紙の本
たましい
2019/08/02 02:53
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投稿者:K.ザムザ - この投稿者のレビュー一覧を見る
モンテイロ・ロッシの言動にやや腹を立てながら読み進めたが、最後のペレイラの行動に鳥肌が立った。これはたましいの在り方の物語だ。
紙の本
イタリア文学へのファーストステップ♪
2015/08/22 07:05
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投稿者:葵上 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私にとってはイタリア文学事始め的な一冊です。
イタリア語は文法だけと思って学習しておりますが短編でとりつきやすい本なので読んでみました。
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評判の割には・・・今ひとつ面白いと思えん。妻に先立たれた肥満で不健康な小さい新聞社の文芸部編集長が、ある反体制派の若者と出会って、あと療養所の医者と話して、そんで少しずつ考え方が変わっていって・・・、という話。おそらく全編通じて、主人公ペレイラの供述調書という形を取っていて、本人が話したくないときは話さない(=書かれない)、という、ある種わがままな意思を持った地の文によって話は進む。確かにそれは面白い。というのも、地の文で書かれないことが説明不足だとか批判されうることがあるのだけど、それを最初から言い訳によって放棄しているのだ。そして、その都合のいい黙秘よって、主人公に対する叙述を暑苦しくなくしていて淡々と進む。それがいい味出してる。・・・それは認めるんだが、ミルハウザーの「エドウィン・マルハウス」と違って、信頼できない語り手を設定したことへの必然性が感じられないのが少し不満。おそらく、彼は逮捕されたんだろうけど、あの若者と会ってほんの少しだけアグレッシブになってきた彼が逮捕されるに至るまでにはもう一山ないと、不自然だと思うし、そっちのほうが聞きたい。供述ってのは洗いざらい喋る行為であって、それが途中で終わるのは納得いかないんですけど。読んでいる最中は結構楽しく読めただけに、これだけで終わったことが納得いかなくて、ぐだぐだ書いてみました。あとこれはタブッキの最高傑作のひとつかもしれないけど、同時に異色作でもあるらしく、いつものタブッキを知った上で読まないと、すごさに気づけないのかもしれん。
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それが身辺を侵食している事実に気がついた時、初めて人は、後戻りが利かないところまで来てしまった事に気がつくのかもしれない。戦火が目前に迫った1937年、リスボンのローカル新聞社で働く冴えない中年ジャーナリストが、圧倒的な権力に対し、精一杯の抵抗を試みる。不思議な読後感が味わえる異色作。
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第二次世界大戦期の、ナチズムの影響下にあったポルトガルを舞台にした政治小説。政治になど興味のない、しがない新聞記者が、レジスタンスの若い男女と出会い、自分も気付かぬうちに深く影響を受け、最後にはとんでもない政治行為をやらかす。
人間らしく生きることとは、行動するとはどういうことかを見事に描いている。それでいて分量も少なく読みやすい秀作。
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初のアントニオ・タブッキ本。何よりもまず「供述によるとペレイラは…」「…とペレイラは供述している」のこれでもかと言わんばかりの多用には辟易された。そして会話に「(カッコ)」をまったく使わず読みにくい点にも。ストーリはエンディングも含め全般的に平坦でなだらかな砂丘のよう。現代イタリア文学の旗手、タブッキの最高傑作らしいのだが、だとするとイタリア文学との相性はあまり良くないのか。が、もう1冊試してみる価値はありそう。
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これは初めて読んだタブッキの本。この本に衝撃を受け、タブッキにはまったのですが、後で分かったのは、この作品がタブッキ作品としては、(当時)かなり異質なものだったということです。
ポルトガルのけだるいような雰囲気に包まれながら、物語は静かに進んでいく。ごく平凡な(といってもインテリの)ペレイラが、ある青年との出会いをきっかけに、ある行動を起こし、その結果はタイトルの通り。タイトルで種明かしはされているはずなのですが、それでもなお、私は最後の一文を読んで「あっ!!」と声を上げずにはいられませんでした。うぶな私はなんてうまい小説なんだろう、としきりに感心。
なんでも映画化されいるそうなのですが、是非一度見てみたいです。
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分かったような分からないような・・・
