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紙の本
著者のクモに対する執念に脱帽
2021/06/27 17:31
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投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高分子化学を専攻した理学博士・農学博士である大学教授の著者は、余技としてクモの研究を20年余り行い、その成果が本書の内容である。世界に生息する約4万種類のクモのなかで、張った巣で獲物を捕らえる種類のクモと徘徊して獲物を捕らえる種類のクモがそれぞれ半々らしい。すべてのクモは糸を出すことでは共通しているが、巣を張らない種類のクモもいるらしい。本書では巣を張るクモに焦点をあて、主にクモの巣の糸について、様々なことが著者によって解明されている。その一例をあげると次のとおりである。◆クモの巣の網(巣網)の形はクモの種類によって異なっている。◆巣網は、主に中心部から放射状に伸びている縦糸と渦巻き状の横糸から構成され、横糸にある粘着球により獲物を捕らえる。◆縦糸と横糸の物理的性質は大きく異なっている。破断強度は、縦糸が横糸の倍である一方、破断するまでの伸びは横糸が縦糸の約倍である。巣の骨格を形成する縦糸が力学的に丈夫につくられているのに対して、獲物を捕獲する横糸は弾性に富んでいる。◆横糸の張り方は右回りと左回りの確率は半々である。◆クモは巣網を移動する場合、八本の足をすべて粘着性のある横糸から外している。◆クモ自身の命綱である牽引糸の弾性限界強度は、クモの体重に作用する重力の約2倍。つまり、クモの成長に伴って大きくなる。因みにクモは生まれてから成熟期までに1000倍も体重が増える。◆牽引糸は長く垂らすと糸の自重で切れてしまうが、その長さは150km。◆古い巣網は口に入れ、また腹からだして、再利用する。
牽引糸の強度が、体重に依存していることを確認するだけで、クモから採取した1000個近くの資料で張力―歪関係を測定したという。この一点だけでも著者のクモ研究にかけるあくなき執念が感じられる。ただし、主にクモの糸の話題で新書版一冊を埋めるのは、なかなかむつかしいようで、クモの採集や高知・鹿児島で行われているクモ合戦の観戦に関する冗長な記述が、本書の素晴らしさを若干貶めている点が残念である。
紙の本
大人の観察日記「クモと大崎おじさん」
2000/11/06 20:37
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投稿者:鈴木クニエ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わると、ぴったりの言葉を思いついた。それは「おかしみ」。まるで、クモと著者である大崎おじさんのほのぼのした漫才のようなのだ。『ネイチャー』にまで載ったクモの糸の物理学的・化学的特性の研究がいちおうメインのはずなのだが、クモを昆虫だと思っていた著者がクモに近づいていくさまのほうが、やはりおかしい。
近所でクモの糸を採取していて不審者と思われたり、クモ採りに熱中するあまり車のなかの息子をあわや熱射病にしてしまったり、飛行機のなかで網に入れたクモが逃げ出してしまったり、カゴのなかのクモがかわいそうだと庭に出したらヤマドリに食べられたり…。著者のクモへ対するまなざしがそのまま出ているような印象だ。ちなみにこの息子さんは、その後やはりクモのせいでケガをしたり、蚊に刺されまくったりとけっこう大変な目にあっている。
歌舞伎で使われる蜘蛛の糸も実演するなど、クモと名前がつくものはなんでも調べる著者の姿勢は、対象であるクモへの愛着の表れなのだろう。
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