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紙の本
高分子型燃料電池は注目の近未来エコ・カー燃料電池車実現のカギ。その開発最前線をリポート
2000/11/08 12:15
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投稿者:丸山 正明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
二酸化炭素(CO2)を排出しない地球環境に優しいエコ・カーの開発が白熱化している。従来のガソリン・エンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車も登場した現在,次世代エコ・カーの本命とみられている燃料電池車の開発が活発になっている。大手の有力自動車メーカーは燃料電池車の開発が生き残りに不可欠とみて,燃料電池のシステム化を急いでいるからだ。
本書は,燃料電池の中で一番新しい新参者でありながら,自動車用や家庭用の燃料電池の主役に躍り出た固体高分子型燃料電池(PEFC)を中心に開発最前線のインタビューをまとめたもの。固体高分子の原理から始まり,世界中で4社しかつくれない燃料電池用高分子膜の各化学メーカーの開発状況をしっかり報告している。膜厚を薄くしたり,コストダウンを図るなど実用化のための課題を解説する。電極に付ける白金触媒のコスト高解消の取り組みもよくまとめてあり,切実感が伝わってくる。
固体高分子型で先行するカナダのバラード・パワーシステムズ社の開発動向,そのバラードと組んで燃料電池車開発をリードしてきたダイムラー・クライスラー社の開発動向を,歴史的経緯も含めて分かりやすく説明する。そして,ここ数年間に急速に実力を高めている東芝や三菱電機,三洋電機,石川島播磨重工業,三菱重工業などの電池メーカー,システム・メーカーやトヨタ自動車や本田技研工業などの自動車メーカーの追い上げ体制を生き生きとリポートする。この部分が一番面白い。燃料電池車が単なる実験車から実用車に向けて,システムが洗練されていく過程がよく分かる。最近は,コスト面と性能面で課題が多い自動車向けの前に,家庭用の小型コージェネレーション(電熱併用)・システムとしての燃料電池が実用化は先行するとの事情も的確に伝えている。
固体高分子型以外に,実用化が進んでいるリン酸塩型(PAFC),溶融炭酸塩型(MCFC),固体電解質型(SOFC)についてもそれぞれ開発経緯を簡潔によくまとめてあり,燃料電池全体の開発動向がつかめる構成になっている。
ただし,本書は急速に進化している固体高分子型の取材に時間を取られたためか,「固体電解質」を「固体高分子」に,水素からできる「水素イオン」を「電子」などとする誤植が肝心の個所に残っている。校正に追われたためだろうが,初心者は誤解しかねない個所だけに惜しまれる。
(C) ブッククレビュー社 2000
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