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碩学からも称賛される漱石の漢詩の水準
2021/06/09 14:10
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の巻頭において、編者の吉川氏は、
漱石が「専門の漢詩人ほどには、
中国詩の韻律の法則を記憶しないというのである。
この謙遜は、一バアセントほどは、真実である」
と、慎重に但し書きをつけつつも、結局は、
「日本人の漢語の詩として、めずらしくすぐれる」
と、殆ど手放しで漱石の漢詩を讃えています。
元々岩波新書だった同名書籍の増補版である
この一冊は、二十一世紀の今日、
確かに岩波文庫に加えられるべき古典となったと
思います。
なお、増補部分に相当する付録以外の全ての
漢詩の書き下し文には読み仮名が振られており、
音読派の読者を楽しませてくれることでしょう。
漢詩を作る漱石
2016/06/26 21:32
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Freiheit - この投稿者のレビュー一覧を見る
漱石については小説ばかりに注目されるが、漢詩を作っていたことも知られている。しかし、それを本格的に取り上げる人は少なく、本書は唯一の書籍。漱石の漢詩については「漱石漢詩研究」が戦前にあったのに戦後は忘れられている。
詩情と品格
2005/11/15 01:06
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
漱石は簡潔にして締まった句が好きだ、と云っていたそうだが、実際彼の詩作も簡にして品格のあるもので、繊細さと思索のひろさが素朴に味わえるものだ。漱石の作品については毀誉褒貶があり、またその偉大さを認める者たちの間にあっても『猫』や『草枕』をもって近代文学の枠を超えた作と評するものあり、子供向けの作品からしだいに近代知識人のエゴイズムというテーマを追求した本格的な作品に移行したと捉えるものありさまざまな解釈が百花繚乱の風情だが、私はその文業の基底に流れる詩こそ漱石の最大の魅力だと思う。
本書の漢学の専門家による漱石の漢詩に付けられた註は批評の趣を持っており、同時に人間に対する洞察と理解に支えられた敬意が込められていていわゆる「文芸批評」の俗っぽさがなくて心が洗われるような気持ちがする。
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