紙の本
アラブの大国の歴史が2時間でわかる!
2000/11/08 17:48
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投稿者:石川憲二 - この投稿者のレビュー一覧を見る
サウジアラビアは現代社会において極めて特殊な国である。まず、最強の戦略商品である石油をどの国よりたくさん埋蔵しており、輸出量を調整したり、オイルマネーを駆使することで超大国に匹敵するほどの政治力をもっている。さらに地球の人口の18%を占めるイスラム教徒の二大聖地であるメッカとメディーナを国内に擁し、その影響力は計り知れない。それでありながら「サウジ(サウード)家のアラビア」という国名が示すように、ここは、ある一族が支配するエリアにすぎないのだ。なにしろ成文憲法がないのだから、国家という定義付けができるかどうかもわからないのである。そしてもうひとつこの「国」の特殊性をあげるなら、ある程度、真っ当に世界史や地理を勉強した人でも、ほとんど内情を知らないという点だろう(日本のインテリの何割が、サウジアラビアの国王の名前をいえるだろうか!)。もっとも幸いなことに、この国は建国してから、わずか70年しかたっていない。だから本書を一冊読めば、それだけでサウジアラビア通にはなれるのである。
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[ 内容 ]
石油とイスラームと。
国際テロリスト、ラディンはなぜこの国に生まれたのか?
中東現代史の皮肉がそこにある。
[ 目次 ]
第1章 アラビアとイスラーム―イスラーム誕生以前、そこは部族社会だった
第2章 アブドゥルアジーズの戦い―宿敵イブン・ラシード家を倒すまでの道のり
第3章 ヒジャーズ征服―聖地奪回、国家統一で最も腐心したことは?
第4章 王国の成立と獅子身中の虫―不満部族反乱、隣国の横槍に苦悩する新王国
第5章 石油の発見―米英の石油開発競争は王家に莫大な金貨を…
第6章 アメリカへの急接近―パレスチナ問題を残しつつ親米路線へ向かう
第7章 アラブ民族主義の嵐の中で―「砂漠の豹」を失った王家の疾風怒涛の10年間
第8章 意欲的な国土開発―「福祉国家」への変貌を狙うファイサルの戦略
第9章 石油武器の発動―第四次中東戦争に際し、遂に「石油を武器」に
第10章 2つの戦争の間で―イ・イ戦争から湾岸戦略にいたるまでの模索
第11章 初「議会」は開設されたが―真の近代化・民主化を問われる王家の今後は
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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サウジアラビアの現代史が、コンパクトに非常に分かりやすくまとめられている。私のように、これからサウジアラビアのことを勉強しようと思っている者にとっては、好適の入門書だ。サウジアラビア王国は、特殊な国である。各部族・各家系間の争いを勝ち抜いたのがサウード家。サウジアラビアという国名は、「サウード家のアラビア」という意味である。王様のいる国は他にもある。例えばタイなんかがそうだし、女王ではあるが、イギリスもそうである。タイやイギリスの王様なり女王様というのは、でも、実質的な権限はない。国政の権限は、政府であり国会であり、というところに委ねられている。ところが、サウジアラビアは異なる。国王が首相も三軍の長も兼ねる。国会もなく選挙も政党もない。「諮問委員会」という評議会が、政策決定について国王に「諮問」することはあるが、最終決定権は国王にあるし、そもそも、諮問委員の任命権は国王にある。要は、基本的に全ての権限は王家に属しているということなのである。もうひとつ面白い、というか興味深いのは、この国の憲法は「コーランでありスンナである」と定められていることである。もちろん、行政の決まりのいちいちにコーランが顔を出すわけではないであろうけれども、でも、それらを律するものの考え方みたいなものは、コーラン、すなわちイスラム教なのだ。サウジアラビアと、ドバイの両方を訪問されたことのある方だと、すぐに分かることであるが、サウジアラビアもドバイ(UAE)もイスラム教国なのであるが、その戒律の厳密さは全く異なっている。サウジアラビアでは宗教上の戒律はかなり厳しく守られているようである。我々異教徒であっても、国内では基本的に飲酒をしてはダメだし、豚肉も食べられない。ドバイでは、安息日を除ければ、レストランで自由に飲酒は出来るし、日本料理店でトンカツを食べることも出来る。それは、良いとか悪いとか、ということでは、勿論ない。ただただ、そういうことである、ということだ。おそらく、この国に石油が出なければ、サウジアラビアのことを気にする人はいないか、あるいは、いても少数だろう。ところが、この国が世界一の石油埋蔵量を誇る国であるということで、我々石油化学業界に勤める者にとっては、無視出来ない国なのだ。あるいは、私のように、この国で投資チャンスを伺っている者にとっては、相当詳しくウォッチをしなければならない国なのである。私はサウジアラビアを数回訪問しているけれども、そんなに嫌いではない。アルコールはなくてもやっていけるタイプである、ということが大きな理由の一つなのだろうけれども、非常に興味深い国だな、という感想を持つだけだ。まぁ、いずれにせよ、仕事上の必要性もあり、しばらくサウジの勉強を続けるつもりである。
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教科書的な内容でどうも面白くないが、サウジアラビアの概略はなんとなくわかった。いつの日かいくことがあるかどうか。
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サウジ建国から、911以前までのサウジの歴史。
興味が薄いと冗長に感じてしまうかも。
今のサウジを読み解くには、もう少し最近までをフォローしたものを読む必要があるが、2000年までの歴史をざっと追うには手頃なのでは。
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サウジアラビア現代史。岡倉徹志先生の著書。トルコで起きたサウジアラビア人記者死亡事件のニュースを見て読みました。サウジアラビアの歴史、王族が持つ巨大な権力、石油とイスラム教との関係、言論統制。異常で非常識とも思えるサウジアラビアの状況だけれど、簡単に変わりそうもありませんね。イスラム社会は複雑です。