紙の本
著者コメント
2003/02/26 03:15
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投稿者:山田奨治 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本文化の縦糸と横糸
この本には、妖怪、認知科学、西洋美術、浮世絵、写真、著作権、連歌、建 築、インターネット、マンガ・アニメといった、分野を越えた何本もの縦糸が張られてある。このような文系から理系までの、何の関係もなく思える諸分野にも、これらをつなぐ一本の横糸がある。その横糸のことを、わたしは再創——レクリエ ーションと名付けた。再創とは、すでにあるもののコピーに何かを付け加えることを楽しむ創造である。
日本の芸能や芸道、文芸、工芸では、規範から大きくはずれた表現をすることは、決してほめられない。先人を模倣することが、表現の第一歩なのである。ところが、明治以後の近代化の流れのなかで、伝統文化は衰退し、模倣という文化の継承システムが一部で破壊され、まねすることは戒められるような風潮が 支配的になっている。
模倣を禁じ、独創を守ってきた制度のひとつが著作権である。ところがこの著作権というものは、著作者の精神的な尊厳のようなものを保護する制度だという 表の顔と、富を生み出す打出の小槌としての裏の顔がある。歴史的にみると、著作権制度が生み出され、それが国境を越えて広がる原動力になったのは、この裏の顔のほうであった。また、著作権の越境に国家間の支配・被支配の関係が、深くかかわってきたという事情もある。
インターネットという、人類の歴史上、例をみないようなコミュニケーション文化が生まれたことで、情報の流布を制限することによって富を生み出すという、近代的な情報産業の基盤が崩れつつある。『日本文化の模倣と創造—オリジナリティとは何か』というテクストは、日本文化という着物の縦糸と横糸を解きほぐし、わたしたちの進むべき方向を読者とともに考えるために織り直したテクスチャ(織物)である。
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著者の山田奬治さんは(今現在は分かりませんが)弓を引かれる方です
「禅という名の日本丸」も書かれています
いまだ、この方の本にハズレなし
曾我物語と見立て
京の楊弓場
伝書
の三項目で弓が扱われています
曾我物語は、曾我兄弟が蟇目矢で仇討ちします
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[ 内容 ]
著作権をはじめとして、現代の私たちは「独創(オリジナル)にこそ価値があり、模倣(コピー)は許されない」という価値観に縛られている。
しかし伝統文化を振り返れば、個性豊かな表現は先達の芸や作品を模倣することから生まれてきた。
西洋美術、浮世絵、写真、連歌、インターネット、マンガ・アニメなどを題材に、近代的な価値観にすぎない「独創」神話の矛盾を解き明かし、模倣を楽しむ「再創文化」の意義を問い直す。
[ 目次 ]
第1部 模倣と創造―オリジナリティとは何か(似ているとはどういうことか;ものまねの美術;写真の神話)
第2部 著作権は何を守っているのか― 著作権制度の光と影(著作権の狂想曲;コピーと国のかたち)
第3部 日本文化と再創主義のすすめ(つながりの歌;デジタル社会のジャポニスム;クリエーションからレクリエーションへ)
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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再創主義(レクリエーション)。共有・模倣・共栄。コピーされることの意味、オリジナルの価値。読みごたえありました。
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読み始めてしばらく、いわゆる専門家が書いた本より議論がゆるくて牽強付会だなぁと感じていたけれど、読み終えてこの本自体が実は著者が提案する「再創」のいい例になっている(意図してかどうか分からないが)ことに気づいた。
国家間のパワーゲームによって著作権が国境を越える話と、サザエさんが世界でポピュラーではないという話は特に興味深かった。
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江戸期の見立て絵の解読の参考にするために読み始めたが、そちらの情報もさることながら、著作権のあり方が実は帝国主義との関係が強いことなどに気づかされた。
確かに独創性というのはかなりあやふやな概念で、芸術が
本来立脚する「技術」の伝承性を考えると模倣と創造は必ずしも対立概念ではないなぁ。
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著作権を日本の文化から考える視点を与える本である。著作権について考える際には必読であろう。
ドラえもんが世界的になった反面、サザエさんが日本でしか通用しないことは、サザエさんが著作権の管理が厳しい、ということが説明されていた。これは他の本では、ましてやメディアリテラシーの本では全く触れられていないことである。
メディアリテラシーでの創造と関連することなので、メディア・リテラシーを学ぶ際にはこの本を読んでおくことが必要となるであろう。
ひとりでこれだけの歴史的な事実を調べることは大変なことであり、この本を参考文献として利用して卒論を書いた方がいいであろう。