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紙の本
村上節,炸裂!
2004/05/10 23:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
1952年(佐世保市)生まれ。佐世保北高卒後,多摩美大中退。在学中の『限りなく透明に近いブルー』(76年)で芥川賞受賞。『コインロッカーベイビーズ』で野間文芸新人賞受賞。『村上龍映画小説集』で平林たい子賞。こんな賞ももらってたんだね。企画・解説として山崎元(三和総研金融本部主任研究員/企業年金研究所取締役)。
「目次」の代わりに,「投資の心得 十一箇条」。第一章「時として投資は希望を生む」,第二章「将来の価値と現在の価値を比べるという考えが基本だ」,第三章「投資したお金は,単なる『賭け』ではなくて,働いている」,第四章「投資について,自分で納得できないことはしなくていいし,してはならない」,第五章「リスクは計算された不確実性であり,大まかでも見当をつけることが大切だ」,第六章「リスクなしにリターンは増えないが,ハイリスクがハイリターンというほど世の中は甘くない」,第七章「一人一人はお金について違っていることを認識せよ」,第八章「資産運用でも人生を考えるうえでも,ポートフォリオという考え方は大切だ」,第九章「“確実なマイナス”であるコストを軽視してはいけない」,第十章「過去の行動のこだわらずに,将来のみを見て現在の行動を決める」,第十一章「お金は,あくまでも手段だけれども,とても大切なものだ」。
説教臭いのはこの「投資の心得」くらいのもので,本文は11の日本昔話を村上龍的にアレンジしてある。村上は,『ブルー』以来,残酷な描写で作品の存在感を僕に訴えかけてきた。典型的なのは「鶴の恩返し」を本歌取りした第九章。愛し合っていた主人公とヒロイン=ツウ(鶴)の仲は,崩壊する。
「俺とツウは,お互いに愛し合っていたのに,理解することができないまま,別れることになってしまったのです。俺はツウを幸せにしたかったし,ツウは俺のために,布を織ってくれたのに」。/それは違うぞ,と偉い人は言いました。/「お前に高い技術や,深い知識がなかったというだけのことだ。お前は無知で貧しかった。それだけのことだ。そんなことは,なんの関係もない。幸せにしたいとかいう気持ちだけで,ほかの人を幸せにできる時代は,とっくに終わってるんだ」(153頁)
村上節,炸裂!という感じである。(931頁)
紙の本
TAMATEBOX?
2003/10/10 13:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰でも知っている日本の昔話を現代風にアレンジし、21世紀の日本にフィットした生き方や考え方を、「投資」という観点から提示した、強引だがユーモアのある作品である。
例えば「鶴の恩返し」。オリジナルは、貧しくも純朴な好青年が鶴を助けたことをきっかけに愛情と幸運を手に入れるが、約束を破ったことで鶴は空へ帰ってしまう、という話だった。
これが著者の手にかかると、経済力も知恵もないダメ男が無垢な女に尽くされ、しかし最終的には彼女を失ってしまう、という身も蓋もない話になる。しかもこれが、投資におけるコスト(手数料や税金)という考え方につながっていくのである。
他にも「わらしべ長者」にルーズソックスの女子高生が登場したり、一寸法師がセクハラに遭ったりと、少し強引に思える内容もあるが、昔話のパロディーとしてこの本は十分楽しめる。
けれども「投資」の心得という面でもこの本はわりと真面目に取り組んでおり、現在の低金利や高い税金に不満で、いずれ資産運用を考えているような人にとっては、軽く読めて意外に役に立つ本ではないでしょうか。
挿絵がとても可愛らしく、玉手箱がハート柄の「TAMATE BOX」になっていたり、笑える絵が至る所に散りばめられているのが楽しい。
巻末には山崎元、北野一との投資に関する座談会が掲載されている。
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