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ベルリン文化戦争 1945−1948/鉄のカーテンが閉じるまで みんなのレビュー
- ヴォルフガング・シヴェルブシュ (著), 福本 義憲 (訳)
- 税込価格:4,180円(38pt)
- 出版社:法政大学出版局
- 発行年月:2000.11
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紙の本
ベルリンの壁ができるまで
2000/12/27 21:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:海野弘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一九八九年、ベルリンの壁が壊されるシーンをテレビで何度見たことだろう。しかしこの壁がなぜ、どのようにつくられたのかをはっきり知っているだろうか。この壁ができたのは一九六一年だ。意外と新しい。しかしその前に東西ドイツが分裂し、一九四九年に二つの共和国ができた。ベルリンで衝突がくりかえされ、ついに壁が築かれたのであった。
第二次世界大戦で一九四五年、ドイツは無条件降伏をした。そしてベルリンは、米英仏ソの四国によって管理されることになった。ずい分前に『ジープの四人』という映画を見たことがある。一台のジープに、米英仏ソの兵士が乗って、ベルリンをパトロールするのである。はじめは互いに反目しあうが、やがて奇妙な友情が芽生える。ベルリンが複雑な国際関係の中で管理されていることが伝わってきた。
『ベルリン文化戦争』は、一九四五─四八年の間、四国による占領下で、ベルリンの知識人がいかにドイツ文化の復興のために活動したかを語っている。その複雑な状況は迷路のようで、非常に読むのがしんどい本である。しかしそこに含まれている問題の大きさ、重さが胸に残る。アメリカ占領下の日本のことが浮かんでくる。
ドイツと日本がまったくちがうのは、日本は曲がりなりにもアメリカの占領から脱したのだが、ドイツは米ソの対立により、東西に分裂し、ベルリンも分割され、一九九〇年まで統一されなかったことである。だから、一九四五─四八年の短い間は、四国の占領下とはいえ、ドイツがまだ分裂していず、戦後の新しい文化を築こうとした希望に満ちた時期だったのである。
しかし、それはほんのわずかしかつづかず、ソ連軍がベルリンを封鎖し、冷戦が激化して、ドイツはまっ二つになってしまう。一九四九年以後、鉄のカーテンによって閉ざされてしまう。それ以前が面白いのは、四国によって管理され、各国の文化政策はばらばらだったので、どれか一つに従わなくてよかったかららしい。
また占領直後、各国がベルリンに送りこんだ文化将校たちは、それぞれインテリで、ドイツ文化に理解があった。そのために、一瞬ではあるが、新しいドイツ文化の夢がひらめいたのであった。
戦争が終った時、連合軍の兵士たちは、アメリカ人もロシア人も抱きあって平和を喜んだ。すべての人々の心が一つになったように思えた。しかしすぐに、米ソの対立がはじまる。ドイツの知識人はその渦に巻きこまれてしまう。
W・シヴェルブシュは、一九四五─四八年のドイツ文化の夢がそのままつづいていたらどうだったろう、と想像せざるを得ない。一九四九年から一九九〇年までの空白。人間はなんというむなしい回り道をするのか。 (bk1ブックナビゲーター:海野弘/評論家 2000.12.28)
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