サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

ムージル日記 みんなのレビュー

専門書

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー1件

みんなの評価0.0

評価内訳

  • 星 5 (0件)
  • 星 4 (0件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本

二十世紀まるごとの巨大な記録

2001/03/09 18:15

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:海野弘 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 カフカと並ぶ二十世紀ドイツ文学の巨匠といわれるムージルの十九歳から六十一歳(死の前年)までの日記である。といっても私生活を記したものではなく、彼の思索、創作ノートのようなものだ。一八九九年から一九四一年までである。
 それにしてもあきれるほど広範囲の知識欲におどろかされる。ムージルは二十世紀をまるごとのみこもうとしていたかのようだ。

 ムージルは一八八〇年に生れ、工学を学んだ。シュトウットガルト工科大学助手となったが、そこをやめてベルリン大学で哲学博士号をとった。一九一一年にマルタと結婚した。第一次大戦ではイタリア戦線で戦った。
 処女作は『生徒テルレスの混乱』(一九〇六)で、好評であった。第一次大戦後、ベルリンとウィーンで文筆活動を行なった。一九三〇年、代表作である『特性のない男』第一巻を発表した。一九三三年に第二巻の前半が出されている。
 一九三八年には、ナチス・ドイツのオーストリア併合に際してスイスに亡命し、一九四二年に没している。亡命生活は貧しく、困難であったが、この日記ではほとんどそのことをこぼしていない。

 科学、文学、芸術などあらゆる分野にわたって、ムージルは世界の知を求める。この宇宙、この時代のすべてをとらえたい、と望んでいるかのようだ。その壮大な知のパノラマ、それを探求する旅に圧倒されてしまう。
 彼の代表作(未完に終ったが)とされる『特性のない男』の注釈としても、この日記は大きな意味を持つだろう。現実世界から与えられるいかなる〈特性〉も拒否して、可能性に生きようとする主人公は、ムージル自身なのかもしれない。彼は作家とか哲学者、科学者、心理学者などいかなる〈特性〉で見られることを逃れ、全的な人間として世界に立向おうとするのである。

 この世界とはなにか、この世界はどのように変えられるのかについて、ムージルは問いつづけ、戦いつづける。

 この日記を読むと、ムージルはこの現実世界の批評家、解釈家、そして変革者とでもいうべき人であった、と思われてくる。彼は現実世界の中で作品を発表し、作家として評価される、といったことは目指していなかったのである。ひたすら、現実世界という、与えられた〈特性〉の根拠を問い、その意味を解釈し、その大きな空虚を指摘し、新しい世界の構築を夢想していたのであった。

 ムージルの精神的な戦いが、二十世紀前半という、二つの大戦という悲劇を背景としていたことに深い意味を感じる。なぜなら、二十世紀後半には、三つ目の世界大戦はなかった。そのために、ムージルの問いは忘れられてしまったのではないだろうか。
 この日記は、二十世紀とはなくなったのか、と重く問いかけてくる。その問いは、二十一世紀に入ってもまだ答えられてはいない。私たちは、あらためて問いつづけなければならない。 (bk1ブックナビゲーター:海野弘/評論家 2001.03.10)

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

1 件中 1 件~ 1 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。