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4/8 久しぶりに再読。「その人にしてあげられることは何もない」とか「頑張ることだけではどうしようもない」みたいなのは繰り返し出てくるテーマ。せつないなあ。個人的には博多の町がもっと読んでみたかったなあとも思う。解説に「中年男性の欠落感」てあったがそれは違う気がした。
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現在と過去を上手く噛み合わせながら、
男同士の友情や柵、
二人の間で揺れる女心が描かれていた。
女性作者ではあるが、
昭和の男性色が強く出ているように感じた。
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流されやすい主人公のキャラ。いつもならやきもきするんですが、流されつつも成功した現在も同時に描かれていて面白かった。過去に受けた不当な仕打ちのエピソードがすごく印象深い。
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著者の作品は全部読んだつもりだったが漏れてた。しかもこんな当たりを。
本来の自分とはかけ離れた現在。がんばってもどうにもならないこと。そんなありすぎて目を背けたくなるような感覚に心臓を掴まれる作品。何らかの理由で苦しさを求める人にお薦め。
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まだ話が続いていると思ってページをめくったら終わっていたのでびっくりした。
この終わり方でやり切れなさが三割増しはしてると思う。
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“逆境は人間を弱くする。そうして、そんな弱さがさらなる逆境を呼び込むのだ。運の悪い奴はどこまでも下向きに、運の良いやつはどこまでも上向きに行くようにできているのだ”
“そんな脇田の目から見ても、ユキは自らが好むと好まざるとにかかわらず不運なほうへ不運なほうへといつの間にか運ばれてしまう女であるような感じがした。”
“美しく聡明で、おそらくはいい家で両親からまっとうな愛情を注がれて育ち、そうしたもろもろの幸運を微塵の疑問を抱くことなく一身に享受している、そういう顔に見えた”
人生のどうしようもなさを、鷺沢さんはいつも上手に表現してくれる。
真面目な人を真面目たらしめる理由なんて、そうでなければ人から必要とされない、そうでなければ自分は存在してはいけないと思ってしまうからだろう。
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【本の内容】
1970年代、東京。
貧しくとも、ささやかな夢を分け合う二人の男がいた。
九州から単身上京、中華料理店で働く篤志。
身体がデカいのが悩みの彼は、店の先輩・勇のすすめでプロレスの世界に足を踏み入れる。
運を掴む篤志と、見放される勇、その間で揺れるユキ。
時を経て再会した三人は、何を得、何を失ったのか―?
青春の記憶を手繰り、夜の博多に漂うノスタルジック・ラブストーリー。
[ 目次 ]
[ POP ]
鷺沢萠は、初期の数冊ほどを読んだくらいで、自分の中では興味のない作家だった。
本作もその程度の気持ちで読み始めたのだが、正直、やられた。
ラストの展開に感動してしまったのだ。
プロレスラーとして大成した男・篤志が過去を振り返り、青春時代を共に過ごした勇とユキに再会するまでの話。
たいしてやる気もないまま入ったプロレスで成功する篤志と、頑張ればうまくいくと信じて失敗する勇。
この対照的な二人の生き方が人生のせつなさと皮肉を見せ付ける。
月並みな言い方だけれど、ほんとに人生って残酷。
過去に想いを馳せる、そのベクトルが大きい分、ラストの篤志の喪失感がものすごい反動となって読み手にぐっと突き刺さる。
それにしても、男二人に女一人の関係って必ず、女は、弱くてダメなほうの男になびく。
これって女の本能なのか?
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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切ない切ない小説。読んでいて何度か涙がこぼれた。心の一番深いところに届いて、そこにとどまりそうな内容を持っている。プロレスラーとして成功した男が、夜の博多の街を歩きながら、川の水面に映ったネオンを見つめる。若い時に苦楽を共にした友と彼の恋人のことが、脳裏に甦る。巧いと感じたのは現在と過去を交互に描きながら、主人公の空虚な胸の内を浮かび上がらせる所だ。主人公は結末で、友人と恋人に再会する。その時彼の胸の中に湧き上がった感情は、どのようなものだったのか。生の哀しみを詩情豊かに描いて、胸に迫る素晴らしい作品。
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p47「逆境は人間を弱くする。そうして、そんな弱さがさらなる逆境を呼びこむのだ。運の悪い奴はどこまでも下向きに、運の良い奴はどこまでも上向きに行くようにできているのだ。」
ガタイが良くプロレスで成功した無骨な男の、ザラザラと乾いた心情。会うほど惨めになる元先輩。都会への憧れと、遠い日の恋心。
大きい男は「強い男」なのかどうなのか。