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紙の本
天から千羽の恥が降る
2002/07/16 00:34
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投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
恐らく本屋の店頭で見たら、まさか、藤原新也の新刊と気がつかず通り過ぎたかもしれない。既刊の彼の著書を多分、全部、読んでいる同年のおやじにとって、藤原節と言って良い文体が色となって、頭に染み付いている色眼鏡に「なんじゃこれわ、同姓同名の異人かと」思ったかもしれない。サブカルな表紙カバーは彼に似つかわしくなかった。
しかし、間違いなく新也であった。HP上に書き込みした彼の日記が、9.11の恥を契機として、一冊の本となったわけである。それ故、完結されたものでなく、最後のページから、藤原新也のHPにジャンプして、楽しむ事が出来る。
おやじが店頭でまごつかなっかたのは、ちゃんと、PCでチェックしたからである。PCを始めてまだ数ヶ月の昭和19年早生まれのおやじは日々PCと格闘しているが、彼はITはお得意らしい。HP上のメメントモリは見事なスライドショーである。器用な彼のことであるから、当然、彼の写真か絵、イラストで装丁されると、思い込んでいたから、その違和感で表紙の猫とにらっみっこしてみたら、藤原新也の顔に見えて来た。
「空から恥が降る」9.11のテレビ映像を見て、おやじのあたまに過ぎったのは1945.8.6の午前八時のヒロシマの上空であった。リトルボーイと命名された<原爆>を孕んだB29エノラゲイと僚機グレート・アーチストの2機の倒錯的なランデブーであった。
天を仰ぎて唾す。彼はかって、心身とも乾き切った若い旅人として、アフガンの村の村人の美しさと饗応について語る。もはや、それらは、大国によって破壊された。桃源郷を唾す野蛮な勇気は恐るべき虚無である。虚無はテロの母である。一体、テロの生みの母は誰なのか?
彼は野良子猫たちを拾い、とうとう、最後まで面倒を見る。HPを駆使して、メールで育ててくれる人達を捜し出す。この顛末のドキュメントはHP上ならではの同時性があって、面白い。カバー画は彼の猫好きの衒いからくる遊び心だと、思う。いつも、肩肘張って生きていると思っていた彼の意外な一面を見て、微笑ましかった。
もう一度、アフガンへと最後の大掛かりな旅を企画して飛び立とうとした時、バイクに撥ねられ、断念してベットでため息ついて、この本が生まれたのだと思う。
藤原新也もおやじももうじき還暦である。冒険旅行は若い人達に譲って、「空からの恥」について言葉の刃を放って天に貢献するしかない。サッカーの閉会式、横浜の空に千羽鶴が舞い降りたが、その千羽鶴がネットオークションにかかった。大国の恥は臆面もなく、知の規範となって、千羽鶴を金に替える。
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