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紙の本
『半落ち』ばかりが注目されているけれど、横山の魅力は何とっても緊張感溢れる短編。『陰の季節』に続くナイス・ゴール!
2003/03/05 20:33
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
二匹目の泥鰌がいたとでも言ったらいいのだろうか、前作『陰の季節』を読み終わったとき、松本清張が生きていたらさぞかし喜んだに違いないと感心したけれど、続くこの作品も実にしっかりしたもの。年度最優秀短編のといわれたのがよく分る。派手な内容ではないし、流行の、量で勝負するような様子も微塵も無い。それにしても、この緊張感横山ならではのもの。新作の『半落ち』が随分騒がれているけれど、完成度では圧倒的にこちらが上。ついでに言えば、新作では短編集『顔』のほうが好きだ。
こともあろうに警察署から警察手帖が消えた。しかも30冊という大量紛失。どうみても盗まれたとしか考えられない。一体だれが何のために。マニアの犯行なのか。しかし署自体がある種の密室、機会のある人間は限られる。手帳を一括管理することを提案した結果が生んだ事件の背景にあるものは。我々が殆ど知ることの無い組織の深淵を描く「動機」。前回の松本清張賞の受賞作品集も本当に警察内部のことをきちっと描いているなあと感心したけれど、今回も脱帽。
出獄した暴行犯と保護司を描く「逆転の夏」、地方紙でスクープ合戦を繰り広げている女性の心理と職場のあり方を問う「ネタ元」、再婚した裁判官の新妻への想いが法廷での居眠り時の寝言になってしまった「密室の人」、どれをとっても文句のつけようが無い。背景や人間関係も、短編であるにもかかわらず、目に浮かぶように濃密に描かれる。カバーデザインもいい。
リアルな警察小説といえば、先ず佐野洋の諸作や、最近では久間十義の長編を思い出すが、描写の密度と組織を描くという点では今のところ、横山秀夫が一番。殺人が無い警察小説が成り立つというのも発見だが、「密室の人」に見られるようななんともいえないユーモアと、その裏の現実という作品も面白い。俗に流れない情、という点は冒頭に触れた『顔』に上手く受け継がれている。受賞者中で、ある意味、清張を乗り越えたという感を抱かせる作家の傑作だが、女性にどれほど受け入れられるか、気になるところ。ま、辛口な小説の好きな私には、至上のひと時を与えてくれたと書いておこう。
電子書籍
四つの短編
2021/11/16 09:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちーかま - この投稿者のレビュー一覧を見る
どれもよかったけど、個人的には「逆転の夏」が一番でした。プロットがしっかりしてるし最後のどんでん返しもスマート。長編でもよかったんじゃないかとおもう。
紙の本
保身と野心
2017/08/30 07:31
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まんだかず - この投稿者のレビュー一覧を見る
「動機」「逆転の夏」「ネタ元」「密室の人」の4編からなる短編集。
D県警シリーズといわれていますが、警察関係の話は「動機」だけです。
「動機」
警察所内で一括保管していた警察手帳が大量紛失。
発案者の県警本部警務課企画調査官である貝瀬にピンチが。
内部犯行なのか?誰なのか?その動機は?
「逆転の夏」
女子高生殺しの前科をもつ山本は、出所後はまじめに働き、元妻にも
少ないながらも送金を怠らなかった。
そんなある日、山本に殺人依頼の電話が。
勝手に依頼者から大金がつぎつぎと振り込まれてくる。
元妻にはもっと送金を増やしたい、でも殺人はごめんだ。しかし・・・。
「ネタ元」
警察関連の新聞記者の水島にライバル新聞社からの引き抜きの話が。
水島のネタ元(情報提供者)とは情報提供のみなので、
これを機に会ってみたいと思いたつも、先方は水島を避けて会ってもくれない。
「密室の人」
D地裁の裁判官安斎は公判中に居眠りをして寝言で妻の名を口走る。
そのことで安斎を左遷しようと周囲は動き出す。
なぜ居眠りをしてしまったのか?左遷されるほど重大なミスなのか?
それぞれの立場から保身・野心が見え隠れします。
主人公だけではなく、相手側にもそうしなけれなならない理由があった。
紙の本
素晴らしい作品集
2015/12/26 14:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おたま - この投稿者のレビュー一覧を見る
いずれも凝った筋立ての中篇4話でした。特に表題作の「動機」は本当に見事。緊迫感、登場人物の魅力、さすがの出来でした。
紙の本
読み終えたその後の物語が気になる短編集
2004/05/15 17:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山村まひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本推理作家協会賞短編賞を受賞した『動機』を含む短編集。
著者の第二作にあたるそうです。
◆一括保管していた警察手帳30冊が金庫から消えた。一括保管を提案した貝瀬は自分の運命をかけて、手帳を持ち出した犯人を追う。タイムリミットは2日間。はたして!?(『動機』)
◆誘いをかけられ抱いた女は女子高生だった。高額な金を要求する彼女の脅迫に逆上した男は思わず女を殺してしまう。服役しシャバに戻った男のもとに、奇妙な電話がかかってくる。
「ある人間を殺して欲しい。あなたなら私の気持ちがわかるはずだ…」と。カサイと名乗るその男は何者?(『逆転の夏』)
◆「女だから」「女のクセに」とつらく当たられながらも男社会の記者たちの中で、必死に働く女性記者・真知子。そんな彼女にメジャー紙から引き抜きの声が…何故!? (『ネタ元』)
◆裁判の真っ最中。居眠りして妻の名を呼び、注目を浴びることになってしまった裁判長の安斎。再婚した若い妻・美和の名を記事に出させるわけにはいかない。あがく安斎の胸にひとつの疑惑が浮かぶ。睡眠薬…。誰が、なんのために?(『密室の人』)
私にとっては、横山作品3作目。
『陰の季節』『真相』と読んできて、『動機』。
3作の中では、この短編集が一番好きかもしれない。
どの短編もラストに余韻が漂って、読後感が良い。
ミステリーであるけれど、人間ドラマに重点が置かれている。
短編なのに、一人一人の登場人物がきちんと描きこまれていて、使い捨てられるキャラクターには、なっていないのがスゴイと思う。
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