紙の本
化石エネルギーから自然再生エネルギーへの環境資源革命の呼びかけ
2002/05/14 22:15
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投稿者:佐々木力 - この投稿者のレビュー一覧を見る
21世紀は環境資源革命の時代と言われる。これまで人類が科学技術文明の動力として使用してきた石油・石炭などの化石燃料が世紀前半で枯渇することが予測され、それゆえ、化石燃料に代わるエネルギーが必要とされ、それに伴って政治経済も大きな変容を余儀なくされるものと考えられているからである。わが国政府は、現在、化石エネルギーに代わりうるエネルギーとして原子力エネルギーの効用を喧伝している。原子力はクリーンなエネルギーであるという宣伝文句を使ったりして、人を驚かせたりもしている。だが、その原子力エネルギーの中核であるウラニウムですら、化石燃料と同じく、あと数十年で枯渇してしまう運命なのである。それでは、何が本格的な代替エネルギーとして有望であると考えられうるのであろうか? 最も有力なのは、風力、太陽熱、バイオマスなどの自然再生エネルギーであろう。実際、環境革命の最先進地域である北欧諸国やドイツなどでは、風力エネルギーへの依存が飛躍的に増大している。
本書は、さまざなな再生可能エネルギーの中でもソーラー(太陽光)エネルギーに着目し、その資源としての大きな可能性、そして経済利用の魅力などを多面的に論じた著作である。そして、環境革命を根源的に推進しているドイツの経験をもとにして、ソーラー・エネルギーへの転換が、いかに人間の生活を多面的に好ましい方向へと変化せしめるのかを実に具体的に、しかも説得力をもって説いている。
もっとも、ソーラー・エネルギーを中心とする自然エネルギーへの本格的な転換のためには、多くの技術上の問題を解決しなければならず、それほど転換は容易なわけではない。しかし、ともかく経済的にも技術的にも確実に袋小路にある原子力エネルギーなどよりは、希望が託せるエネルギーであることは間違いない。自然科学的かつ社会科学的に総合的に構想された環境資源革命への本書の提言から学ぶべきことは余りに多い。 (bk1ブックナビゲーター:佐々木力/東京大学教授 2002.05.15)
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ドイツで試みられているバイオマス(生物資源)をベースとした事例でヘンプが万能植物として取り上げられています。こういうエコロジーの最先端を行く良書にはヘンプが必ずどこかで出てきますね。
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2008-08-26
ヘルマン・シューアのソーラー地球経済.
なかなかに分厚かったが,いかに,世界が化石燃料の原理によって支配されているか?
ということがよーーーーくわかる本である.
原油を中心になりたつ,航空会社,石油会社,電力会社,自動車産業の密接な関係がよく分かる.そして,エコエコ,
CO2排出減といいながら,これらと関わる各国政府がどれだけこれらの産業に「補助金」を出しているかもよく分かる.
石油の消費を増やすために.
自転車の為の道路は整備せず,自動車の為の道路ばかりを整備する地方自治体も責めに帰すべき存在かもしれない.
では,我々はどうやれば永らえる事ができるのか?
その為には,太陽の恵みを分けてもらう,いかにソーラー地球経済に移行しなければならないかを説いている.
ソーラー地球経済のエネルギー源には太陽電池のみならず,バイオマスや水力なども含まれるであろう.(植物は太陽のエネルギーで育ち,
水は太陽のエネルギーで山上まで運ばれる.)
つまりは大体,再生可能エネルギーの事だ.
地球上に偏って存在する化石燃料を利用することは,「先祖の遺産を食いつぶすどら息子」
としての産業革命以後の未完成な人類を演じ続けるのみならず,産地から消費地への「長い連鎖」を維持するために,
「非効率なエネルギー消費による輸送」や複雑な「精錬プロセス」,そして,パイプラインや海上輸送経路を維持するための「国際紛争」
をパスしなければならない.
よく発電時やクルマを走らせるときのエネルギーの効率が「原子力」や「石油」のほうが「太陽光」や「風力」
のような再生可能エネルギーより高いような話を聞くが,
その計算の中には「エネルギー生産コスト」や「中東の戦争」のコストはもちろん計算されていない.
隠れコストだ.
太陽電池礼賛というのもやはり一面的で問題はあるかもしれないが,
国際社会の平穏や恒常的資源貧困国日本の世界の中で取るべきリーダーシップを考えると,
化石燃料の不穏な連鎖からの早期の離脱という事は目指すべき事だと思う.
国際平和を希求するのが日本国憲法の精神だとするならば,それは軍隊を派遣するという,「臭い臭いがしてからファブリーズをかける」
というその場しのぎの精神ではなく,「人間が争う臭いの元を断つ」という社会構造・産業構造変革への意志こそ重要ではないだろうか.
それこそ,公式には軍隊を持たない私たちの国としてスマートな生き方の気がする.
と,ずいぶん風呂敷を広げたが,
そのぐらい,風呂敷を広げたくさせる,一冊です.
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「ソーラー地球経済」というタイトルですが、ここでの「ソーラー」とはバイオマスも含めて「太陽エネルギーによって再生可能な資源」を指しています。この本が出た2001年時点では、まだリチウムイオン電池が今ほど広範に使われておらず、バイオマスも今ほど広範な研究がされていない頃です。その時点で、化石資源を前提とする経済システムから、再生可能資源を前提にした経済システムへのシフトの道筋を示した点で、著者の慧眼には驚くばかりです。