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きのうの空 みんなのレビュー

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みんなのレビュー5件

みんなの評価3.7

評価内訳

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5 件中 1 件~ 5 件を表示

紙の本

余韻を楽しむ

2001/05/04 13:18

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:上六次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ミステリーのように結末で今までの出来事がつながり、謎が解決する小説がある。読者はラストでの意外な展開や文句のつけようのない推理を楽しみ、謎がスパッと割り切れることに快感を得るのである。

 一方に曖昧な結末が読者にいろいろなことを考えさせ、心を揺さぶることになる小説もある。本を読み終えた後も、過去に経験したちょっとしたことを思い出し、共感してしまう。そういう余韻を楽しむ小説がある。

 本書は後者の短編小説集である。主人公や家族の設定などは変わっていくが、少年から老いていくまでの様々な年代での一場面を切り取っていく。

 この短編で扱われているのは特別な大事件ではない。友人との別れであったり、学生時代のほろ苦い思い出であったり、親子の葛藤であったりと誰しもが一生の中で経験していく出来事である。その時に私たちは「悲しい」とか「辛い」とかといった言葉では表せない思いがあったはずである。しかしながら、日々の生活に追われているうちに、そんな気持は胸の奥底に沈めこんでしまっている。各短編を読むことにより読者は昔のことを思い出すとともに、過去にタイムトリップし当時の感傷に浸ることができるのである。

 今はドライな人間関係やデジタルな思考がもてはやされる時代である。しかし誰しもがウエットな気持や割り切れない思いを抱いているときがあるはずである。そんな心に訴えてくる短編集である。

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紙の本

失われしものへの追憶を超えて、空はそこにある

2001/07/09 15:15

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:井上真希 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 高く澄みわたった空を目にして、全身に清々しさが広がり、怪しげな雲行きに、心の曇りがよぎる。胸が塞がれている時には、仰ぐ気にもなれないものだが、どんな模様であれ、空はつねにそこにある。
 きのうの空は、どこでどんな気持ちで見上げたのだったか。かつて、同じ空の下でともに過ごした人びとは今、どうしているのか。
 この10編からなる連作短編集からは、遠い昔の風景に思いを馳せつつ静かに空を眺めて佇む著者の後ろ姿が浮かんでくるようだ。去来する懐かしい顔や心の奥底に沈んでいる想い、とりわけ、諦めざるを得なかったものへの煩悶、勇気がなかったばかりに逃したものへの悔恨、手の届かなかったものへの憧憬、別のものを選んだために手放さざるを得なかったものへの懺悔、そして、どうすることもできない別離への哀惜といった、失われしものへの追憶が全編を彩っている。

 舞台はいずれも近畿以西の地方の町である。主人公は、中学2年生の清司(「旅立ち」)、同じく信夫(「短夜(みじかよ)」)、高校3年生の啓介(「イーッ!」)、21歳の光彦(「家族」)、25歳の敬之(「かげろう」)、20代後半の康治(「息子」)、30代後半の惣一(「高い高い」)、40代の幸一(「夜汽車」)、59歳の敬三(「男親」)、そして60代の秀宏(「里の秋」)。1936年生まれの著者と同時代に生きた男たちである。小学校高学年で終戦を迎え、世の中は一新されたが、父親が戦死したり病気を患ったり、時には時代の波に呑みこまれて出奔したりで、母親が家計を支える貧しい家庭も多く、長じた兄姉は弟妹に高等教育を受けさせるために働きに出た。どの家族も助け合い、誰もが自分の夢のひとつやふたつは断念して、つましく暮らした。現代の放縦さからは思いもよらない生活を甘受した体験をもつ人びとの胸に秘められた、失われた想いのさまざまなかたちを、著者は精緻に、抑制のきいた筆致で綴る。

 現在の著者とほぼ同年の「里の秋」の秀宏は、小学生から高校卒業までの10年間を過ごした山陰の町に、母の死後も15年以上そのまま残してあった家を取り壊しに帰郷した際、高校1年の時に孤児となって東京へ去って行った同級生、暁子との50年近く前の別れを懐古し、鉱山地区にあった暁子母子の暮らした家の跡地を訪れ、暁子の母の墓を探す。廃鉱のために寺や墓地さえもが整理されて30年が経った今、景色は一変し、昔を知る人びともごく僅かなうえに、その記憶も薄れがちだった。秀宏は「自然には持続性があるが人間の記憶は有限」であることに思い至り、目を閉じて「山の匂いと、空気の匂いと、失われたものの匂いを嗅」ぐ。

 時が移ろい、目に見えるもののすべてが失われても、空だけは変わらずそこにある。人びとの記憶の断片や想いの名残を映しだすかのように、さまざまに変化しながら、空は頭上にあるのだろう。そんなことを考えさせられた珠玉の一冊だ。 (bk1ブックナビゲーター:井上真希/翻訳・評論 2001.07.10)

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2004/11/27 21:37

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2011/10/03 15:49

投稿元:ブクログ

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2014/07/16 22:07

投稿元:ブクログ

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