紙の本
ヒーロー
2002/06/29 21:49
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投稿者:すまいる - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品はオウエン・ミーニーというスーパーヒーローの物語である。五歳児ほどの大きさで成長が止まり、異星人みたいな声で話す男の子オウエンの生涯が、彼の親友ジョンによって物語られる。
この作品を元に作られた映画「サイモンバーチ」では、おそらく時間の制約からからであろう、少年時代のエピソードに的が絞られているため、彼の格好良さが感じられにくいかもしれない。でもこの原作小説を読んでもらえば、オウエンの格好良さが分かってもらえるはずだ。彼は本書を読んだすべての読者の友人であり、ヒーローである。
「ぼくは神さまの道具なんだ!」と言い続ける彼にとって宗教とはいったい何なのか? 彼がべトナム戦争に直面したときにとった行動とは? 「カッコイイとは、こうゆうことさ」とは、どこかの有名な飛行機乗りの豚さんの台詞です。でもオウエン・ミーニーの格好良さだって絶対負けてない、と僕は思うのだ。
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正直アメリカの政治のことも宗教のことも文学のことも全然わからないが、それでもおもしろかった!!!
いちばん最後の、語り手・ジョンの魂の叫びのような祈りに胸を締め付けられる。
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語り手はアメリカのニューハンプシャーに住むジョン・ホイールライト。彼の少年時代から話は始まる。
若くて美しい母の私生児として生まれたジョンだが、母は彼に父親が誰なのかを教えることなく事故で死んでしまう。
その事故に関わっているのが、親友のオウエン・ミーニー。
11歳の時点で5歳児くらいの身長しかなく、変わった声の持ち主のオウエンこそが物語の主人公。
成人し、カナダで教師をするジョンが回想する形で、二人の少年時代、青春時代(ベトナム戦争時代)が語られます。
重大な意味が隠されたささいな出来事、徐々に象徴性を帯びていく静物たち。平穏な日常に潜む秘密と暗示。
それは静かで強い、奇跡の物語。
ひとつひとつの出来事に対する描写が、丁寧というか執拗。
徐々に食い込んできて、がっちりつかまれるような感じ。
読んでいるうちに頭の中で勝手に映像化されてしまっていて、それが夢に出てきてしまった。
宗教的な部分が理解しにくく、また執拗さに辟易しつつ、正直、感動的でありました。
映画「フォレスト・ガンプ」から娯楽性8割減、悲劇性5割増、さらに宗教性を付加した感じ、と言えなくもない。
(娯楽性8割減、という時点で別物?)
基本的に暗めでちょっと病的だけど、いいですよ。
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久々に長編小説を読んだ。小説の良さを感じさせる良作だった。
予兆とたくらみと。それらを収束させる結末がなんともよかった。
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うーん、名作の誉れ高く、これがアーヴィングで一番好きと言う友人知人も多いのに、ぼくは最後までいまひとつノレなかった。
技術的なことだけど、オウエンのセリフが全部ゴチックなのもどうも苦手。
「未亡人の一年」の物語的なドキドキ感を求めて読んだからだろうか。お昼休みの短い時間にちょっとずつ、という読み方が災いしたか。
つまらないわけじゃないけれど、ページをめくりながら、残りの量の多さが気になって仕方なかった。
残念。
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1か月くらい付き合っていたような気がするが実際には2週間。なかなか読みづらい長編だ。今まで再読しなかったのもうなづける。アーヴィング作品の中でも筋金入りのくどさ(良い意味で)満載。このくどさを長い時間かけて通り抜けラストにたどり着いたところでズーンと感動。
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主人公(ジョン)が子どもの頃からの親友であったオウエンを回想する.オウエンは大人になっても身長は子どもほどしかなく,声変わりしていないキイキイ声であるが,極めて優秀で,級友たちや学校には多大な影響をおよぼしている.オウエンはたびたび啓示的な発言をするが,それを最も近くで聞くのは語り手であるジョン(=ヨハネ)である.どうやらオウエンは自分が死ぬという考えて取り憑かれているらしい.ジョンの父親が誰だかを明かさないまま,ジョンの母親は死んでしまった.ジョンのいとこたちとの交流,オウエンの放校,ケネディとモンロー,そしてベトナム戦争の泥沼に苦悩するアメリカが大きなうねりとなって共鳴して,ラストでは読者は号泣する羽目となる.
映画「サイモンバーチ」を随分前に見て,本書は読む必要がないと思ってスキップしていたが,換骨奪胎とはこのことで,全然内容が違うじゃん! 自分の中ではジョン=アーヴィングのベストである.
聖書や教会での行事が頻繁に引用され,また,信仰とは何か?という問いが一つの柱となっているが,そこにこだわって理解しようとする必要はないように思う.
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クリスマス周辺に書くべき感想ですが、なかなかまとまらず今年中になんとか駆け込みで。
崇高な宗教劇を見終えたという読後感。オウエンが神の子イエスであり語り手のジョンがヨゼフ&ヨハネということで、これはジョン・アーヴィング版福音書なんですね。
ゆえにキリスト教的な教訓が多々あるのでしょう、そこが分からないのが歯がゆい。とはいえなんだってオウエンは5歳児ほどの身長しかないのか? ジョンの父親はいったい誰なのか? それを追うだけでもたいへん楽しゅうございました。
まさかそんな収束のさせかたってあります? って結末ですが、そりゃ神の子イエスのやることですから、そのままそっくり受け入れたいと思います。が、現実は受け入れ難い。
30年以上も前のお話ですが、作者の憂いが伝わってきます。どうしちゃったんだアメリカ人? 目を覚ましてくれ!
が、無理っぽい。でも抵抗しないと。きっとオウエン・ミーニーは卵だったのでしょう。そっから何が生まれるかは読んだ者しだい。辛いなぁ。
良いお年を!
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いつもながら私はアホなので、これは大江健三郎のノリかなと思いつつ読んだ。大江にとっての息子との関係とこの作品の主人公&オウエンの関係が重なるように思われたのだ。人と異なるようにしか生きられない人物。しかし、その異物/アウトサイダーとしての人生をも許容し、呑み込むのがこの世界の実相/リアルなのではないか。アーヴィングの作品はそうした異物/アウトサイダーを湿っぽいようなドライなような、ペーソスを感じさせる筆致で描く(この作品で「アイロニー」がキーワードとして出てくるのが面白い)。そして、見事な形で大団円を描く