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紙の本
査読者の立場から,楽しめる論文の書きかたをおしえてくれる
2009/01/31 21:32
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はすでに論文作法を新書に書いているが,田中克彦の本を読んで「楽しい」論文を書く方法をひとにつたえたいとかんがえて,前著とはまったくちがう内容を本にしている.
著者は多数の論文を査読しているのだろう.この本には査読者の立場がしばしばのぞいている.査読者を納得させるには論文をどう書けばよいか,そういう視点で書かれた本はこれまでなかっただろう.
しかし,個々の話題に関しては疑問がある部分もある.たとえば,論文の「はじめに」の部分をどう書くかはその論文のはじめに要旨があるかどうかでちがうとかんがえられるが,要旨が考慮されていない.文の構造に関しては本多勝一の方法を紹介し,読点のつかいかたを議論しているが,そこでとりあげられている例題 (f) は,読点のうちかたよりまず語句の順序を再検討するべきだとかんがえられる.
しかし,そういうこまかい欠点はあっても,理科系の論文を論文誌などに投稿するときには,この本は他の本には書かれていなかったいろいろなことをおしえてくれるだろう.
紙の本
理工系の文章を“ちゃんと”しかも“面白く”書くノウハウを公開。
2001/01/26 18:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:近藤龍太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
“論文の書き方”なんて、つまらない本なんだろうなぁ、と思いつつページを開いた私だったが、スミマセン反省しました。内容的に言うと、新書版で大量のイラストを入れて、もう少し対象読者を広げても十分アピールしそうである。
つまり、面白いのだ。
論文というと、学会誌に発表したり、何か学位や試験のために書く学術的文章というイメージがある。もちろん、それは間違っていないし、多くの人は一般的にガクジュツテキなことにたずさわっていない。けれども、学術論文であろうとなかろうと、我々の書く文章というのは一定の要件を満たしていなければならない、というのがこの本の著者の主張である。それは何かというと、まず、
面白くなくちゃダメ
ということである。学術論文を面白く書く? そんなことが可能なのかどうかは、本書を読んでいただきたいが。なにより、この目的が気に入った。そして、この本自身が面白く読めることが、その主張を裏付けているといえる。著者は、論文を書くのにミステリーの手法も参考にするというのだから、マジなのである。
論文を評価する仕組みの解説から、査読者(論文を評価する人)はどんな立場の人がどんな風に依頼されてどんな思いで読むのか? だからこう書いた方がいい。といった解説。タイトルをどう付けるか、書き出しの部分をどうしたら読者の興味をひくか、効果的な図の使い方は?…… といった解説が続く。決して奇をてらった内容ではない。
もちろん、文章の書き方についてもいろいろ注意点を挙げている。面白いのは“文章が重症の例”である。テニオハが間違っているとか、文章の構造がワルイ、といった問題ではなく、書き手自身が何を書きたいのか分かっていない、あるいは間違って理解している場合の文章である。実は、こうした文章は巷にもあふれている(注意して聞いていれば、NHKのニュースでも発見できる)。しかし、論理が命の学術論文では、まさに命取りになりかねないわけだ。
この本は面白い。ただし、この面白さについていけるのは「ボロノイ図」や「ナイキスト周波数」といった用語を解説されてもビックリしない理工系の頭を持った読者だろう(知らなくても良いが解説されて理解できるという意味である)。だから、本書もサブタイトルに「理科系のための論文作法」と付けている。論文と限定しなくても、理工系の文章を書く人なら、一度は読んでおいて損はない本である。 (bk1ブックナビゲーター:近藤龍太郎/電脳評論家 2001.01.29)
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