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紙の本
生活の視点からやさしく語る最新科学,やや食い足りない感も。生半可な疑似科学知識に振り回されがちな人に
2000/12/28 12:17
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投稿者:松浦 晋也 - この投稿者のレビュー一覧を見る
21世紀を迎えて科学はどこへ向かうのだろう,それで私たちは幸福になるのか不幸になるのか,でも自分には科学の知識などないし,ましてや先端科学など——と思う人が最初の取っかかりとして読むのに良い本だ。
21世紀に向けて現代科学が抱えている問題を,医療,環境,地球科学,宇宙,身の回りの技術,人間,などにわけて,それぞれ5〜7の短いコラムで解説している。
エイズ,がん,アルツハイマーから始まって,オゾン層破壊,石油枯渇,地球温暖化,地球外知性,バーチャル・リアリティー,ロボット,遺伝子組み替え——と挙げていくと分かるように,視点があくまで身近な「ニュースでよく聞くけれども分からない」ことを,一つずつ解きほぐすように説明している。読み終わった時には,身近な科学に関する,決して詳細ではないが正確な概観図が頭に入っていることだろう。
実際問題,科学の理解というのはやっかいなもので,「科学」ときただけですぐに「自分には分からない」と決めつけてしまう人があまりに多い。理解しようとしないものが理解できるはずもなく,結果として「自分には分かりっこないものは怖い」となって,やみくもな科学恐怖へと結びついてしまう傾向がある。科学を理解することは,自分の生きる世界を理解することでもある。「科学恐怖」から脱して理解のための第一歩を踏み出すための本として,本書は好適だ。
ただし,理解しやすさの代償として「つっこみが浅い」という欠点もある。本書は出発点だ。続けて自分の興味を持った分野の一般向け科学書を読むと,より充実した読書体験になると思う。
余談だが,10年以上前に広瀬正『危険な話』に触発されて,霞ヶ関で反原発デモをブチかましていたオバチャン達は,今どこで何をしているのだろう。往時の反原発オバチャンのような,生半可な疑似科学知識に振り回されがちな生活人に,本書をお薦めする。
(C) ブッククレビュー社 2000
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