紙の本
揺れる日本人の心を分析,「弱さの思想」が必要だと説く。超一流の心理学者が熱っぽく語る
2000/12/28 12:16
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投稿者:廣田 耕司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
筆者の4人はいずれも超一流の心理学や宗教学などの大家である。バブル崩壊以後混迷を続ける日本と日本人に,大転換に備えよと,新たな着想を提唱している。臨床心理学の河合隼雄が「20世紀はすべてがオペレーションに走り,反対の極にあるエロスを切り捨て過ぎたのではないか」と問題提起すれば,宗教学の中沢新一が,戦後忘れ去られた「他力・非力本願」を見直すべきだと,切り返す。哲学者の小林康夫は「人類の知のあり方は,自然の諸力を解放して量的拡大をはかることにあったが,その知の回路を切り替えなければならない」とし,経営学の田坂広志は「人類の死滅という危機感がなければ,人類の精神は進化しないのではないか」という。
特に第2章以下の座談会,対談は緊張感に満ちあふれたやりとりが続き,読みごたえがある。知的興味を持つ人たちにはぜひ薦めたい。新書版にしておくのがもったいないくらい,内容は豊富である。
(C) ブッククレビュー社 2000
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[ 内容 ]
大転換期を果敢にのりきる着想を提唱!
まだまだ、人のこころに生きる力をかきたてるものがある!
「こころのよりどころ」を示す。
[ 目次 ]
第1章 「こころの問題」とは何か(エロス欠乏症;こころは常に苦しんでいる;「他力系」宣言)
第2章 日本人のこころが直面していること
第3章 いかにこころを再生させるか(カウンセリングとマネジメント;「知」の回路を切り換える;ほんとうの変化をつくるもの)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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古くて新しい思想の入門書です。
こころに関わる問題についての、4人のプロフェッショナルの議論を本にしたものです。
2000年に出版されたこの本ですが、今読んでも全く古さを感じさせません。
本質に迫ったからこそでしょう。
ただ、これ1冊読んだだけでも、何かわかった気にすらなりません。
それだけ深い世界のお話です。
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この本の登場人物がみんな好きなので、当然内容も好き。2000年の本なので、もう10年以上も前の本だけれど、全く新鮮に読めた。帯には「非知の思想、他力の思想、弱さの思想を!!」とあったけれど、これって今での十分伝わるメッセージ。自分は怠け者だから、これらの考え方や言葉をうまい言い訳にしてはいけないと思うけれど、もう何だか成長物語はぴんとこない。吉田拓郎の「ガンバラナイけどいいでしょう」が耳に心地いいなぁ・・・、ってこれは単なるサボりか。うーむ、難しい。
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2007/7/11
臨床心理学者,哲学者,宗教学者,日本総研の4人のパネルディスカッション,インタヴューをまとめたもの.
これからの日本と科学を問う.といった感じですか.
サイエンティストが一人もいない中で,人文的思考で現代を切っていく感じがなかなかよかった.
しかし,著者らが(河合隼雄先生はあんまりそういう発言はなかったが),ニューサイエンスよろしくアナロジーで科学のカオス理論だーの,
量子論だーのを引き合いにだしたがるのは,なんでなんでしょうね.
ほぼ偶像なかんじがします.
本書,僕的には結構,面白かったです.
まず,本書の初め,のっけから河井隼雄先生が「「エロス」を見直そう!」と提言されているのが,なんか,すごくいい感じでした.
もちろん,サブカルめいたエロスと臨床心理でのエロスは違い,外部からの操作対象ではなく,内部からの情動的な動因の事なわけですが.
「7つの習慣」のコヴィー博士の「インサイド・アウト」(うちから外へ)という考えも,似たことだと思う.
口語体の記録なだけあって,不用意な発言もあったりはするんですが,なかなか面白い一冊でした.
現在,河合先生は昨年8月から病床にあられる訳ですが,心配で御座います.