紙の本
司馬先生が惚れこんで、書きたかった主人公の人物像を実感できる、内容の濃い巻でした
2017/01/09 18:10
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投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
択捉島での活躍の幕が上がる。
本巻の冒頭に嘉兵衛は高田屋箱館支店を任せた金兵衛に「決して金儲けと思うな。たかが金儲けで、上方と蝦夷地を往復するという命がけのしごとがつづけられるものではない。蝦夷地を、京のある山城国や江戸のある武蔵国とおなじ暮らしができる土地にするためだ。」という。
また巻末に近く、択捉の蝦夷びとに漁法・加工法を教えたあと、これまでの為政者 松前藩は住民の幸せなど一顧だにしなかったのに対して「人の一生は、息災に働くことにあるのだ。息災のためには、住む場所、着るもの、食べるものが大切だ。エトロフ島を蝦夷第一等のよい処にしよう。」「今年の冬はひもじくないぞ。腹いっぱい食べて、温かい寝床に寝て、丈夫な子を生むのだ。」という。
住民である蝦夷びとから見ると(彼らのカミは大自然とそこにおわす大いなる意志であっても、また嘉兵衛が以上のセリフを実際に云ったかはさておき)「まさに神が目の前に現れた」という心境ではなかったかと想像する。
現代の云い方をすると、一介の“流通商人”である高田屋嘉兵衛という人物の生き方を通して、われわれ一般市民は「そんなこと(=住民の福利厚生の充実)は政治の責任だ」という言い訳しかしていない、言い換えれば思考停止している怠惰さに対して、司馬先生の大いなる叱責の声さえ響いてくると思える。
横道にそれたが、物語はいよいよ北方最前線の東蝦夷地・択捉島開発に関して、最上徳内・近藤重蔵・伊能忠敬などというお歴々が登場し、嘉兵衛が自身は望まないながらも大公儀定雇船頭に出世。官船並びに自分の船8隻を同時に建造し、北の海をめざすところで巻をとじる。本巻では北方での主人公の活躍の前奏曲を堪能した。 巨大な金額を投資することばかりに人目が集まる現代においても、その投資に如何ほどの地球レベルの福利厚生意欲が盛り込まれているのかも考えてみたいと感じるところである。
正月を迎えると、間もなく菜の花の季節がくる。司馬先生の旧居に、今年もまた菜の花を拝見にお邪魔しようかと思っている。
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あらすじ(裏表紙より)
エトロフ島は好漁場であったが、すさまじい潮流が行く手を妨げ、未開のままだった。しかし幕府は北辺の防備を固めるため、ここに航路を確立する必要を痛感して、この重要で困難な仕事を嘉兵衛に委ねた。彼の成功は、蝦夷人にも幕府にも大きな利益をもたらすであろう。が、すでにロシアがすぐとなりのウルップ島まで来ていた。
いよいよ嘉兵衛が大公儀(幕府)に巻き込まれることになります
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エトロフ島への水路按検。漁場も開く。近藤重蔵、伊能忠敬。蝦夷地定御雇船頭となる。千島と樺太の領土問題にも多くの記述がある。
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ちょっと読み進めなくなる。
なんというか、ちょっと脱線というか、周辺状況の解説などが多くなり物語に流れがなくなるかんじで、時間がかかった。
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高校時代の歴史の教科書を引っ張り出して調べたところ、ゴローウニン事件の説明として以下のようにあった。
1811年、国後島に上陸したロシア軍艦の艦長ゴローウニンが、日本の警備兵に捉えられて箱館・松前に監禁された。ロシア側は翌年、択捉航路を開拓した淡路の商人高田屋嘉兵衛を抑留した。嘉兵衛は1813年に送還され、その尽力でゴローウニンは釈放され、事件は解決をみた。
何とも無駄のない文章…昔コレ読んで何でこの人商人やのにこんな最果ての地でウロウロしてたのかすっごい気になってたけど背景を知ったら納得する。上記の説明を読んで、ますますこの話の続きを読みたいと思った。
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「司馬遼太郎」の歴史小説は全部読もうと考え、ブックオフで見つけて一度に購入。あらすじを読んで自分の好きな戦国、幕末ではなく、江戸後期の話であったので、ずっと積読のままであった。
しかし、読んでみて、非常に面白かった。というより、日本にこんな人物がいたのかと知ると日本に生まれてよかったと思えた。主人公の「高田屋嘉兵衛」の人としての偉大さには勇気を与えられたし、その商人哲学には強く感銘を受けた。
ストーリーとしては中盤から終盤の内容もいいが、自分としては序盤から中盤までの商人として主人公が活躍し始めるまでの展開が好きだ。この本を読んで物語の舞台である灘近辺、北方領土にも興味を持てた。
