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物凄いタブーを感じました。
自分の妻と娘を「女神」のような女性に教育すること。夫婦の生活に他人を利用すること……。
恋愛のずるくてきたない部分が印象的に描かれています。
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三島作品はまだ3つめだが、
金閣寺や女神を読むと、三島の「美」や「不具」についての
執念が痛いほどに伝わってくる。なにが彼をそこまで追い立てたのだろう。
戦争の時代を生き、その中でこういった小説の執筆もしていたはずで、そんな環境下で生まれた作品は、安全ぬるま湯の現代日本を生きる私たちに通じるものばかり。
『女神』での父娘の関係性はまったくもって創作と思えず、
一定以上の美を維持していないと恋人や妻、夫を愛せないという人は多かれ少なかれいるのではないか。
そして、この父のようにお金や力を持っていれば、
相手を好みの像に仕立て上げるということもあるだろう。
美とはなんだろう。
人を惹き付け、ときには安心させ、そして狂わせる。
まだまだ三島を読み込んでいくことにしよう。
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『汝の名』に続いて明野照葉2作品目。
まだ2作品しか読んだことないけど、最近お気に入りの作家。
女性が社会で働くことについて、
その厳しさだったり、周りの目だったり、
かなりリアル。
読み終えると、ちょっと放心状態になるほど
話の展開、それぞれのキャラクターが相当いっちゃってて、
でもその中途半端ではないかんじがあるから、
メッセージが気持ちいいほど突き刺さってくる。
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恐れることは何もない。いざとなればやり直したらいい。
リセット。
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一度きりの人生であることを、
このまま生きていくのかということを、
どんどん胸が高鳴ってくる。
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短編集。表題作の「女神」は150ページほどで、超短編がいっしょに収録してある。三島由紀夫は物語の終わらせかたが巧みで、ときどき芸術的ですらある。短編も、小話といったかんじだけれど、優雅だったり人間くさかったり、なかなか素敵。
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『女神』は、三島由紀夫の短編集である。
女神と称されるほどの美しさを持つ妻が、その顔に火傷の醜い傷を残した時、美を何よりも重要な女性の要素だと考えていた周吾は妻を見捨てる。代わりに、その妻の美しさに肉迫するように成長する娘を、自身の求める「美の権化」たらしめる為に独自の教育を行う。
主人公の、さらに言えば三島自身の「美」に対する執念を垣間見ることが出来る作品であると感じた。そして、それに反する「美」の裏切りが生じることによって、この作品の文学性をより高めているように感じた。
その他の短編も、読み応えのあるものが多かった。
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中学生の頃、姉に勧められてよんで面白かったのは覚えていたけれど内容は一切覚えておらず。 しかしやはり面白かった!表題作と 雛の宿 と 朝の純愛 が秀逸。エッセイや 仮面の告白 は苦手だったけれどこれは面白かったから短編小説は面白いのかな?
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短編オムニバス。
各章で男性にとってのファムファタール"運命の女性"が描かれる。
「侍童」は面白かった。全体としては、んー美しい女神像の数々が味わえると思うけど、女だからあんまりヒットしなかった。
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美しいもの、についての短編集。
というかこの人の小説は基本的に、美しいものをいかに崇拝するか、そして壊すかというところに集約されるのではないかと思う。
表題の「女神」は、とても美しい妻を得て、自分好みの女に育て上げたのに、戦争でその顔にやけどを負ってみにくくなってしまった妻とその娘の話。
妻を見限った男は次に娘を自分好みの女に育てようとする、というストーリー。
この話が一番印象的ではあったけど、他の話もそれぞれに、歪んだようなまっすぐなような美があふれていました。
この人の描く風景は、いつも知らない間に脳の中にするっと入ってきてしまう。
そして、登場人物が焦がれる美に、いつしか焦がれてしまう。
とても怖い作家だと思います。
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淑女は作るもの/男がキモい/よくわからぬ/栗毛の馬可哀想/やっぱり哲学は危険だ/忘れた/恋の重荷/いい感じ/ともあれ気があって良かった話/オカルト/殺されて良かったのかもねな話
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いたるところに若い女性の己の肉体に対するナルシシズムあふれる文章に胸をつかまれた。女は若さが有限であることを本能的に知っている。
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美醜、という概念から、人間はきっと逃れられないのだと思う。醜いものよりは美しいものに価値を感じてしまうのが人間だと思うから。
そういった概念を三島特有の美しい文章で描いている。
戦争のさなかの事故で美しかった主人公の妻はその美しさを失い、塞ぎ込むようになる。
そして主人公は次第に妻への興味を失うが、少女から大人に向かいはじめた娘が妻に似て美しく育ち、主人公は娘を“本物の美女”にするべく様々な教えを説く。
全部で十編の短編集。
幻想的で不思議な物語もあり、三島の著書の中ではわりと読みやすい小説だと思う。
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・女神
出てくる人みんなわかりやすいキャラクターでサクサク読める。話の終わり方が間抜けというか滑稽というか、自分にはコントのオチっぽく見えた。
・雛の宿
今まで読んだ怪談話の中で一番怖い
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罪に罪を重ねた人間が、最後にほっとするのは、電気椅子に坐ったときじゃないでしょうか
動機はどうあっても、あらわれた行為が美しければそれでいいのです。世間の美談の何割か、慈善的行為の何割かには、性的な原因があるとかんがえていいでしょうが、それだからと言って、それでその行為の値打ちが下がるとは言えません。
俊ちゃんの死以来、私は人の不幸に対する嗅覚が、人一倍鋭くなっているのではないかと疑いました。自分にたまたま幸福感が生まれると、すぐそれを自分で壊したくなるのではないか。それを壊すようなものを、いそいで探し当てるのではないか。
ただひとつ確かなことは、不幸が不幸を見分け、欠如が欠如をかぎ分けるという事である。いや、いつもそのようにして、人間同士は出会うのだ。
私は勝手に言わせておいたが、精神分析を待つまでもなく、人間のつく嘘のうちで、「一度も嘘をついたことがない」というのは、おそらく最大の嘘である。
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やっぱり三島由紀夫は楽しい。賑やかな町を歯磨きチューブに例えて、自分でツッコミ入れるとか最高。もっと悲壮感ある作家かと思ってたら、全ての登場人物の上に立って楽観的な語り口調、表現は豊かで余裕たっぷり。
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「女の美しさ」に並々ならぬ拘りと哲学を持つ男の美麗なる妻が顔に火傷を負ってしまい、男は新しい情熱を自分の娘に注ぎ始める…。
と言う、三島の偏執的な哲学と大衆受けするスキャンダラスで妖しげな描写が見事に融合した表題作を含む中〜短編集。
とにかく、表題の「女神」でお目にかかれる、美への歪んだ価値観が読んでいて心地良い。
美しい女とは何を愛すべきなのか、何に秀でるべきなのか、お酒は何を飲むべきなのか、一人の男の頭の中にある美という観念と、その執着心に惹きつけられてしまう。
けれど、若干中弛みしたかな…。