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『お能の見方』(1957年、東京創元社)『韋駄天夫人』(1957年、ダヴィッド社)、『きもの美―選ぶ眼・着る心』(1962年、徳間書店)のほか、1956年から62年にかけて発表されたエッセイが収録されています。
『お能の見方』は、能についての解説書ですが、本全集第3巻に収録されている『能面』とともに、能面について著者自身の見かたを強く押し出しつつくわしい説明がなされていることが特徴であるように感じます。
『きもの美』は、銀座の工芸店である「こうげい」を経営することになった著者が、その体験を振り返りつつ、職人たちのことばを紹介して着物の魅力を解説しています。これとはべつに本巻に収録されているエッセイ「日本のきれ」でも、織物について比較的立ち入った解説がなされているのですが、本巻には写真が収録されていません。巻頭に白黒ではあるものの写真のページが含まれているにもかかわらず、初出では掲載されていた写真が割愛されてしまっているのは残念です。
エッセイでとりあげられているテーマは、能や着物、骨董などのほか、ゴルフや相撲、映画俳優など多岐にわたっており、伝統的な価値観を守りつつも、青山二郎が「韋駄天お正」と読んだように、枠にとらわれることのない著者の活動ぶりが語られています。