紙の本
散りばめられたピースが集まるとき
2006/06/20 22:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：よし - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫も出版されていますが、やはり親本を。それは表紙にもエッセンスが詰まった作品だからです。表紙はエッシャーの騙し絵。この絵のごとく、読者をまんまと騙す（？）伊坂さんはすごい。そして第１作「オーデュボンの祈り」ともリンクしています。
傲慢な画商、こだわりをもつ泥棒の黒澤、リストラで途方にくれ、野良犬と町をさまよう豊田、お互いの配偶者を殺そうとするサッカー選手の青山とカウンセラーの京子、新興宗教の教祖の解体に立ち会わされる河原崎。５つの物語が進んでゆく。
この小説は小説だからこその可能性を引き出した作品。
誰もが他人の人生を生活を垣間見てみたいと思っているのではないでしょうか。もし、それができたら。
小説ならできるんですね。それもこの表紙のように俯瞰したように。
人と人との出会いや偶然の出来事、そして同じ景色を見て感じること。それぞれの心を覗いてみたい。そんな欲望に見事に応えている作品だと思います。
もう一つは小説ならではの時間差なのです。もうここまで書いた時点でネタバレですけど。すっかり騙されました。
実は時間差でつながっていたなんて。
ここまで読者を欺く作家はここ数年いないと思います。
そして５つの話が実に面白い。泥棒の黒澤とリストラにあった豊田が良いんですよ。実は一緒にさまよう野良犬が一番好きだったりして。動物に対する愛情も感じざるを得ません。優しいんですよ、伊坂さんは。しかし、人間には伊坂さんのテーマともいえる「善と悪」が書かれています。
本当に面白い。ここまで書ける作家伊坂さんのファンにすっかりなってしまいました。ただ一つの注文は…中間あたりで繫がりがわかってしまうことかな。
さあ、散りばめられた伏線を堪能してください。騙されてください、不思議絵のように。そしてピースがはまっていくような快感に浸ってください。そんな伊坂作品に出会えて本当によかった。
紙の本
誰よりも豊潤な人生を
2021/12/17 14:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
金満画廊主からリストラ離婚男までと、アップダウンの激しい人たちばかりです。仙台市内の名所を巡りつつ、それぞれの運命が交錯していく展開がお見事でした。
投稿元：
レビューを見る
５つの物語が独立して並行的に展開され、細かいエピソードを通じて、最後にそれぞれがきれいにつながってゆく。物語相互の時間進行の関係をぼかすことによる構成の妙が徐々にあきらかになっていく。一読感嘆させられる。構成の妙だけでなく、一つ一つの物語が短編としても十分読める内容。キャラクター造型がうまく、会話がスタイリッシュで格好いい。何よりも読後感がよくて元気が出る。
投稿元：
レビューを見る
うまい！おもろい！
大事なことは、ユーモアをこめて語る。この姿勢が好き。
作者伊坂氏が犬好き丸出しなのも好感度高し！
投稿元：
レビューを見る
伊坂作品の中では、初めて読んだ時の評価では一番。ちりばめられた伏線がきれいにハマっていく感覚はかなりの快感でした。残念なのはやはり初読が一番であって、2回目、3回目と読んでもそれには及ばない点。
投稿元：
レビューを見る
おもしろい！やられました！ 「あれ？」って思ってたところの謎が解けていく瞬間。 構成の妙に驚き、あとはただ、「すごい」の一言でした。 ５個の話が１つにつながっていく。 人と人はつながっている。 そして作者のワナなのかサービスなのか他の作品に出てくる人が出てきたりもする。 （伊坂作品は４作目なのだけど３作目でも見つけました） これがまた楽しい。 ・・でもそれって伊坂作品を全部読まなきゃ！そして全部読み返していかなきゃ！・・って事？
投稿元：
レビューを見る
――交錯する十余の人生
――併走する五つの物語
――バラバラに進む五つのピースが
――最後の一瞬で一枚の騙し絵に組み上がる
タイトルの【ラッシュ】は
lash でもあり lush でもあり rash でもあり rush でもある。
そして キーワードは【神さまのレシピ】
人生と言う一本の紐が あちこちに伸び 時に結び目を作り また伸びる。
伸びた先で また結び目を作り さらに伸び また結び目を作る。
何本もの紐が 結ばれ合い 小学校の校庭にあった 地球儀 という遊具のような形を成す。
バラバラだったものが いつしか ひとつの形に向かっているのに気づく時
神さまのレシピに 胸が震える。
投稿元：
レビューを見る
それぞれの話が並行して進みながら、やがて一点に収束していく。このパターンの話は割と多いが、この話はちょっと違う。ばらばらはそのまま、最後まで交わらない。でも、干渉し合っている。その辺りの見せ方が上手い。装丁にも使われているエッシャーの騙し絵が印象的。
投稿元：
レビューを見る
ばらばらになった絵が、一つにまとまっていくような、ジグソーパズルのような構成です。細かいところまで計算された巧い作品でした。
投稿元：
レビューを見る
白かった！この人すごいよ！五つの主人公のパートが段々とさまざまな伏線を回収しながらひとつにまとまっていく感覚＋物語自身のかなりの面白さが最後まで持続するってもの凄い。本格＋ハードボイルド＋サイコスリラーな物語が縦横無尽に語られていく感じが何とも。最後にむかつく資産家に失業者が言ってやったセリフがもの凄い印象に残ってる。
投稿元：
レビューを見る
五つの物語が独立して語られるのですが、最後には綺麗に嵌まったことにやられたと思いました。答えは既に書いてあったと。
投稿元：
レビューを見る
こういう複雑な物語は、最初に戻って読み返さないと、わけがわからなくなったりしますが、この話はさらりと読めました。すごいぞ、伊坂マジック！
投稿元：
レビューを見る
「オーデュボンの祈り」を読んでから伊坂幸太郎に夢中です。
それにしても、すごい。
すごく面白かった。
バラバラ死体、新興宗教、空き巣、リストラ、不倫、…、
ものすごくいかがわしいものばかりなのに、なぜか清々しい。
それぞれの話がパズルみたいに徐々にぱちんと繋がっていく感じ。
最後はきれいにパチリと完成させてくれて、読後はすっきり。
けっこうたくさん登場人物が出てくるけど
全然ややこしくないし。
「オーデュボンの祈り」の主人公もチラッと絡んでて
こういうのもうれしい。
最高でした。
投稿元：
レビューを見る
バラバラの話がパズルのピースのようにはまっていく。完成した時には何とも言えない感動が。その人の行動が想いもがけない形で他者に影響を与えていく様を見事に描ききった作品。それはまるで一つの行動がパズル画のように違う形に見えていく。うますぎる。
投稿元：
レビューを見る
平行して描かれる５つの物語。一見何の関係もなさそうだけど、黙って読みすすめていくと点で存在していたものがゆっくりと線になっていく。最後にはすべての点が結ばれて大きな絵が完成。その緻密さに言葉がこれ以上出ません
