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紙の本
この春、中学受験を終えた娘の慰労をかねて奈良京都へ家族で旅行をした。小奇麗に整備された清明神社などを4人で見て、昔が少し身近になった気がした。本当だよ。
2003/04/13 20:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
夢枕獏『陰陽師』や映画で人気の平安京。その歴史や地理などを易しく解き明かしてくれるジュニアの為の新書。またまた自分の無知を曝すようだけれど、この本で初めて知ったことが一杯。「こういう本にあの頃出会っていたら」本の一冊。
全体を「門の章」「橋の章」「坂の章」「樹の章」に分け、今昔物語集の概要を教えてくれると共に、最後に「窓の章」で、今昔の由来や、消えた物語集の写本が、後世に現れてきた不思議などを紹介してくれる。巻頭に古の平安京周辺の地図と、平安京そのものの地図が載っていて、これを見ながら読んでいくと、王朝の世界がくっきり浮かび上がってくる。
「門の章 説話入〈門〉」では羅城門、達智門、再び羅城門と門のことが語られる。朱雀門との関係や、当時の門の役割、そしてこの説話集が出来たときの門の存在などが丁寧に説明される。中でも源博雅については、陰陽師の安倍清明との身分違いの交流など絵空事と断じるあたり、『陰陽師』の記事を当たり前のことのように読んでいた私には目から鱗がハラリ。話の流れで、芥川龍之介の小説から黒澤明の映画までも紹介しているあたりは、誰もが入って行き易い。
「橋の章 異界の架け橋」では安義橋の鬼、タブーを破る話と説話の成り立ち、鬼とは何か、他の絵巻などのことを紹介する。橋というものが魔を抱えた存在ということから、百鬼夜行と一条戻り橋、牛や夢の意味の説明も、簡潔ながら充分なもの。
「坂の章 往くも還るも説話の道」の袴垂と盗賊集団、武士の心ばえ、わらしべ長者の話などは、読者として想定されているジュニアには親しみ易いに違いない。宇治拾遺物語、単に正邪で収まりきらない話のあり方、奈良坂と奈良との関係もよく分る。更級日記、玉葉、そういった古典の名前が少しも気にならず、むしろその大きな世界に触れたくなる紹介は文句なし。
「樹の章 樹下と樹上の世界」では、話は仏教の世界へと広がりを見せる。成らぬ柿の木と変化の術は、皮肉で楽しい。梁塵秘抄、樹に宿る霊の話、仏と樹、釈迦の物語、仏伝としての今昔といった教科書的な記事も無味乾燥にならない。倒壊する樹、巨木にまつわる伝説、生命を生み続ける象徴としての樹などは、誰でも納得がいくだろう。
全てに共通する「境界」の深い意味。内と外、国と国、この世とあの世、時間や人間、夢と現実、そういった境を4つの切り口から見せてくれる今昔物語集。こういう本を昔、読んでいたら、もっと世界は違ったものに見えただろうと、我が家の中学生の娘たちが羨ましくなる。この本をネタに小説のひとつでももしてやろうかと、不遜な想いを抱いたりして。そういう刺激を与える一冊。
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