紙の本
狼の挽歌−ポストモダンな切り口で
2004/08/10 23:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
リゾート地として開発されている宮城県の山里で、一人の女性が野犬に噛み殺されるという事件が起きる。女性の夫である動物学者は、その動物は犬ではなく狼ではないかという疑いのもとに厳冬の山奥に追跡行を開始する。明治時代に絶滅したはずのニホンオカミがはたして生き延びていたのだろうか。
ニホンオオカミが生存していたとすれば、都会の人間からすればある種のロマンではある。しかしそうだとすれば、どうやって生き延びていたのかが謎となる。また地元の人達には恐怖であるし、被害者の立場からすれば生まれる感情は憎しみでしか無い。そして徐々に明らかになる東北地方の陰の歴史、この事件を格好のドキュメンタリーの素材と考えて取材を開始するTV局のクルー達。それらの複雑な絡み合いが、人間模様に絡めてスピード感のあるサスペンスとして描かれている。
いや実は、若い頃に平井和正のウルフガイシリーズに熱狂し、狼=善玉、人間=悪玉、という図式を固定観念として叩き込まれている者としては、あまり洗練されたストーリーですんなり語られるとなにか物足りない、もっと現代に向かってガンガン言ってやっていいんじゃないかと思ったりするのだが、まあそれは場違いな感想。夫婦の愛情と哀しみ、冬山の厳しさと立ち向かっていく強靭な精神力、地道に足で稼ぐ捜査を続ける警察のリアルな描かれ方、ふと生まれてくる恋愛感情のはかなさ、そんな事々の中に自然を犯し犯される人間の姿は紛れ込んでていて、だからこそ読後も長く心のくさびになって残っている。あ、例の悪徳企業が状況をどんどん悪くするというお決まりのハリウッド的展開を使わないところもよくて、しっかり日本の現実の上に構築されているところに説得力があるし、TVクルーの立場はもちろん我々視聴者の立場でもあるという切り口でも考えさせてくれる。
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動物行動学から民俗学まで幅広いミステリです。
最初の殺人から、臨場感があってほんとに怖かった。
ニホンオオカミがほんとにいるのかも、、、と最後まで私に夢をくれた本です。
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2007.10.19 了/
とても大胆な設定.スリルあふれる展開,民俗学・動物学の専門知識による裏づけ,そして家系の絆・家族の愛からなる人間ドラマ.小説という枠で言えば文句なく中身が詰まった作品.読後感としては大作にめぐりあえた喜びと同時に,「で,結論は・・・?」誰一人として幸せになった人がいないのかな.最後の文章が「笑顔」だった割には.
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11/7読了
狼を追いかける動物学者が自分の妻を食い殺される。それから人間模様がどうのこうのとか。
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冒頭で衝撃を受け、そのままテンポ良く引き込まれて一気にラストへ。
文章が、ほんと良くて、背景描写もスラスラっと頭に入ってきて、まさに雪山に狼を追う主人公になりきりでした。
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雪山の描写の迫ってくる現実感が凄く好き。
山って開けているように見えて実のところ閉塞感が凄い場所だと思う。
舞台が結構ご近所なのでちょっとニヤニヤさせられました。
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いや~、面白すぎ。
一気に読み入ってしまいました。
東北を舞台に、ニホンオオカミを題材として物語が進んでいきます。
サスペンス、推理小説の要素もふんだんですが、山の中をマタギ並に駆け抜ける、アニマルトラッカーは凄いです。
雪の山々が目に浮かんできます。
本書は、第19回新田次郎文学賞を受賞した作品だそうですが、納得です。
熊谷達也、ますますはまりそうです。
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オオカミなのか?得体の知れない何かなのか?って
前半ゾクゾクしながら読んでたんですけど、ちょっと、ネタ晴らし唐突すぎるよ・・・
そっからたいして盛り上がりないまま、なし崩し展開。
偶然に偶然が重なりすぎちゃってもはや筋書きが破綻してる感じ。
オオカミに惹かれる人の気持ちもなんか理解しがたいしムリヤリ感があって、なおさら。。。
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この人の作品はスリルがあって最初は凄く引き込まれるんだけれど、ラストが拍子抜けの感じがある。迎え火の山もそんな感じ。
こういう作品でも恋を絡めてくるところがけっこう好きだったりする。
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東北や北海道などの民族や風土をモチーフとした作品に定評のある熊谷達也の小説。他の作品に比べ方言を使っておらず、非常に読みやすいのが特徴と言えるだろう。
野犬に妻を殺された男がその犯人を追う。というストーリ。テンポが良く、冬山の描写も非常に上手い。
しかし最後の展開が少し強引。核心部も、狼の生態をある程度知っていないと飲み込めないような気もするし、知っていればそれはそれで逆に「うん?」となってしまう。ニホンオオカミ発見シーンは本当に必要だったのかなぁ…
そして犯人と対峙したと思えば、まさかのバトルパート。いきなり少年ジャンプで描かれるバトル物を読んでいるような気分になってしまい、それまで描写していた冬山や自然の美しさ,厳しさの余韻を殺してしまった。
惜しい、とても惜しい。そう感じてしまう作品だった。
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獣臭さが伝わってくるような小説。
野生や自然を描きかたが抜群の作家さんですね。
内容は若干都合が良いけれど、過去から現在につながる風習や言い伝えが絡み合う所はさすがです。
現代人が忘れてしまった自然への畏敬の念を思い出させるような話です。
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入院中に読みました。暇でしょうがない入院生活の中で一気に読んでしまいました。主人公が犯人の生き物に憎しみをぶつける訳ではなく、そのような生き物を造った人間に復讐をするというところが良かったです。
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ニホンオオカミは現存するのか、というところまでは面白く読んだが、殺人あり、家系の謎あり、雪崩の恐れあり、とありあり続きがもったいない。
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上司に借りて読んだ本。
冒険小説+サスペンス(ミステリー)的な感じ。
描写が丁寧。
前半の謎が残されてる部分とかは面白かった。
次第に明らかになってくるといまいち入り込めなかった。
参考文献とか多くて、しっかりと作り込まれてるっていうのは伝わる。
ニホンオオカミ
マタギ
サンカ
東北
殺人
民俗学
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狼好きは読めというレビューを読んで、本書を手に取ってみました。深い雪山での追跡、日本狼の存在、謎の漂白の民。どれも興味深い内容でした。