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紙の本
早春の読書にぴったり
2001/10/11 19:58
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投稿者:山田登世子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「晴天、曇天、快晴、空くもる、雨ふる、終日ふる、風止まず、薄くもれり……」──一葉の日記の冒頭にあるその日の天候である。二四歳の若さで散った薄倖の佳人だから、うつろう季節の風の色や雨の匂いなど、さぞかし四季の風物に感じやすい作家だったにちがいない。「元旦」にはじまって、藪入り、初雪、寒中見舞いから大つごもりまで、『日記』を主に、一葉の歳時記がいかにも著者らしい名随筆にのせて綴られてゆく。さらさら読めて味わい深い一葉論である。
ところで、急に話が飛ぶけれど、現在バルザックの『いとこベット』の翻訳をひととおり終えて、改めて気がついたことがある。上下二巻になるこの長大な小説に、天候の記述が皆無にひとしいのだ。田園を舞台にしたほかの作品は少しはちがうが、バルザックの文学世界で天候の印象はきわめて薄い。
やはり「花鳥風月」は日本文化の伝統かなあ──と思うと、これが大ちがい。というのも、プルーストの『失われた時を求めて』は天候の描写に満ちているからだ。ノルマンディーを舞台にした『花咲く乙女たちの陰に』など、天候小説と呼びたいほど。
ということは?
そう、一葉もプルーストも「病弱者」だからだ(と、わたしは思う)。たいするに、バルザックは頑健そのもの。洋の東西を問わず、病弱者は「四季のうつろい」に感応する──なんて、「病弱者=天候文学説」がひらめいて(?)、『プルーストの四季』なんて本が書いてみたくなりました。早春の読書にぴったりの新書です。(山田登世子/フランス文学者 2001.3.6)
紙の本
一葉とすれちがう街
2001/03/16 15:53
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投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
このところ物足りない思いがする新書の研究書が多い中で、久々の佳作と言える一冊が出た。著者が取ったスタイルは、見開き2ページの短文で、その中に様々な一葉を書き起こしていく。第一章は一葉ゆかりの土地名から、第二章は明治の東京の様々な光景から、一葉の視点と姿が現れてくる。ちらりと、一葉の姿を見たような気がしたとき、ページが捲られ、名残惜しさをを感じながら次の章に移ることになる。各章に必ず一葉自身の文章がどんなに短くても引用してあるところが、そのもどかしいような名残惜しさの所以だろう。第三章の「一葉をめぐ人々」では、一葉と交渉のあった文学者を一葉がどう見ていたか、そして逆に彼らから見た一葉像が描かれている。
明治の古地図から作った「一葉の足跡図」や、同時代文学者の生年の一覧表など、一葉の時代を様々な視点から思い起こせる豊富な一冊だ。
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