紙の本
最初の2人の関係に彩を与えるのは3人目の存在
2009/03/30 23:05
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
子どもだったら、純粋に、イヌやカササギやキツネの話として、
読めるだろうか。
読んでいると、なんとなく、痛くなってくるのは、
時を重ねてしまったせいだろうか。
この本の「文字」は「絵」のように描かれている。
原作のロン・ブルックスの独特の手書き文字と
斬新なレイアウトを生かすため、
日本語版はそのレイアウトをくずさず、
文字の雰囲気を出来るだけ忠実に再現するように努めている。
森が焼けた日、イヌはカササギを助けた。
カササギは二度と飛ぶことができなくなった。
イヌは片方の目が見えなくなった。
イヌは、相手をそっと助け、悲しみに静かに寄り添うことが出来る存在。
カササギが飛べなくなった悲しみにしずんだままのときも
静かにそこで待っていて、
よいころあいで外に出るようにさそうような。
カササギを背に走るイヌ。
「飛んで! もっと飛んで!
わたしがあなたの目になるわ。
あなたはわたしの羽になって!」
キツネが登場するのは、話の3分の1あたりである。
存在感のある赤茶い色。
この色は、「炎の舌」の色なのだ。
イヌはキツネをこころよくむかえたが、
カササギはキツネにただならぬものを感じている。
キツネを象徴するのは、色だけではない。
「なかよしたちへのねたみやうらみ、
ひとりぼっちのほこりとかなしみが
ごちゃまぜになったへんなにおい・・・」。
イヌがねむっているすきに、
キツネはカササギに「おれは、イヌよりはやく走れる」と言うが・・・。
3人以上の関係って、なんて難しいんだろうな。
2人が分かり合う以上の難しさがそこにある。
でも、最初の2人の関係に彩を与えるのも3人目の存在であるように思う。
キツネがイヌとカササギの間を引き裂いたというだけのお話ではなくて、
キツネが来たことによって、
結果として、イヌはカササギを、
カササギはイヌを見つめなおしたのではないか。
キツネはイヌとカササギを一義的には引き離したけれど、
二義的には近づけたのではないかと思った。
前向きの希望というのではないけれど、
捨てたもんじゃないなと思わせる、不思議な後味の作品だ。
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ちょっと心が苦しくなるようなお話なのに、読み終わると爽やかな力が湧いてくる絵本。息遣いが伝わってくるようなタッチの絵と、斬新な文章のレイアウトに胸が躍ります。
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この本は心に「ガツン」と来るんですよね。
決して子供向けの絵本じゃないって感じ。
誰の心にもあるずるさと残酷さを見せつけられるような気になります。
迫力ある絵が、これでもか!ってくらいに視覚に迫ってきます。
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絵がこわい。文字がこわい。文章もこわい。そして結末も。
これは、絵本とはいえ、5歳児にはキツくないか?じゃあ、何歳だったらいいんだろう
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絵本カフェで何気なく手にとって、わあ! となりました。
いいとか悪いとかじゃないなあ。
読者の対象はどこかしら、と不思議に思うところもありますが、なんか心に変化球のようにきました。
手書きの文体がさらに攻めます。
あたしは普通に最後食べちゃうのかと思って読んでいたので、ううわ! となりました。
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飛べないカササギと眼の見えない犬。そこへ孤独な狐が、、、
絵が力強く、字も工夫されている。子どもにはどうかと思うが、大人には面白い。
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大人向きの絵本。
友だちになること、信じること、そして、裏切る葛藤。どの人も自分の中に必ず犬かカササギかキツネがいる。
何度も読み返して考えたくなる本。
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野火で羽を痛めたカササギ。片目が見えないイヌ。二匹はお互いを補い合う無二の親友。しかしそこに、キツネがあらわれた。イヌは新しい仲間を歓迎し、カササギは怖がった。キツネはカササギの心につけこみ、赤い砂漠へと連れだし、二匹を離ればなれにした。孤独なキツネは、二匹も孤独へと追いやった。
友情、信頼、嫉妬、好奇心、孤独・・・そこに希望を見つけ出せるのか。
高学年〜絵本。
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衝撃的な絵と文字。
キツネの目。
人間の心のどこかにある裏切り、後悔、愛。
魂が揺さぶられる絵本。
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高学年~の友達関係で生まれるねたみや嫉妬。いろいろなことで悩み、揺れる年代、特に女子向けに読み聞かせするとぴったりな1冊。
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イヌとカササギの友情をねたむ、孤独の王者キツネ。友情をひきさこうとするキツネ。誘惑にのってしまうカササギ。
芸術的な力強いタッチの絵、手書きの文字も魅力。大判。
高学年~大人向けの絵本。小4国語紹介の本。
うならされてしまった!
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6年生に読み聞かせする絵本を探していて、この本を見つけた。
イヌとカササギ、そしてあとから来たキツネ。
そこに複雑な感情が漂い始める。
カササギはなぜ不安だったのか。
キツネはなぜ孤独だったのか。
イヌは…なぜ何もしなかったのか。
視点を変えればどの立場にも何か理由や意味があるように思える。
誰もが心の中に持っている光と影、善と悪。
私達の住む人間社会に、ふと置き換えて考えてしまいそうになる。
物語の最後もいい。
そこからまた物語が始まるような。
ハッピーエンドではないけれど未来に何か期待させる、
こういう終わり方は好きだ。
モヤモヤが残るから、面白い。
肯定的で善良な話ではないからこそ、心に残る。
こういう本を、もうすぐ中学に行く6年生に読んであげたかった。
あまりにじぃっと聞き入ってくれたので、
何も聞かずに教室を後にしてしまったけれど、6年生はどんな風に
感じてくれたのかちょっと気になる。
モヤモヤでもいい、自分だったら…でもいい、少しでも心に残ってくれたら
私はとても嬉しい。
最後になってしまったが、絵と文字もとても素晴らしい。
というか、ものすごい。
絵は、抑えた色味だけれど迫力がある。
文字は作者・絵・訳者とは別の方が手描きで書いている。
それが絵や物語にぴったり合っていて、この絵本の印象を更に濃くしている。
原作の文字も面白いという話を読んだので、
いつか原文のままの絵本をぜひ見て見比べてみたい。
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ダイナミックな絵と手書きの文字のレイアウトが斬新。
傷つきよりそう二匹の心にすきまをつくり引き離すキツネの行動に切なくなりました。
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何の予備知識もなく読んだ。
感動した。
片目の見えない犬と、片翼をなくして飛べなくなったカササギ。
この二人(犬とカササギだけど、これは人間の姿でもあるので)の友情が育まれていくが、キツネが現れる。
キツネは嫉妬であり誘惑であり猜疑心である。誰の心にもそれは芽生えてくるのだ。信頼しあった二人の間にもキツネは忍び寄る。
希望の見えるラストではあるが、めでたしめでたしでは終わらないところがよい。
人間、そう簡単に困難を乗り越えられないこともあるのだから。
小学4年の教科書で紹介されているけれど、どこまで小4が味わえるかはわからない。大人がうまく手渡せるといいと思う。
マーガレット・ワイルドは他の作品も読んだが、この作品が特に心に残るのは、ロン・ブルックスの絵が素晴らしいからかもしれない。
こんなに見事な美しいキツネに囁かれたら、誘惑に乗ってしまいそうだもの。
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マーガレット ワイルド (著), ロン ブルックス (イラスト), Margaret Wild (原著), Ron Brooks (原著), 寺岡 襄 (翻訳)
翻訳が怪しいとのこと.「キツネ私訳」を検索.