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紙の本
コミック『ハンター×ハンター』の小説版、とでもいったらいいんだろうか、結構小気味よく読めるけれど、突然主人公達が子供になってしまうのがねえ
2004/01/04 21:14
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「近未来の地球、日本全土から選ばれたものたちが入学する大東京学園。そこを舞台に首席卒業を目指す少年たちの必死の競争が始まった」SF学園冒険小説。どちらかというと、ゲーム感覚が正面に出た感じで独特の幻想味をもった小説を得意にする恩田にしては珍しい作品。
近未来の日本、そこを無事に卒業すれば生徒自身は勿論、その家族までの一生の生活が保障されるという大東京学園が舞台。地区ごとに選ばれた少年たちが日本全土から、その学園に駆けつける。今年の話題は、受験生の間で既に伝説的存在となっている受験番号28番の、首席で卒業をねらうアカシシゲル。かれと友人になったカナザワアキラが主人公である。
入学早々、学園入り口の橋で早速サバイバルレースが始まる。入学生が渡る橋が、後部から逐次切り落とされていく。それより早く走ったものだけが、無事入園できるという。生き延びた彼らを待つのは、成績によるクラス分け。彼らは東京23区の名前をとったクラスに振り分けられ、期末試験毎にクラスの見直しが行なわれる。ポイントを失ったものは下へ、得たものは上へ。落ちこぼれは新宿クラスに入れられ、そこに入ったものは卒業しても過酷な運命が待ち受ける。
アキラとシゲルを執拗に付け狙うリュウガサキ。近未来社会が保存する20世紀のヴァーチャルな世界。新宿クラスのシマバラたちが密かに練り上げた計画。彼らに不穏な動きがあれば取り押さえようと虎視眈々と監視の目を光らせるタダノ、怪しい「年増園」に閉じ込められたキョウコ、表の学園生活に対し、本音が飛び交う地下世界アンダーグラウンド。空中を飛び交うグリーンキャブ。伝説のヒーローで見事学園を脱走したといわれるカナザワオサム。
不可思議で残酷な試練。現在の東京を連想させる、様々な施設、年増園、ディズニーランド、山手線。官僚の秘密主義と意味も無い競争原理。地雷撤去の訓練と、外部世界に埋設された無数の地雷。失踪した兄の行方を追い求める少年、逃げることを拒否したことで心に傷を負う少女。生徒を虐めぬくことに快感を覚える教師、謎の老人。
コミックスの『ハンター×ハンター』を思わせる展開で、いつもは、ゆっくり読ませる恩田の小説が、珍しく読者を煽り立てる。28の章とプロローグ、エピローグには、全て有名な映画のタイトルが使われる。アニメ化必死のノンストップ・アクションSF。
いやあ、面白い。ただし、子供の読者は気にならないかもしれないれど、わたしには展開上引っかかる点がある。それは、最初こそ逞しかったアキラとシゲルが、途中から単なる子供になっていってしまうことだ。自分の身のまわりに全く目が届かなくなる。目の前の危機に気付かない。
これで、過酷な受験レースを乗り越えることができるはずが無い。明らかに敵と分っているのに、それに立ち向かわず、意味も無い日々を無駄に過ごす。これは余りに不自然だろう。小説が面白いだけに、気になってならない。
巨匠 生頼義範をどこか思わせるカバー画は、おがわさとし。SF専門誌連載の単行本化にいかにも相応しいものではある。
紙の本
楽しめるかは読者次第
2003/02/19 12:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:梶原那穂子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わった瞬間、「え、これで終わり?」と思いました。話の本筋的にはきれいないい終わり方なので、続きが読みたくてそう思ったのではありません。説明が足りてないと感じたからなのです。
これも恩田節といえないこともないのですが。やや苦笑。
校長とかオサムとか、そのあたりにもっとエピソードがあってもいいと思うのですが、本筋を描くのに忙しくてストーリーの厚みがやや乏しいというか、うまく展開してたのに急に失速して視界から消えた感じです。
設定のマニアックさから、作者が本当に楽しそうに書いている様子が伺えます。アリでしょう。一緒に楽しめるかどうか、読者は試されているのかもしれません。
一応学園ものですね。恩田の学園物は面白いと定評がありますが、これも面白いといっていいと思います。おすすめするのであれば、相手を選びたいですが。