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紙の本
このカバー、苦手なんだよね。美しさか、色合い、センス、やっぱり女性としてはそっちを求めてしまうわけ。でね、ちょっと見に、キモイんデス、内容も
2003/12/21 21:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「大阪の守口市におちた隕石は、周辺を危険地域に変えた。人体がゼリー状になる奇病麗腐病、ドラッグが人を変貌させる」SFホラー。純SFでも、古典的なホラーでもない。ストーリーを追う小説というよりは、ある時代の混沌を描くジャンル分け不能の作品。
20年前、破滅的な隕石落下で大阪は異形の町と化した。守口市を中心とした半径約6キロのエリアは特D地区と呼ばれ、危険地域に指定されたものの、復旧作業が中断されたままになっている。そして、三年後には全身の皮膚がゼリー化する「麗腐病」が発生した。第一期は同じ動作を繰り返し、第二期は皮膚が透明になりゼリー状に、表面が繊維状になる第三期となる奇病。その原因は不明である。
主要な登場人物を絞りにくい小説である。幾つかの話が進行するが、必ずしもそれが綺麗に絡むわけではない。とりあえず、話の進行順に紹介すれば、代々医者の家に生まれた七堂貢がいる。彼は、月に追われている少女 沙子と出会い、周囲の反対を押し切って結婚する。2人の間には、中々子供が出来ないが、そのうち彼女は失踪。帰ってきた時は、妊っていた。彼女の命と引き換えに生まれたのが息子の桂男。
桂男は、再婚した父と母の間に生まれた妹ハル子を溺愛する。そして新しい母の死。父の疑いの目は、血の繋がらない息子に。そして、少年は失踪。後に残されたハル子は12歳で、自殺。妊娠をしていた。以来、貢は桂男を憎み続けている。その桂男は、菊田服飾学園で天才の名をほしいままにし、現在では若きオーナーデザイナーとして、世の中に君臨しようとしている。
その桂男に、D地区で謎の女たちに襲われたところを救ってもらったのが、授業中にケータを利用しマイクで話し合う函崎アダリと三嶋紫の2人。しかし、三嶋は早々に行方不明になる。次に出てくるのが、医師の涼木王児、かれは探偵事務所の所長でもある。かれが勤務する病院で、「麗腐病」患者のゼリー状となった若い女の顔に、舌鼓をうつのが蓮元と夷の2人の老人で、彼らはともに巨大複合企業HEの名誉会長である。
以下、涼木王児の弟で、自衛官となり危険地域にいったまま帰らぬ人となった達也。涼木の事務所に勤める33歳のピッキングを得意とする盗聴屋 菜蛹栄太郎、菜蛹の盗聴に気付き、それ以来彼と暮らすようになった美香、新興暴力団団須仏組の組長マーシー・アナーキー、ミイ、ケイという殺人淫楽者、ネイキッド・スキンというドラッグよって作られたスーツ ターン・スキンを身に纏い虎に変身するサヤマという暴力団員、〈街読み〉速水優子、玩具メーカー社長高坊美香子、傀儡后陛下といった夥しい人物が登場する。
彼らと秘密結社タイトロン、HE社が計画するオルガン計画、ホモ、ヘテロセクシャル、トランスセクシャル・レズビアンなどが背景となり、あるいは前面に踊り出て、摩訶不思議な世界が現れるのだが、どこか情感溢れるという感じがする。一歩間違えば、スプラッター・ホラーになるぎりぎりのところで綱渡りをしているといった印象。
牧野修は1958年生まれ。あとがき「物語から遠く離れて」で、連載という形式の予想もしなかった面白さ、傑作を作ろうとする意気込みなどを、含羞を込めて語る。西澤保彦はセクシャル・ミステリ『奈津子』シリーズで、牧野のセクシャリティについて冗談のように語っていたが、これを読むと「マジカな?」と思ってしまう。日本SF大賞受賞作。藤原ヨウコウのイラストは、美しいのにどこか血の匂いがする。
紙の本
牧野修ベスト又はオンリー・リアル牧野修
2003/09/27 19:47
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投稿者:青木レフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
イメージの奔流というしかない。異世界めいた近未来の
グロテスク。
読み手を主人公に憑依させて物語世界を眺めさせるのでは
なく、様ざまな視点にシフトしながら世界を詳らかにして
いく方式。だからこその乾いた視点、イメージの洪水と言
うべきか。
牧野修のことを読みやすいが可もなく不可もない作家と少
し低く見ていたのだが、これは天才の仕事といえる。今ま
で読んだのは水で薄め過ぎた水割だった。
「ラストがついてけません」と取る人もいようが、重要なのは
途中のイメージのほうに思える。(presented by 純粋呪文)
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