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紙の本
機械が人間を必要としなくなるという不安
2004/06/06 12:56
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
神林長平を読むのはこれがはじめてで、素早く小刻みに運ばれる無愛想な文章がちょっと入りづらいなと感じた。それはたぶんこれでもかとばかりに戦闘機の戦闘シークエンスが意味不明の英単語の乱舞とともにサクサク進んでいくところにも原因があるのだろう。軍事ものに興味がないので、あまりそういった描写が面白く感じられないのだ。じっさい前半は結構退屈で、傑作といわれているけどあまり面白くならないな、と不安ではあった。
後半、敵とされる「ジャム」がいかなる存在かがおぼろげにみえてくると、ぐっと面白くなってくる。
「通路」という超空間から襲って来た異星からの侵略者「ジャム」に対抗するため、「通路」の向こうの異星の地に作られた前線基地「フェアリィ」が舞台である。そこでは最新鋭戦術戦闘電子偵察機「スーパーシルフ」が特殊任務に就いている。その任務とは敵「ジャム」にかんする情報の収集であり、たとえ味方が全滅したとしても、かならず自分だけは帰還するようにという非情な任務であった。十三機しか存在しない「スーパーシルフ」のうちの一機、パーソナルネーム「雪風」には、深井零というパイロットが乗っている。彼らは間違って人間になってしまった機械とまで呼ばれるその特殊部隊のなかでも特に冷徹で知られていた。
親友といえるブッカー少佐を除いては愛機「雪風」以外には無関心を貫く零と、彼が執着する「雪風」との関係、つまり機械を操る人間と、高度に成長しはじめた電子機械との関係が、この小説がもっとも関心を注ぐ部分である。
この小説は「機械が人間を必要としなくなる(邪魔者扱いをする)」という状況を書いている。
最前線最強の戦闘機「雪風」は大量の電子機械を積み込み、数多の戦場をくぐり抜けその経験も電子的データとして蓄積していく。さまざまな動作をオートで行い、着陸などの基本動作もほとんど完全自動化されているばかりか、実戦データの蓄積のおかげで、人間よりも壮絶な戦闘を機械のみで行うことができるまでになる。
そこで本当に人の乗らない戦闘機を作ろうという動きが出て来るのは必然だ。機体の性能限界まで出して戦うのには、Gに耐えられない人間というもろい積荷は邪魔になってしまうのである。
そんなとき、人間というのはその戦争の中でいったい何なのか。
さらに敵「ジャム」はどうやら人間には興味がなく、機械だけを相手にしているのではないかという疑念が兆す。だとすれば、機械同士が戦っているわけで、そこに人間の居場所はなくなってしまう。
そんな不安がフェアリィ基地の隊員ブッカー少佐や深井零を襲う。特に零は、自分が唯一愛着を持つ(同乗するパイロットの安否よりもまず機体の無事を訊いたり、その様は恋慕に近いか)雪風に必要とされなくなるという不安にさいなまれる。
たぶんここが、同じく機械と人間というテーマを描くことでよく影響関係を云々されるディックとの違いなのではないだろうか。ディックの描く機械と人との関係は乱暴にまとめれば、人間性の問題だった。人間性(感情、共感)を失った人間と、人間的なロボットを対比させる。隣人が本当は人間の偽物である機械なのではないか、といった予期は人間たちに恐怖をもたらす。
しかしこの小説では、機械の知性は人間を殺戮したりするという反逆の恐怖を伴ってはいない。むしろ、手のように足のように使ってきた機械が自律し、その機械たちに見放されるのではないかという不安の色が濃いのだ。
この小説は連作短篇のスタイルをとって、その不安を様々な状況、視点からじっくりと描いていく。優美に空を舞う「スーパーシルフ」、それは人間にとってもはや単なる兵器ではない。では、何か?
鮮やかなラストで小説は閉じられるのだが、これから、というところで終わっている気がする。大部の続編が出ているが、この物語をこれ以降どう語っていくのかとても気になるところだ。
紙の本
戦闘妖精
2015/08/19 23:04
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投稿者:yasu - この投稿者のレビュー一覧を見る
今野敏のギガースを6巻読み、そのあとがきに紹介があった神林長平の戦闘妖精・雪風を購入しました。その前に鷹見一幸の宇宙士官学校と読み、日本のSF作家を見直した。