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幕府が蝦夷(北海道)の戦略的位置付けを徐々に理解し始めると共に嘉兵衛もそこに巻き込まれていく。田沼意次時代に蝦夷に商業価値を見出したところも興味深い。
嘉兵衛自身は、私欲のためではなく、蝦夷人の人柄に憧れ、そこでの暮らしを豊かにしたい、という一念がモチベーションとなっている。
(蝦夷人の被支配者としての悲劇も描かれている)
伊能忠敬も登場するが、北海道に関わる歴史知識など、随所にある司馬遼太郎の”余談的”解説が面白い。
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本格的に蝦夷地復興のために高田屋嘉兵衛が尽力します。本巻は、物語進行よりも、蝦夷地開発や日本とロシアに関する述懐が主になっており、物語重視の人には、多少退屈に感じるかもしれません。この巻までは、正直、一農民の成り上がりの物語でしかありませんが、今後、どのように高田屋嘉兵衛が日本史に痕跡を残すことになるのか楽しみです。
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千島列島に住むアイヌ人を松前藩の搾取•奴隷的扱いから解放する。アイヌ人は島の外から来る人は全てカムイ(神)として崇め、歓迎する。日本人はシャイだから、そういう接し方をしないことが多いんだろうな。主人公は、アイヌの土地や人を見て、忌み嫌っている組意識とか、役人などの上下関係に押しつぶされている人間の美しさを感じているんだろうな。
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嘉兵衛はとうとう択捉島に渡る。潮をみて、国後島と択捉島との海峡が3つの潮がせめぎ合うところであることを見つけ、航路を見出す様がとても根気強く、力強く描かれている。そして、当時の松前藩によるアイヌ(蝦夷)人に対する接し方、つまり、日本人(和人)より一段低く見て搾取する対象としてみていることに、納得の行かぬ嘉兵衛。その思いを共有する仲間と、アイヌ人に新しい漁法を教えて働きに対して、漁具、鍋、木綿、米、酒などアイヌ人に分けていく。「アイヌ人の生活を豊かにする」という嘉兵衛の心意気がとても美しい。
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千島列島の歴史が詳しい。私の中でホットな題材なのでいいんだけど、あと2巻もある。長い。。この巻では伊能忠敬も出てきます。
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この巻はあまりお話が進まずに、当時の幕府の実情とか制度とか、今で言う北海道や北方領土の実情とかの説明が多かったです。
らじはそういったものにも興味があるから良いけど、それほどでもない人はちょっと苦痛な1冊かもしれません(笑)
でも、知っといたほうが、お話を面白く読めるんだよ♪
……たぶん。
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読んだきっかけ:古本屋で50円で買った。
かかった時間:7/22-8/19(29日くらい)
あらすじ: エトロフ島は好漁場であったが、すさまじい潮流が行く手を妨げ、未開のままだった。しかし幕府は北辺の防備を固めるため、ここに航路を確立する必要を痛感して、この重要で困難な仕事を嘉兵衛に委ねた。彼の成功は、蝦夷人にも幕府にも大きな利益をもたらすであろう。が、すでにロシアがすぐとなりのウルップ島まで来ていた。(裏表紙より)
感想:
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船持船頭の高田屋嘉兵衛から、蝦夷地開拓者としての高田屋嘉兵衛と変わっていく部分の話しである。
そして、嘉兵衛の話しではなく、横道もかなり多い。横道の多さは司馬文学の特徴であろうが、この巻は特に多かった。北方領土及び千島列島(クリル諸島)におけるロシアとの領有の歴史、日本とロシアが先住民に対してどのような政策を行ったのかについて書かれている。日本の政策が今の政府がそうであるように、トップが変わるごとに二転三転していた様子も記されている。
北方四島といわれているが、国後島までは嘉兵衛以前でも、船も航法も技術も無く行き来が自由にできたようであるが、択捉島は遠い島であった、ということのようだ。その択捉島へ国後島から確実に公開できるようにしたのが高田屋嘉兵衛であり、択捉島が漁場として豊かであり、択捉島以北がロシア圏だったと、領土問題にまで踏み込みそうな話になってきてしまった。
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国後水道における国後島と択捉島との航路発見、択捉島開発と大活躍する嘉兵衛さん。これは一商人の範疇を超え、蝦夷開拓という志の高さは素晴らしい。
当時のロシア南下政策や幕府の北方防衛政策、今日まで繋がる北方領土問題を知ることができ、とても面白かった。この4巻は次の5巻や6巻に繋がる上でとても大事な内容だと思う。