投稿元:
レビューを見る
臼杵藩稲葉家奥日記に見る江戸大名の暮らし
読了日:2008.04.26
分 類:一般書
ページ:191P
価 格:1700円
発行日:1999年9月発行
出版社:吉川弘文館
評 定:★★+
●作品データ●
----------------------------
テーマ : 江戸大名の暮らし
語り口 : 研究レポート風
ジャンル : 一般書(学術系)
対 象 : ややマニアックな一般向け
雰囲気 : 研究レポート風
---------------------------
---【100字紹介】------------------------
「臼杵藩稲葉家奥日記」は、延べ120年あまりもの
日々の暮らしについて書かれた史料。
現在は臼杵市立図書館に所蔵されている。
この奥日記から、特に隠居した大殿様の江戸暮らしを中心に、
江戸大名の日常を述べる。
-------------------------------------------
本書の下敷きになるのは、臼杵市立図書館所蔵の「臼杵藩稲葉家奥日記」。
臼杵藩は外様で、元々の藩主の出身は美濃の国。領知は5万石と小藩でしたが、1600年の入封から1871年まで、藩主の転封なしで250年以上、同じ稲葉家が治めていました。
そんな臼杵藩の日記として、江戸上屋敷(主に現藩主一家の住まい)、江戸下屋敷(隠居した大殿様の住まい)ほか、江戸の役所や臼杵城などに8箇所に分かれていて、「奥日記」であるため、主に暮らしに密着した記述が残っているようです。
全体は、下記の3部構成。
「臼杵藩の江戸屋敷と公務」
「江戸屋敷の行事と儀礼」
「大名の生活と遊興」
1つめの「臼杵藩の江戸屋敷と公務」では、臼杵藩に関する概説や、稲葉家の概要、江戸と国元(臼杵)とのやりとり、公務、そして臼杵での暮らしについてが書かれています。
2つめの「江戸屋敷の行事と儀礼」では、年中行事と人生儀礼に分けて、前者は「一月の行事」から「十二月の行事」まで、月別の主な行事と、そのときの祝い方や食事、贈り物などについて細かく実際のメニューや数字が示されています。後者は家督相続に始まり、結納・婚礼・縁組、着帯・出産、お七夜…と、一生単位のイベントについて、同じように祝い方や食事、贈り物や出掛ける場合ならお付きの人の構成などを事細かに記述。
3つめの「大名の生活と遊興」は、更に4つに分かれていて下記の通り。
「食生活と物価」(主に食材単位の解説)
「臼杵の郷土料理」(7つの料理を全4ページ程度で解説)
「隠居後の気ままな生活」(大殿様の寺社参りや花火や花見見物など)
「西洋の文化と大名の教養」(びいどろを買ったとかオルゴールをもらったとか)
全体に読んで愉しむというよりは、研究を垣間見ていると思って読むか、実際に想像してみて「おー、こんな感じだったのかー」と読むものですね。ただ、本気で「研究したいので資料に…」と思って読むものでもないかも。資料にするにはデータが少なすぎます。その意味では、実際は何を狙って書かれた作品なのか、ちょっと分からない。全体のまとま���としても、記述の重複が多く感じられ、あまり綺麗に構成されているとも思えないのですが、とにかくオリジナリティはありますね。下敷きとしてしっかりしたものが存在していますから。
江戸の小藩の大名生活を垣間見るには、なかなか興味深いです。
---------------------------------
文章・描写 :★+
学 術 性 :★★★★
簡 潔 性 :★★★
独 自 性 :★★★★
読 後 感 :★★★
---------------------------------