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「危機管理」の都市計画 災害復興のトータルデザインをめざして みんなのレビュー
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紙の本
現場に足繁く通った著者による都市計画における危機管理論。地震,戦災,大火から,復興戦略をつづる
2001/03/30 15:16
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投稿者:木村 智博 - この投稿者のレビュー一覧を見る
兵庫県南部地震や山形県酒田市での大火など,記憶に残る災害から,都市計画を見直す必要がある。関連書籍は何冊か刊行されているが,その多くは地震,火災別に分かれており,文献に当たるうえで,手間暇がかかった。しかし,本書では地震,火災,さらには戦災復興の事例を収録し,幅広い視点で災害復興の戦略を解説している。わが国だけでなく,諸外国の事例を紹介するなど,都市計画と危機管理の考え方を総合的に論じている。
著者は災害現場に足繁く通い,そこで集めた情報を基に,都市計画作成に際し,危機管理の位置付けを平易に記述する。読みやすい本文に加え,写真や図表,脚注は理解の一助になる。人が生きるうえで受けるべき幸福とはなにか。その1つ,安心・安全を軸に据え,調査に裏打ちされた記述は説得力がある。建築・土木のエンジニア,行政関係者をはじめ,近年,全国各地で増えているまちづくりに参画するNGO関係者にも薦めたい1冊。
本書は大きく3部で構成している。テーマは震災復興,戦災復興,大火復興時の危機管理の進め方であり,都市計画へ反映させるための処方箋を示す。プロローグでは著者の問題意識を鮮明に打ち出す。ナポリ南部に残るポンペイ,神戸,東京の共通性,災害に対する脆弱(ぜいじゃく)性を記す。随所に文学的な視点がちりばめられ,災害と人間の関係を考える。本書では一貫して,理想とする災害復興都市計画の策定プロセス,非常時の都市計画と平時の都市計画の相違点と類似点をみつめ,今後に生かそうとする。 1945年前後の日本,イギリスの戦災復興から1999年の台湾大地震に至る半世紀を対象に,都市計画の考え方の変遷を分析。扱われる事例は,兵庫県南部地震,北海道南西沖地震,酒田大火,タイ・エジプトの大火などである。災害の概要を記したうえで,当該地域の住民の動き,行政の対応,復興のプロセスをつぶさに観察する。災害復興の流れをみることは今後の防災にも寄与し,危機管理意識の育成につながる。そんな著者の哲学が,本書から感じられた。
(C) ブックレビュー社 2000-2001
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