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紙の本
「東アジア共同体」を提唱する国際的碩学による力作
2001/11/22 22:16
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投稿者:佐々木力 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人で国際的に通用する学者はきわめて少ない。そうかといって国民の知的水準が低いかというとそうではなく、世界的な高水準である。要するに、飛び抜けた知識人が日本人には少なく、ごく平均的なのである。が、例外はいる。本書の著者である森嶋通夫氏である。彼は日本の有力国立大学で研究教育活動を行なったことはあるが、そのうち拠点をロンドンに置き、そこで多面的な活躍をするようになった。本書にも、そういった国際人としての眼力が遺憾なく現出している。
本書は、中国の天津にある名門の南開大学で行なわれた講演をもとにしている。したがって、中国の知識層に向かって話された談話なのである。本書に先立つ『日本の選択』(岩波同時代ライブラリー、1995年)で、著者は、欧州経済共同体(EEC)ないし欧州連合(EU)に対応する東アジア共同体(EAC)ないし東アジア連合(EAU)を提唱し、その共同体こそが、日本の再度の政治的経済的活性化を促すのだと主張し始めた。本書は、その続編であり、具体化である。前著ほどの迫力は感じなかったが、ともかく、真剣に検討されるべき壮大な歴史的構想であることは疑いない。小泉改革などという泥縄的な政治経済ヴィジョンなどは比肩しようもない代物にしかすぎない。
現代世界は大雑把に見て、最強のアメリカ経済圏(同時テロで衰退のきざしを見せ始めた)を中軸に、欧州連合、アジア経済圏によって構成されている。その中でも、最も弱体なのがアジア経済圏である。中心になるべき日本は、その地域で行なわれた過去の戦争を抜本的に反省しようとせず、中国や韓国で得られるべき経済的利権をみすみす逃している。そういった反省の上に立ち、中国、台湾、南北朝鮮、それに日本からなる統一政治経済圏を創造しようではないかというのが著者の提言なのである。著者の議論には強引さが目立つが、しかし、提言自体は真摯に受け止めるべきであろう。とくに、相変わらず、日本の政治家批判の舌鋒は鋭い。上昇する中国、没落する日本といった同時代的診断をも私は支持する。日本国民すべてがひもとくべき本がここにある。 (bk1ブックナビゲーター:佐々木力/東京大学教授 2001.11.23)
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