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紙の本
敬愛する作家たちとの交流、創作の原動力となった芸術・音楽との出会い、パリ、軽井沢の日々を綴る随筆集
2001/09/05 18:15
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投稿者:杉田宏樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『微光の道』に続く、故・辻邦生の随筆集、第2弾である。前作からわずか2か月という短いインターバルで届けられたというのが、ファンには嬉しい。今作は「人物」「芸術・音楽・歴史・思想」「人生・生活・旅」のテーマに添った文章による3章立てだ。辻は内外の歴史上の人物を扱った小説はもとより、現代社会を舞台にした恋愛もの、さらには童話に至るまで、物語の作り手として実に間口の広い執筆活動を行ったわけだが、同時にエッセイストとして残した仕事もかなりのボリュームがある。いやそれらの文章を知る者に言わせれば、辻の文章は“エッセイスト”の語感から受ける“軽さ”とは別種のものであり、“随筆作家”と呼ぶ方がふさわしいと思う。1959年夏、ギリシアを旅し、アテネで初めてパルテノン神殿を見上げた瞬間、美についての啓示を与えられ、それが文学活動の根源となっている辻ゆえ、作品が物語ではない随筆であってもそこには辻の美意識と世界観が貫かれているのだ。ぼくが最も興味を惹かれたのは、辻が出会い、刺激を受けた人々へのオマージュ。日本人の持つ曖昧さ、心情主義、狎れ合い、義理人情を断乎として排撃、「君も早く書いて、世間に名前が出ちまうんだね」と辻にアドバイスを贈った岡本太郎。圧倒的な知識人にして几帳面さ、律儀さ、市民性を持ち、例えば雑誌で対談を行う場合、読者に提供される一種の演技性を必要とする演し物(だしもの)、興業演目という考えを持っていた篠田一士。会って話したのは数回に過ぎないが、その人柄にすっかり魅了され、対談の席上で顔を合わせた時、ずっと付き合ってきた旧友と会った感じがしたという阿部昭。「うまい文学が生れるためには、健全やあかんで。腐ったところが要るんや」と口癖のように喋り、涙が出るほど辻を笑わせた開高健。ジャズ好きならば、辻が立教大学で教鞭をとっていた時代の学生で、後に評論の世界に進むも、32歳の若さで他界した間章についてのエピソードに、強い興味を抱くはずである。 (bk1ブックナビゲーター:杉田宏樹/音楽評論家 2001.09.06)
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