それでも大好きで、何度も読みたくなってしまう。
イタリア語で読んだときと、翻訳で読んだ時の印象が殆ど変わらない。
それほど、翻訳の完成度が高いということだと思う。
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ある出会いから反政府活動に身を投じていく男の行動を描かれた、静かなる作家、タブッキの内なる情熱を感じる一冊。各章が全て「供述によるとペレイラは…」で、書き出されていることで、独特のリズム感とインパクトが生まれている。
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須賀さんの翻訳 ということで手にした本。
1938年のポルトガルが舞台。
ファシズムの影が忍び寄ろうとしている時代、
誰もがどう生きるか 悩み考えたのだろうと思う。
自分はどういう自分でいたいか、
そんなことをふと思い出したりするような本。
「供述によると・・・」と文章が進み、
主人公ペレイラの今に至るまでにも、いろんなことがあったことは想像できるが、それらの点は不明のまま終わる。
淡々と進む文章だが、ふつふつと熱くなってくる。
須賀さんの翻訳、そしてあとがきは絶品。
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スペイン内戦の頃のポルトガルの政治状況というのは、考えたことがなかったので、そういう面で参考になった。本題ではないが・・・。本題については、巻末の須賀敦子による4頁ほどの「訳者あとがき」が簡にして要を得ている。つい先日読んだ『インド夜想曲』とはずいぶん雰囲気が違うが、タブッキの語り口のうまさは同じように味わえた。
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文学を愛しているにも関わらず政治的にならざるをえない主人公。
あらゆるものが、政治とつながっていくというところや自らの意思に関係なく社会が個人の一生に影響を与えていくところは、現代でも変わっていない。
たましいの話が面白かった。人は変わっていくものだ。
紀伊国屋書店の追悼コーナーにて。たまたま見つけた上、インド夜想曲と間違えて購入。でもとてもよい本だった。他のタブッキ作品も読んでみたい。
時代背景とかも勉強したらいいんだろうな。
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政治的、というのは決して感情的に相手を罵倒する行為を指すのではない。それは日常的には利害の調整を図る行為であり、非常時においては自らの内面の誠実さを見つめなおす行為のことを指すのだ。亡き妻の写真に語りかけ思い出に生きるペレイラは若者との出会いを期に次第に今を生きる事を、自分が自分であることを選び直そうとする。しかし第二次大戦直前、サラザール政権化のポルトガルにおいてそれは必然的に政治性を帯びたものとなる。人間が人間であろうとすることが政治的とされる時代であり、弱さを受け入れることが敗北とされる時代だった。
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前出の2作品が主に独裁者そのものに焦点をあてているのに対し、こちらは抑圧される側の市民たちを描いた作品です。
舞台は1938年のポルトガル。
独裁政治が敷かれるなか、さえない中年の新聞記者であるペレイラは、大新聞の社会部記者をやめ、小さな新聞社の編集長として働いていました。
そこで偶然、政治運動を行う青年と出会ったことから、ペレイラの運命は大きく揺れ動いてゆきます…。
夢と現実が行き交う、幻想的な世界を描き続けた、イタリアを代表する作家・タブッキ。
この作品はタブッキとしては珍しく、政治・社会性の強い内容になっています。
とは言え、彼ならではの詩的な表現、巧みな物語構成は全く失われておらず、その稀有な才能に圧倒されるばかりです。
人間から尊厳を奪い、暴力で支配しようとする独裁政治のなか、個人はどう生きることができるのか。
3人の巨匠たちはそれぞれの方法でその問いに答えを見つけ出そうとしています。
文学の真の価値とは、そういった人間の根源的な在り方、生き方を見つめ直すきっかけを与えてくれるところにあるのかもしれません。
私自身、まだまだ理解が足りない点も多いので、機会を見つけて何度でも再読したい名作です。
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夏を過ぎたあたり、初秋ごろに読みたくなります。20世紀末のヨーロッパファシズムへの対峙が、ポルトガルのベテラン新聞記者という、年を重ねた人間から語られるのが魅力。少しずつ変わっていくペレイラの「なんとなく」感が、ペレイラ最後の文芸コラムに活写されるのがすがすがしく、圧巻。
未来に希望を託したくなる本です。余談ですが、ペレイラの働き方が少しうらやましい。それも含めて、20世紀の良さと悪さを郷愁を感じつつ(もちろん当時を生きてはいませんが)、さらにその未来を生きる我々に投げかける問題にはっとしました。