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みんなのレビュー8件

みんなの評価4.2

評価内訳

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紙の本

会社は大きければいい、てえものじゃあないんです。夢がなくちゃあねえ。鳶さんだって、立派なお仕事

2006/08/03 19:35

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

「上司の生涯賃金の計算に呆れ果て、会社を辞めた貴奈子は28歳。女子大の教授である父親の一言が煩わしい。そんな彼女に母親が紹介したのが叔父の会社を助けることだった」職人小説。
妙な分類ですが、それ以外に表現のしようがない不思議な、それで居て痛快な物語です。
お酒の席で、上司が話題にしたのが生涯賃金。それから計算すると、自分の月々の小遣いは2万円、人に奢ったりしないから何とかやっていけるという本音とも冗談ともつかない言葉に、失望を感じた中野貴奈子は、その上司に辞表を提出してしまいます。無論、上司は自分が原因だとは気付くこともありません。
家に帰った貴奈子を待つのは、女子大の教授である父親の小言、コゴト、こごと。それもかわして、家でのんびり過ごすことにも慣れてきます。28歳になる娘の、ただ毎日TVを見ている姿に、母親が持ち出したのが、叔父の勇介の会社の事務をすることでした。元左翼の闘士で、今は鳶の会社の社長であるという変り種の叔父が経営する会社の名前は「日本晴れ」。
名前を聞いただけで、断ることを決めた貴奈子を待つのは、彼女の出身校である桜蔭のことを詳しく知っている偏差値マニアの剛、そしてゴルバチョフを担ぎ出してアメリカ征服のシュミレーションに明け暮れる軍事オタクの風太、雷太の兄弟。彼女を敵視する少女ツミ。そして優しいご隠居。
会社のガラスを割ったことで、働くことが断りきれなくなった貴奈子の前に現れたツミの父親。彼らが働く鳶の世界が、生き生きと描かれます。彼らが履いている特殊なズボンの意味や、使う用語も満載。雨と競うような生活、心意気、そして、ここにもある大手と小企業の違い。彼らのもとに舞い込んだ難仕事の行方はどうなるのでしょう。
勇介が持つ会社の理想像というのが、実に素晴らしいものです。会社は大きくなければいけない、大きくならなければ意味がないとしか考えられない、今の日本を作り上げた人間には共感できないかもしれませんが、金まみれの日本に何処かおかしな感じを抱く人たちには、最高の本ではないでしょうか。最後に、余りにも格好良い男と、頭でっかちの女が結ばれないでほっとしたのは、私だけではなくて娘たちも同感。こんなに面白い作品ですが、安易に続編など作って、アンバランスな男女を結びつける愚は犯して欲しくない、と思いはしましたが、既にそれは夢になってしまいました。
作者は1961年、福岡生まれ。またまた黄金の60年代作家です。ともかく、二組のオタクの噴飯モノの議論も楽しいのですが、乱暴を咎められてはぐるぐる巻きにされて逆さづりになる、威勢のいいツミという少女もなかなか見もの。自然に、鳶さんへの偏見も解けてきて、あのだっぽんだっぽんズボンも気にならなくなること請け合いです。

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紙の本

現代の職能集団——その世界と心意気——

2002/02/05 05:13

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけのこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 大学教授の娘で桜蔭高校→お茶の水女子大卒、しかし一流企業の総合職としてレールが引かれた将来に疑問を感じて会社を辞めた中野貴奈子28歳が、鳶(とび)職の世界へ飛び込む。そんなお嬢さまと職人集団のいったいどこに接点があるのかと思ったら、団塊の世代で元学生運動の闘士の叔父・勇介が鳶の頭になっていて、若い衆に慕われているという設定なのであった(なるほど)。貴奈子は、その叔父の会社「有限会社 日本晴れ」で経理の仕事をしながら、学者一族の血を引く好奇心から、異文化の参与観察者となる。

 勇介率いる日本晴れの面々がまた、そろいもそろって強烈なキャラクターでおかしい。見た目は毛のないニホンザルのようだが、東京タワーのてっぺんに登ったことがある伝説の鳶でもある先代の「ご隠居」。軍事おたくの双子で、顔を合わせればゴルバチョフを呼んでアメリカに戦争を仕掛ける話をしている「風太」と「雷太」。東京都およびその近郊の高校ランキングに精通していて、偏差値がすべての価値観の尺度になっている「剛」(貴奈子が桜蔭出身と聞いて感動する)。そんな連中に囲まれて、影の薄い18歳の「健次」。貴奈子をおばさん呼ばわりする、中学を出たばかりの娘鳶「ツミ」。ツミの父親で刑務所帰りの、まるで高倉健みたいに渋くてかっこいい「悦治」。

 彼らは、荻窪の元相撲部屋で個人個人が別々の有限会社を作って、共同生活をしていた。「有限会社 日本晴れ」はその連合体で、それは元左翼の勇介が築いた反商業主義のユートピアでもあった。

 そして彼らが今回取り組むのは、ドイツ人彫刻家ブリックの巨大な作品を、納期2週間でビルの壁面に取り付ける仕事。綿密な現調(現地調査)、クレーン車や機材の調達、現行の仕事の職人仲間への引き継ぎなどを経て、足場の組み立てから作業が始まる。半纏着の一見古めかしい職人集団が、現代の高層建築にも欠かせない存在で、ミリ単位の精度が要求される仕事に命を賭けている。梅雨のさなか、難航する作業をなしとげる職人たちのプロジェクトX。

 そのなかで貴奈子は、軍事ネタや偏差値ネタのとんちんかんな会話や、ご隠居や勇介や悦治の、ツミに対する虐待スレスレの仕打ちに面食らいながらも、鳶の世界のしきたりと心意気を学んでいく。と同時にこれは、貴奈子がもう一つの異文化である学者の世界の「おもしろがる精神」、知的好奇心に目覚める二重構造にもなっているところが、みごとなものだと思う。
【たけのこ雑記帖】

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2006/12/16 12:28

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2006/11/12 21:18

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2007/04/20 09:33

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2010/03/16 15:08

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2012/11/18 21:44

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2016/11/15 11:12

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