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世界探偵小説全集 36 レイトン・コートの謎 みんなのレビュー
- アントニイ・バークリー (著), 巴 妙子 (訳)
- 税込価格:2,750円(25pt)
- 出版社:国書刊行会
- 発行年月:2002.9
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ベストじゃないけど、海外古典ミステリの巨匠が最初に放った問題作!
2003/01/07 19:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yuseum - この投稿者のレビュー一覧を見る
『毒入りチョコレート事件』(創元推理文庫)や『第二の銃声』、『ジャンピング・ジェニイ』(いずれも国書刊行会)などで、近年再評価が進んでいるバークリーの処女作。
処女作だからでしょうが、少しこなれていないというか「固さ」を感じました。ファースと言うのか、全体的にドタバタコメディ調なんですけど、その部分が冗長になりがちで謎解きの部分がぼやけがちな気がしました(その点、先に挙げた円熟期の作品群はコミカルとシリアスのバランスがうまくとれていて、読者をぐいぐいと引っ張ってくれるんですね)。だから、楽しい作品ではあるんですが、本作が「このミステリーがすごい! 2003年度版」海外編の第8位にランクインされているのは、ちょっと甘いんじゃないかな…。
…と、「処女作だから仕方ないや」と不満を抱きつつ読んでいましたが、結末にはびっくり(○_○)! いやはや、現在では決して珍しくない、むしろ陳腐になりつつあるプロットなんですが(ちなみに1925年の作品)、いかんせんそれまでの牧歌的な雰囲気に少し退屈気味だったので、このラストには衝撃を受けました。バークリーのシニカルな側面が既に垣間見られており、興味深いです。
なお、次作『ウィッチフォード毒殺事件』(晶文社)もほぼ同時期に発売されましたが、本作を読み終えた方はぜひこの作品も読んでみてください。「レイトン・コート」を読んだ人にとっては、「ウィッチフォード」のオープニングは結構驚きなので。
私がこの本に★4つあげる理由は、やっぱり不純かなとはおもうけれど、探偵とともに読者が迷走するスタイルと、解説のよさなんだよね
2004/04/08 21:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「富豪でレイトン・コートの主人であるスタンワースが密室の書斎で死体となって発見された。素人探偵シェリンガムと友人のアレックは謎に挑むが」本格推理小説。バークリーのデビュー作だが、長い間翻訳されることはなかった。それが何故かは、現代の名探偵が綺羅星のごとく名を連ねるわが国の推理小説事情にある。それは巻末の、羽柴壮一の丁寧な解説を読めばよくわかる。
小説が書かれたのは1925年、探偵小説の黄金時代が今まさに始まろうとする時代で、クリスティ、クロフツ、セイヤーズなどが登場し、A・A・ミルンは『赤い館の秘密』という傑作をものにしていた時代である。舞台はレイトン・コートという屋敷。主人は実業家で富豪のスタンワースである。
小説は、この本で素人探偵として颯爽?としてデビューすることになるシェリンガムの、庭師への一方的な話掛けから始まる。じつは、このシェリンガムの登場の仕方が、このミステリーの全てであるといっても過言ではない。といっても、謎の話ではない。バークリーが考える推理小説、探偵のありかたについての話である。
庭師との会話が進む薔薇園の片隅では、シェリンガムの友人であるアレックザンダーとバーバラとのなったばかりの婚約が、彼女の一方的な宣言で破棄されていく。そして食堂に集ったスタンワースの義理の妹シンシア、秘書のジェファスン少佐、客のミス・プラント、バーバラの母、執事のグレイヴズは主人が起きてくるのを待っている。その場でシンシアは義兄の姿を見かけていないことを皆に告げる。
彼女は、スタンワースが自分の部屋にいた形跡がないこと、書斎が中から鍵をかけられているらしいことを伝える。駆けつけた人々が、ドアを打ち壊して部屋に入って見つけたのは、一見自殺したかのような主人の死体と、それをほのめかす遺書だった。死体に駆け寄り何かを探すようなジェファズン、何かをしんぱいするプラント。彼らの挙動に不審の念を抱いたシェリンガムと、友人のアレックは、事件の解明に乗り出すが。
シェリンガムは神のごとき名探偵を気取ろうとするが、アレックの執拗なようせいもあってそのつど自分の手の内を明かしていく。だから、読者は全く探偵と同じ条件で、推理を進めることができる。その展開は、まさに迷走という言葉が最も相応しい。それはこの小説を読んでもらうしかない。
バークリーが、そのような推理小説の形態を選んだ以上、我々が驚くような結末というのは、ありえない。いや、意外ではある。しかし、そのショックを売り物にした小説ではない。それが、わが国でもかなり有名なバークリーの、デビュー作がなかなか紹介されなかった所以である。ここは羽柴壮一の丁寧な解説を、ゆっくり読んで欲しい。あまりに特殊な発達の仕方をそいてしまった日本の推理小説を考える上でも、貴重なシリーズであるとともに、それを解き明かす解説である。国書刊行会のこのシリーズ、作品はともかく、解説のレベルの高さでは日本の推理小説史のうえでも特筆すべきものだろう。
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