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紙の本
少年犯罪問題の基礎認識
2004/03/20 11:57
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:後藤和智 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「不可解な」少年凶悪犯罪、もしくは若年凶悪犯罪が起こると、決まってメディアは色めき立つ。「少年犯罪の急増・凶悪化・低年齢化」が繰り返し叫ばれ、さらには「少年の凶暴化」みたいな言説が大手を振ってまかり通り、「この事態に対応するためには少年法を改正するしかない」という意見が多くのメディアと世間を支配する。「識者」たちの「コメント」も、その大多数は大向こうを意識した「提言」や空疎な「憂国」ばかりで、実地に即した冷静な議論は圧倒的に少数派である。
本当に少年犯罪は凶悪化しているのだろうか。著者である藤井氏と宮崎氏の議論はそこから始まる。統計を見てみれば、少年、特に18歳〜19歳の「年長少年」による凶悪犯罪は1960年代と比べれば激減しているし、過去の事例に当たってみても、今で言うところの「ゲーム型犯罪」「逆ギレ犯罪」「劇場型犯罪」にあたる事例はいくらでも見つかる。少年犯罪が著しく変質した、という認識を否定しつつ、それではなぜ「今の子供は凶暴になった」「子供が分からなくなった」などという認識が生まれたのか、ということを多角的に議論することから少年犯罪問題の議論に入っていくのは興味深い。
藤井氏は多くの少年犯罪をルポルタージュしており、被害者側の感情を平易な言葉で説明する。たとえば被害者は本当に厳罰化を望んでいるのか、とか、被害者が少年犯罪の法廷に立つことがなぜ許されないのか、など、被害者側から見た少年法の欠陥を指摘する。宮崎氏もまた、少年犯罪や教育に関して多くの発言をしてきた評論家として、藤井氏の疑問に応える形をとりつつ、近代法の手続きや、犯罪少年の人権保護、あるいは更生の面から見た少年法の問題点をあぶり出す。
少年犯罪は凶悪化していないし、低年齢化もしていない。しかし、改正された少年法は、確かに前進もあるけれど、果たして本当に被害者の人権保護や、加害少年の更生の役割を果たせるのか疑問である、ということで、藤井氏と宮崎氏の言説は一貫している。
少年犯罪を論じた「知識人」批判も読ませる。たとえば、たとえ統計で少年犯罪が減少しているように見えたとしても、少年犯罪の凶悪化は説明できる、とする刑法学者がいるが、彼は多数の恣意的なデータの選出や情報操作を行っている。「少年法改正では解決しない」という「人権派」の人々も、被害者のことがまるで目に入っていない。
少年法改正というと、(少なくともテレビや新聞のレヴェルでは)「今の少年をどうする」といった問題意識が強いが、被害者の立場から、そして法学的な見地から少年法を論じた本書は、少年犯罪問題の基礎認識として、少年犯罪や少年法に興味がある人なら一度手に取るべき内容である。本書で問題の核心をつかんだなら、藤井氏の手がけたルポルタージュ(『少年に奪われた人生』朝日新聞社など)も読んでおくことも薦める。
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