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J-POP評論の第一人者として音楽好きから信頼の厚い著者の人気連載コラムが、書き下ろしを含めて1冊に
2001/07/16 18:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:杉田宏樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「週刊文春」連載中の音楽コラム「考えるヒット」の単行本も、数えて4冊目。今回は趣向を変えて、『その意味は』という書名がつけられた。ところで近田春夫(1951年東京生まれ)といえば、元々は75年に近田春夫とハルオフォンとしてデビューしたシンガーであり、80年代にはビブラストーンズを経て、日本語ラッパーのパイオニア的仕事をし、88年にはビブラストーンを結成、人力ヒップホップ・バンドの先駆的な存在となった、いわば時代の最先端を走ってきたミュージシャン。現在はCM音楽作家、プロデューサー業でも活躍しており、文筆の世界でも活動歴は長い。本書で採り上げているのは、オリコンのチャートにランキングされたJ-POPの新曲を中心に、1回につき2曲、それも注目曲を大きくフィーチャーして、もう一曲には簡単なコメントを付けるというスタイルだ。歌謡曲評論の分野が80年代、「よいこの歌謡曲」によりマニアックなファンのスタンスで開拓され、その流れは現在宝島社の「音楽誌が書かないJポッフ批評」へと続いているのだとしたら、近田のJ-POP評論はそれらとは一線を画すものと言っていい。マニアックなファンだからこそ注目する、音楽とは直接関係ない部分(歌手、アーティストのルックスやキャラクターなど)にも近田は目を向けているが、基本的に真摯な音楽評論という姿勢を貫いている点で、傾聴に値する内容なのである。それは近田がシンガーであり、作詞・作曲家であり、裏方的な仕事にも精通しているからこそ踏み込める、鋭い音楽分析力の持ち主だから、だ。毎週欠かさずではないが、文春で近田のコラムを読むたびに、納得させられることが多かった。音楽の作り手だから音楽がわかる、ということは別にして、近田の優れた文章力が本書の品質保証の役割を果たしていることは疑いない。小柳ゆき『あなたのキスを数えましょう』の章(2000年3月)では、小柳がジャパニーズR&B系女性歌手のMISIAや宇多田ヒカルとは繋がらず、今でいう“クラブ”ではなく、大人の社交場の“クラブ”(イントネーション異なる)で鳴っている曲だと看破する。「私の頭に浮かんだのは欧陽菲菲の『ラヴ・イズ・オーヴァー』だった」にも納得。小柳の第2弾シングル『愛情』(2000年5月)に関しては、和製ドナ・サマー的展開が彼女の資質に見合っているとし、大きな道が開けたと評する。ぼくが小柳のライヴ・アルバムを聴いて感じたのは、彼女の立ち位置がジャパニーズR&Bというよりも、歌謡曲であることだった。「ミュージック・フェア」でボーイズIIメンと共演した時、英語がわからない小柳の姿に「ドンキホーテ」「無教養」の文字がよぎってしまったのも、近田の見方に通じるかも。連載では紹介されなかったシングルを「ボーナス・トラック」として収録。秋元康、横山剣との対談も、近田の音楽観を明らかにしており、本当に音楽を愛する近田のキャラクターが伝わってくる。 (bk1ブックナビゲーター:杉田宏樹/音楽評論家 2001.07.17)
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