しながら読めます。
ただ、キャラが煮えきらず、個人的には☆3つ。
新感覚の小説に巡り会いたいときに読む本。
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手紙形式になっており、その手紙の中で進む物語なんだが、どうも湊かなえの告白のイメージが抜けずいつ人が死ぬのかと思ってたら、特になんともなく男と女がくっついたり離れたりなんだりかんだりを手紙を通してやりとりするだけだった。
誰か死ぬか殺されるかと思って読んでしまった私としてはとてつもなく拍子抜け。
ついでに手紙がものすごく昭和感が出ていて、リトルイングリッシュな感じが、ルー大柴のようで読みながらなんだかこっちが恥ずかしくなるような手紙の書き方でした。笑。